- 柴田史郎
- 面白法人カヤック人事部。365日をTシャツで過ごしている。
- 笹山美波
- アイティメディア株式会社 プラットフォームビジネス事業推進部。イベントの3日前に司会役に任命され、30分前に段取りを聞かされた。
「面白い会社」として、なんとなく同じカテゴリとして語られることの多い3社ですが、「面白い」とヒトコトでくくっても、いろいろな面白さがあります。そこで今回、3社の代表に集まっていただきました。それぞれの会社の面白さが垣間見られる対談になっているので、会場にいる気持ちで最後までお読みください。
まずは会社紹介から
- 一同
- よろしくお願いします。
- 柴田
- この3人が集まったのは初めてですよね。
- 柳澤
- そうですね。
- 笹山
-
では、カヤックの簡単な会社説明からしていきましょう。
カヤックは組織体制として、サイコロ給が有名だったり、うんこを使った「うんこ演算」や食べ残した残飯を友達とシェアする「ZangPang」などを、技術の無駄遣いと称して行なっています。
そういったおバカアプリだけでなく、ありがとうをたくさんあつめるサービス「THANKS」から、愛のシンボル「コンチ」まで幅広くサービスを行なっています。
また「面白法人」というキャッチコピーを創業当時から使っています。
- 柳澤
- よろしくお願いします。3社に共通しているところと、違っているところをこの企画を通して知ってもらえればいいなと。このお二方には何のメリットも無いけど(笑)
- シモダ
- ホントになんのメリットも無いですよ!採用もしてないのに(笑)
- 笹山
- つづいて、バーグハンバーグバーグのシモダさんです。企業理念は「がんばるぞ!」です。
- 柳澤
- これはひどいですよ(笑)経営理念として。
- シモダ
- いやいや、だって頑張った方が頑張ってないときの2倍くらいいい結果がでるでしょ!それでこの理念を掲げてるんですよ。考えるのを放棄したとも言えるんですけど。
- 笹山
- 自社のお笑いメディアのオモコロを運営していたり・・・
- 柳澤
- これ知ってる方??
(会場の8割が手を上げる)
- シモダ
- うわあ、これは嬉しい!来てよかった。
- 笹山
- 他にも、「頭の悪い人向けの保険入門」など、独特なサイト制作を行なっています。
- シモダ
- 保険って、難しい言葉がいっぱいあるじゃないですか。そこで、例えば、「保険」という言葉を「のどぐろ」にわかりやすく言い換えたりとか、「お金」のことを「クレオパトラ」と言ったりして説明して行くサイトなんですけど・・・いま自分でも何言ってるか分からないんですけど(笑)
- 笹山
- 採用ページには「1回のジャンプ中にキックとパンチを120発以上撃てる人」や、「足の臭さで一個中隊を壊滅させたことからビッグボスと呼ばれてる人」などを募集していますよね。
- 柳澤
- これ絶対募集してないよね(笑)
- シモダ
- こんなもの現実に出来る人はいないので、要するに募集はしていないってことなんですけど。ありがたいことにそれでも数名の方からは「ジャンプ中にキックとパンチできます」ってメールをいただくので、そのときは「証拠映像ください」っていうと、返事が来なくなりますね。
- 一同
- (笑)
- 笹山
- 続いて、LIGの岩上さんです。LIGさんといえば、コーポレートサイトが人気ですね。最初に話題になったのは、「伝説のウェブデザイナーを探して」という求人キャンペーンでしたが、これは社長の岩上さんが社員に拉致されてビーチに埋められるという企画でした。
- 岩上
- 2年前の今頃で、すごく寒かったです・・・。
- 笹山
- メディア事業部には、秒速で結婚された社員がいるとか。
- 岩上
- 去年のエイプリルフールですね。結婚したがっていた社員がサイト上で結婚相手の募集を掛けたら、30人くらいから応募がきたんですよ。その中の1名と結婚して、今は幸せに暮らしています。
- 柳澤
- 体張ってるなあ〜。
- シモダ
- 人生賭けてますね。
- 笹山
- そんな面白いサイトだったりとか、企画が目立つんですけど、メインビジネスは、制作会社なんですよね。編集プロダクション機能だけではなくて、WEBサイトの運用までされていると。
- 岩上
- はい。メインビジネスの制作事業部が30人くらいですね。メディア事業部が15人くらいで、実際に他社さんのメディアを運用したりしています。例えば、Find Job!さんの会社訪問の記事など、ソーシャルでバズるような記事を提供しています。だいたい500~1500いいね!くらい。
- 柳澤
- すごいねえ。
- 柴田
- では、早速スペシャル対談ということで、ここから質問をしていくので、お答えいただきたいなと思います。
うちの会社のオリジナリティは、これだ!
