面白法人カヤックが上場した理由 | 面白法人カヤック

Corporate

2014.12.25

面白法人カヤックが上場した理由

Corporate

本日12月25日に面白法人カヤックは東証マザーズに上場いたしました。すべての関係者の皆様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。 誠にありがとうございます。(なお、証券コードは「3904」となりました。社内的には語呂合わせとして「サンキューオモシロ」と呼んでいます。)

今回は、面白法人カヤックが「上場した理由」について書いてみたいと思います。少し長いですが、どうぞお付き合いください。

起業家という役割の人であれば、 IPOの仕組みをよくわかってないとしても、漠然と目指す人は多いのではないでしょうか。例えば、プロ野球選手がメジャーリーグを目指すように、政治家であれば国政を目指す方が多いように。

そういった意味では、僕にとってもIPOは起業家としてチャレンジしてみたいことの1つではありました。しかしながら、面白法人カヤック創業以来、IPOに対しては明確なスタンスをとってきませんでした。

というのも、そういった個人のなんとなくの思いで選択する前に、面白法人という組織において本当にそれが良いことなのかと、選択に腹落ち感を持つべきだと考えていたからです。

カヤックも創業から今年で17年目。IT企業としては老舗の部類です。「会社というものはどういう存在なのか?」「良い会社の定義とは何なのか?」そういったことを、時に失敗を重ねながら学んできました。

そして特に、株式会社という形態を選択するのであれば規模を拡大しながら継続し続ける過程で、様々な困難や矛盾と対峙することで、組織としても経営者としても、中にいる社員としても成長をすることができる。

また、利益を出していくことで社会に貢献できる。いや、社会に貢献した結果こそが利益である。それが株式会社というものの法則なのだという思いも深まるようになりました。

また、「株式会社であるカヤックという会社のミッションは何なのか?」「そしてそのミッションをどうやって達成していくのか」そういったことを考えていく過程で、永続性あるパブリックな存在にしていこうという思いも強くなりました。ちなみにこの連載でも、そういった日々の営みを通して考えたこと、悩んだことをよく取り上げさせていただきました。

そんな風に、会社という法則への理解と、カヤックがすべきことへの決意が深まる過程の中で、自然と「上場する」という選択肢を検討するようになります。

上場することで「知名度が上がる」「社会的信用度が上がる」「経済的な基盤が安定する」などのメリットがあります。一方、上場することで「短期的な評価が求められる」「必要コストがかかる」などのデメリットがあります。そういったことをよく議論した結果、「IPOという機会を使って、成長スピードを速める」と決意しました。

そして、2011年、カヤックとしては初の第三者割当増資を行いました。この「2011年にVC(ベンチャーキャピタル)からの投資を受けた」ことが、カヤックとして、初めて公に「上場する」意志があることを明確にした瞬間です。

そのような宣言をした結果、時に「面白法人は上場に向いてない」「自己資本100%だから好きに面白いことができるけど、外部の株主がいたらそうそう面白いことはできないのではないか」「そもそも面白いことと儲かることは両立しないのではないか」そういったご意見をいただくことも増えました。

しかしながら、こういったご指摘があるのも、本質的には僕ら自身の実力がまだ足りないことに起因するのだろうと受け止めています。厳しいルールのある中で、面白法人が自分を見失わず面白法人であり続けながら、一方で投資家にも支持される存在になる、「そういった実力が本当に備わっているのか?」というご指摘なのだろうと。

現時点でそうだとしても、面白さを追求するからこそ、とびっきり面白いコンテンツが生まれ、それが結果的に収益につながると僕らは信じています。そして本日から、僕ら面白法人がそういうことがしっかりとできるかどうか?そのチャレンジがスタートしたということなのだと思います。

ここで改めてもう1度、「面白法人とは、何ぞや?」という問いを整理させてください。

僕らは創業時から一貫して「面白法人」を名乗っています。この言葉には「面白がって楽しく働く人が世の中に増えれば、世の中がより幸せになる」そんな思いが込められています。

「世の中に楽しく働く人を増やす」。このお手伝いをするためには、まずは、僕ら自身が面白がって仕事をするべきです。自分自身が楽しんでいないのに、世の中に楽しく働く人を増やせるとは思えないからです。

また、面白法人の事業内容はたった1つで、「ユーザーに楽しんでもらう面白コンテンツをつくる」です。僕ら自身が面白がってなければ、ユーザーを楽しませるものなんてつくれない、「アウトプットとプロセスは比例する」そう考えています。

そこで、まずは「どうやったら面白く働けるのか?」「どうやったら、そういった文化を組織の中につくれるのか?」を真剣に考えました。

僕が学生から社会人になって最初に感じたのは、「あぁ・・・仕事とは、会社とは、評価によって成り立っているのだな」ということです。上司からの評価、株主からの評価、お客様からの評価、もちろん、学生時代も成績という評価はありましたが、それ以上に常にたくさん評価というものがついてまわることが、学生と社会人では決定的に違っているという点です。

であるならば、「評価こそがその組織の文化をつくるのだ」という結論に至りました。「どのような人をその組織において高く評価するのか?」は、その組織の価値観そのものであり、価値観が文化をつくるからです。

だから、面白法人では「面白がる人」が高く評価される組織にしようと思いました。そこで、半年に1回、全社員にこんな問いかけがあります。

「あなたは面白く働けていますか?」

この問いの結果、面白く働けてない社員が、全社的に増えてくると人事部はこれを自分の評価、自分達の責任だと捉え、対策を考えます。
また、面白く働けていない部下の多い上司はそれを自分の評価、自分の責任だと捉え、真摯に取り組む。

考えてみれば、カヤックの代名詞でもある「サイコロ給」(サイコロの出た目によって数%程度が報酬手当として支給される仕組みです)。

僕の知る限り世界で唯一のこのサイコロ給という仕組みは、報酬を決める上で、一切「評価をしないという評価」を組み入れたものだと言えます。これはどういうことなのでしょうか。

仕事をしていく以上、評価というものからは避けて通れません。カヤックにおいても、評価は大切にしています。

仕事をする上で、そういった数々の評価からは避けて通れないとしても、本当に面白く働くためには、他者の評価には振り回されないほうがいい。だからこそ、「評価を気にしすぎるな」というメッセージを込めて「評価をしない評価」を報酬制度に組み入れた結果がサイコロ給なのです。

このようにして、まずは自分たち自身が徹底的に、面白がって働く努力をした上で、世の中に1人でも楽しく働いている人を増やしたい。おこがましいかもしれませんが、そのように社会に対して貢献したいのです。

そして、さらに深く考えていきます。では、どうやったら、楽しく働く人を増やすことができるのか?その方法論こそが、会社の経営理念なのではないかと、僕らは定義しています。

カヤックの経営理念は「つくる人を増やす」です。

繰り返しになりますが、この「つくる人を増やす」という言葉は、言い換えると面白法人というコピーに込められた「面白がって楽しく働く人を増やす」という思いを実現するための方法論でもあります。

なぜ、つくる人を増やすと、人生を楽しむ人が増えるのでしょうか?

人は何かをやらされている時はつまらないものです。主体性を持ってこの作品を、この会社を、この地域を、この国を……自分がつくっているのだと思えることで、きっと楽しくなるのではないでしょうか。

世の中につくる人を1人でも多く増やしたい。そうすればきっと、もっと人生を面白がる人が増えて幸せな社会につながっていく。

たとえば、「多くの社員が自社の株主になる」。これは、「自分自身がこの会社をつくっているんだ」という意識が高まり、面白がることが増える1つの方法だと考えます。

また、これからカヤックの株主になっていただける方も、カヤックを一緒につくる仲間です。上場するということは一緒にカヤックをつくっていく仲間が増えるということだと考える。そういう風に世界を見ようと思うのです。

あるいは、この連載でも何度か取り上げている(カマコンバレー)について。我々のような中小企業は、せめて自社の身の回りの地域に貢献すべきだという思いで続けています。が、これも鎌倉のためだけではなく、「この街をつくっているのは自分だ」そう思う人が1人でも増えれば、その街に住んでいるのが楽しくなるし、きっといい社会になる。そんな思いでこの活動を支援しています。

こんな風に「つくる人を少しでも増やす」ために、そういった存在になれるようカヤックをもっと成長させたい。

これが、僕らが上場した理由です。

最近では、準備をしてから1年~2年でIPOを実現してしまうような会社も少なくありません。そういった会社と比べると、僕らは変えなければならない部分も多く、準備には時間がかかりました。

しかしながら、この準備期間を振り返ってみて今思うことは、上場するために決められたルールの大半は、“株主という仲間を増やして株式会社として成長し続けたいと思う会社”にとっては、本質に適ったものであり、会社を強くするために必要なことばかりだったと認識しています。

改めて、すべての関係者(お客様、取引先、株主、社員、元社員、社員のご家族)に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございます。

ここからが本当のチャレンジです。成長に対してしつこく真摯に向き合い、邁進する所存です。今後ともどうぞ、ご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。

お知らせ

「自分自身が楽しく働き、面白さと収益を両立させ、世の中に1人でも楽しく働く人を増やしたい」そんな強い意志を持って、ともにカヤックを変えていっていただける、そんなすごい仲間を募集します。

僕らもこの機会をあらゆる面(アウトプットの質、仕事環境、働き方、待遇面……等)で、大きくカヤック自身を変えるきっかけにもしたいと思っています。

★来年2015年1月17日に行う採用イベント「1社だけの合同説明会」
http://www.kayac.com/recruit/gousetsu2015/

面白法人カヤックの社員100人が“渋谷ヒカリエ”に大集合!その場で内定が出る最終面接ブースや、退職者がカヤックについて語るブース、元社員に向けた出戻り就職相談ブースも!新卒、中途とも参加OK!

以上、カヤック代表、柳澤大輔の日経ビジネスオンラインで連載中の「ビジネスという“奇妙な冒険”」の転載です。
そのほかの記事は、コチラでご覧ください。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20111227/225722/

関連ニュース

© KAYAC Inc. All Rights Reserved.