- 柴田
- 各社、面白さやユニークさがあると思うんですが、自社のオリジナリティはここにあるというのを社長目線でお話しいただきたいです。3社と比較しての話と、社会全体で見た時の話、両方お願いします。
- 柳澤
- 社会全体と比較すると、「面白法人」ってコピーをつけたところでしょうかね。今は好きな仲間と仕事をしたり、学生がベンチャーをつくるのはよくある話なんですが、当時は面白く仕事をするとか、会社自体が面白いというのが新しかったね。2社と比較すると、テクニカルな部分で違うんじゃないかな。
- シモダ
- そうですね。めちゃめちゃテクニカルですよね。
- 柳澤
- 実は読み物として面白いっていうのはあんまりやっていないんですよ。このお二方は読んだら面白いっていう天才タイプですよ。シモダさんのFacebookを見てても本当にしょうもなくて面白いんだけど、カヤックはそういう感じじゃないよね。
- シモダ
- うちは「お笑い」とか「ユーモア」とか、それだけに絞っているのが特徴かなあ。笑えるものしかつくらないという、非常に生きづらい選択をしてしまった会社かなって。
- 柳澤
- 面白さの中でも笑いに特化してるよね。
- シモダ
-
カテゴリで言えばうちも制作会社なんですが、これだと競合に負けるぞって思ったんですよね。変に器用貧乏に何でもつくるよりは、笑い一本にしぼろうと。ラーメン屋みたいなことですよ。色んなラーメンを出すよりも、豚骨に絞ってる方が美味い感じがするでしょ。
あとは、人とカブらないようには意識していますね。それがオリジナリティになってるんじゃないかと。
- 笹山
- バーグさんのつくったものは、一目でバーグさんだとわかりますもんね。
- シモダ
- 中身を見る前から「バーグハンバーグバーグだと思った」とか「どうせバーグハンバーグバーグだろ」とか・・・
- 柳澤
- 「どうせ」って(笑)
- シモダ
- そういうのは嬉しいなと思いますね。ひとつの型をつくれたのかなと。
- 柳澤
- お笑いって寿命が短いから、それだけで勝負するってすごいことですよ。将来はどうするの?
- シモダ
- 将来は、まあなんとかなるでしょって感じです(笑)餓死はしないんじゃないですか。
- 一同
- (笑)
- 柴田
- 岩上さんはどうですか?
- 岩上
-
3つあります。ひとつは、ブログを書くこと。インプットしたものを自分中で体系化して、人に伝えることが重要になってくるので、自分の学習のためにも、チームのためにも良いんじゃないかなと思っています。
ふたつめが、制作部とメディア部の二つあるところですね。「つくる」ことが得意な制作会社さんはたくさんあるんですけど、どうやったらそのサービス・サイトを発見させるのかというところに注力している会社ってなかなかないんですよ。つくるだけじゃなくて、つくった後の運用も考えれらるのが強みですね。
最後は、無駄なことを推奨していること。オフィスにすごくでかいシステムキッチンがあったり、漫画が2000冊、ジャンプが4年分あったり。そういう無駄なものを無駄と思うんじゃなくて、コミュニケーションを誘発するものと考えて、環境や雰囲気作りに力を入れています。
- 柳澤
- すごくいい回答ですね。みんなむちゃくちゃメモってますよ(笑)
- シモダ
- いいですねえ。僕の回答なんて「餓死しないから大丈夫」ですからね。
オリジナリティを維持するために気をつけていることは?
- 柴田
- 次に聞きたいのが、オリジナリティを維持するために気をつけていることです。意識してないと、だんだんと普通になってしまいますよね。
- 柳澤
-
まず、そもそもオリジナリティが必要かって話になるんだけど、うちはこだわってます。うちのCTOの貝畑は、面接するときに学生の作品を見て、第1発目の質問に必ず「どこにオリジナリティがあるの?」っていうんですよ。
でも学生のつくっているものにオリジナリティなんてあんまりないでしょ。なのになんでそんな質問をするかというと、オリジナリティをつくろうとしている人を求めているから。カブったら負けだって思ってる人を。
オリジナリティの維持のためには、徹底的に調べることをしています。たとえばカヤックのコーポレートサイトはオリジナリティを出すために、企画段階で2000~3000のコーポレートサイトを見ています。デザイナーにも、既視感の無いサイトにしてくれ、と。
思想的な面で言うと、オリジナリティがあることは人への優しさだと思うんだよね。他者の領域を侵さないという優しさでもあるから。他者を蹴散らそうというオリジナリティより、他者を活かすオリジナリティを意識してますね。
- シモダ
- 超かっこいい。
- 柳澤
- でも誰もメモしなくなっちゃったよ。
- シモダ
- メモなんか残さなくていいんですよ。記憶に残ればいいじゃないですか。
- 柴田
- シモダさんはどうですか?
- シモダ
-
僕も全く同じこと言おうとしてたんですが(笑)「自分しかいない」「カブっていない」ということを大事にしています。他人がやっているものと似てるなって言われると悔しいですね。0から考えたのに、カブってしまった時は自分から引くようにしています。二番煎じになるので。
自分の中でパロディ論というものがあるんですけど、パロディって、リスペクトがあったり、パロディの対象がクラシックになっているものとか、皆の固定観念になっているものなら問題ないんですよ。
でも、新しいものをパロディするとか、お笑いをお笑いでパロディすることは良くないと思っていて。それはリスペクトがないただのパクリじゃないですか。
それがうちの会社の持っている線引きですね。そこを意識してモノを作っていると、オリジナリティがあるものが生まれたりするのかなあ。
- 柳澤
- さっきよりメモっている人が増えた(笑)今のパロディ論良い話でしたね。
- 柴田
- シモダさん以外の方が企画考えて、シモダさんがダメだしすることはあるんですか?
- シモダ
-
会社を始めたばかりの頃はありましたね。ワンマンだったんですよ。でも、それだと部下が育たないんですよね。任すことって大事じゃないですか。なのに、「このアイディアは違う、面白くないと思う」とか言ってたから、全然部下が育たないし、卑屈にもなっていく。そんなときに、僕が離婚したんですよ。
それで、僕がめちゃめちゃ元気がなくなってしまって、会社で働かなくなったんです。それで、「シモダがやばい。このままだと会社つぶれてしまう」って、みんなが自発的に動くようになりました。今じゃ自分より優秀で素敵な方が沢山います。離婚最高ですよ(笑)経営する上で。
- 笹山
- メモしている人はいないですね(笑)
- シモダ
- まあ、他人任せです。泣いているだけで会社が育つっていうね。
- 柴田
- 岩上さんどうですか?
- 岩上
- 僕たちの会社には、いろんなメンバーがいて、例えば僕が砂浜に埋まった企画も、秒速結婚した竹内っていうメンバーが企画したことなんですよ。その企画を僕に相談されたときに、「納豆を体にめちゃめちゃに巻き付けるか、砂浜に埋められるかどっちが良いですか?」って言われたんです。不自由な二択を迫られて、「じゃあ砂浜にしよう」ってなったんです(笑)
- 柳澤
- うまいね。
- 岩上
- そういう面白い人たちが会社に入って普通になっていくのを見たくなくて、独自性を大事にするにはどういうチームが良いかとか、面白い人たちがどうやったら面白いことを考え続けられるのかという環境づくりを大事にしています。組織づくりから入って行くタイプですね。
- 柴田
- LIGさんといえば、ブログの記事を社員全員で月に1回書くっていうルールがあるんですよね。
- 岩上
- はい。いま社員は50人弱いるんですけど、みんな書いています。社員以外にもフリーライターが何人かいて、1日に3本挙げるようにしていますね。
- 柳澤
- 制作系のネタが多いですよね。
- 岩上
- そうですね。面白系の記事が多いって思われていることも多いんですが、2000記事ぐらいある中の1800記事ぐらいはノウハウ系ですね。真面目系の記事の方が多いんですよ。メンバーも50人中45人は真面目ですね(笑)
- 笹山
- 女装して訪問するみたいな記事とかが目立っていますが、実は真面目な社員さんが多いんですね。
- 岩上
- そうですね。記事って増えれば増えるほど、アクセス数は増えて行くんですけど、笑いを挟むことで、アクセス数のベースラインをあげていきたいと思っています。
ぶっちゃけ、どうやったら入社できるの?
- 柴田
- もう1個質問があるんですけど、どうやったら入社できますか?求める人物像をお聞かせください。
- 岩上
-
LIGは、組織作りを大事にしていて、スキルがあるかではなく、組織に合うかどうかを僕たち経営陣は見ていますね。「わくわくを作り、みんなを笑顔にする」が経営理念で、制作チームは「期待を超えろ」、メディア事業部は「ファンを作る」とそれぞれスローガンがあります。
とにかく経営理念を達成できるかどうかを見ています。スキルは後天的に身に付くけど、合うか合わないかは先天的なものなので。今は、新卒は募集していないのですが、結婚前の同棲期間みたいな感じでインターンを募集しているので、ぜひ!
- 柴田
- ちなみに組織に合う合わないとかはどう判断しているんですか。
- 岩上
-
難しいですね。「友達の定義って?」って言われると難しいのと一緒で。どの採用でも最後は役員が入ります。役員がこの子と飲みに行けるか、一緒に組織を作って行けるかで判断しています。
何かをつくるのが楽しい、何か新しいことに挑戦したいっていう人は合うかなとおもいます。あと変化が激しい業界なので、適応力ある人もいいですね。
- 柴田
- シモダさんはどうですか。
- 柳澤
- 募集はしてないだろうけど、こういうヤツが来たら採用せざるを得ないって人は?
- シモダ
-
基本的にうちは人数が少ないんですよ。少数精鋭というか、特殊なやつが多いんですよね。昔からお笑い×インターネットでものを作っている人たちで、オモコロっていうお笑いポータルをつくっていて。
その中で会社をつくろうと思ったときに、一緒に働きたいと思った7人のライターを呼んだんですよ。サイゼリヤに。そこで、「1年後に会社をつくろうと思う。まだお金が無いからいきなり全員は採用できないけど、落ちても翌年でも翌々年でも絶対入るぞと思えるくらいの仲間意識を持っている人がいたら来週も来てくれ。解散!」と言ったんですよ。
そうしたら翌週サイゼリヤに全員来て。もしかしたらたまたまサイゼリヤに食べに来てただけかもしれないんですけど(笑)じゃあ会社つくろうかと言ってはじめた会社なんです。
これから入ってくれる人がいるとしたら、可能性を広げてくれる人とか、嫌なことを笑いに変えられるポジティブな人がいいなと思いますね。いきなり知らない人に両腕折られても、「あ、このネタでブログ書けるわ」と思える人。奇をてらいすぎている人ってそんなに面白くないと思うんですよ。単純に何にでも乗っかれる人がいいですね。
- 柳澤
- そういう人を面接で見抜けますか?
- シモダ
- いやあ、無理でしょうね(笑)怖いんですよね。知らない人と働くのが。
- 柳澤
- こりゃ誰も入社できないな(笑)
- シモダ
- だからオモコロのライターになってもらうとか、スタッフになってもらうところからかなあ。
- 柴田
- では、最後にやなさん。
- 柳澤
-
採用説明会なので真面目に言うと、ある一定ラインを超えていることが最低条件としてありますね。例えば、書類選考で大したことを書かない人いるじゃないですか。その人たちは人を楽しませようとする心がないと感じてしまって残念ながら落としてしまうんですよ。
どんな会社でも、仕事をする上での最低ラインがありますよね。昔はダメ人間ばっかり取ってたんですが、優秀な人も増えて、採用のラインが上がってきたのかな。でもそこから先はいくら頑張ったからこう、とかいうのはなくて、フィーリングの世界に入っていきますね。
ただし、嘘臭いというか、思ったことを口にしない人、自分をさらせない人は受からないですね。あとは、成功法則は無いので、その都度。こういう人がカヤックに向いているってのはなくて、こういう人を採るって決めないようにはしています。
去年なんて、突然、日本語を話せない外国人が25人も入社してきたからね。みんな大変大変って言うから、本当かなと思って、自分も隣で仕事してみたんですけど、ほとんど言葉が通じなくて。よくみんな仕事できたなって感心したね。毎朝「おはよう、仕事は順調?」って聞くんだけど、毎回「ジュン…?チョウ?ジュンチョウ?」って聞かれて。
でも、なんでそれを楽しめるかっていうと、みんないいヤツなんですよ。言語は違うけど、いいヤツオーラが出てるんですよ(笑)まあしょうがないか、ってなっちゃう。
- シモダ
- 「いいヤツ」ってホントに大事ですよね。
他社からみたカヤックの強みは?
- 柴田
- 来場者からも質問を募集しましょうか。
- 来場者
- 他社から見た、カヤックの強みってなんですか。
- 岩上
- カヤックさんは会社をつくる前から好きで見ていました。経営理念やビジョンがしっかりしていて、 「何をするかより誰とするか」とか「ぜんいん社長合宿」とか、人を大事にしていますよね。理念にすごいフォーカスしているのを感じます。自分たちもどうやったら理念を共有するのかを悩んでいるのですが、理念を浸透させる手段を試行錯誤しているのがすごいなと思っています。
- シモダ
- 「面白」という言葉を会社に付けたのは何十年も強みになるだろうなと思います。言葉一発で何十年ってすごいですよ。面白い会社って増えていると思うんですが、あの時代に先行してやったことがすごいですよね。この会社はどこにたどり着くんだろうって思わせるのもうまいと思いますね。
- 柳澤
- サクラのような質問でしたね(笑)
こんな感じで、3人の対談はこの後も続いていきました。面白い会社と言われることの多いバーグハンバーグバーグ、LIG、カヤックの3社。10年後、この3社はどうなっているのでしょうか。もっと面白い会社が増えていくのでしょうか。3社の今後にご期待ください。