2021.09.27
#面白法人カヤック社長日記 No.91社長日記復刻リメイク版その1:『ジョジョの奇妙な冒険』作者にお会いした話
ところで、この社長日記ですが、2015年からカヤックサイトで連載を始め、月に最低1回という形で続けています。実はそれ以前は、日経ビジネスオンラインや日経PCオンラインなどの媒体でなんと2006年から続けておりました。つまり、足掛け15年も社長日記を続けていることになります。しかも、今でこそ月1回から2回ペースですが、日経に連載していた頃の僕は毎週書いていました。8年間一度も休むことなく。よくできたなと思います。
そして、その過去8年分の記事は、以前までアーカイブがあり残されていたのですが、昨年、日経BPさんと日本経済新聞出版社さんの経営統合に伴って、日経さんのサイトからは見られなくなってしまいました。古い記事は、自分の成長の変遷を見るには良いものの、恥ずかしい内容のものばかりなので、これはこれで好都合なのですが、日経BPさんのご厚意で、過去のアーカイブをファイルでいただきました。
そこで、せっかくなので、その中からいくつかを多少リメイクして解説付きで、お出ししたいと思います。セレクトしたのは合計6本。これから6回にわたってリメイク版を紹介して行きたいと思います。
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念願かなって『ジョジョの奇妙な冒険』作者にお会いできました!!
2012年10⽉24⽇(⽔)
先⽇、念願がかないました︕
なんと、『ジョジョの奇妙な冒険』(以後ジョジョ)の作者である、荒⽊⾶呂彦先⽣ にお会いすることができました。ジョジョが⽣誕25周年ということで、そのお祝いの場に参加することができたのです。
ジョジョという作品のすごさ、それを25年も続けている荒⽊先⽣のすごさについては 世間の誰もが認めていることですし、漫画界だけではなくファッション業界にまで認められたその世界観についてはここでは書ききれないと思いますが、とにかくかっこいいのです。その作品の世界観は、クリエイターはもちろん、多くの起業家にも影響を与えています。新しいチャレンジをする⼈にとっての指針と⾔えるかもしれません。
友情、努⼒、勝利。会社経営に必要なこと
⼈格形成において漫画に影響を受けた起業家というのは結構多いと思います。以前、とある書店の企画で経営者20⼈が推薦する漫画を紹介するコーナーに参加したのですが、みなさん漫画が大好きで、本当に愛情を持っていました。
僕は今年で38歳ですが、この前後の年代の経営者は、ちょうど⼩学⽣中学⽣だった頃と週刊少年漫画誌の⻩⾦期がかぶっています。たとえば、ジャンプシステムといわ れる、友情、努⼒、勝利。これはまさに会社経営に必要なことで、そこから多くの ことを学んだといっても過⾔じゃありません。
中でも、漫画の名シーンや名セリフには、ほんとに⽣きていく上で、そしてビジネスにおいても⽣かせる教訓があります。
ジョジョの名台詞(セリフ)を 1つだけ紹介
たとえば、軽く1つだけ紹介したいと思います。ジョジョのセリフから。
ぼくには指4本など失ってもいい理由がある! それは⽗を守るため! ジョー スター家を守るため! 君らとは闘う動機の「格」が違うんだ!
(『ジョジョの奇妙な冒険』Part1 1巻 P186)
はい。きました。最初の第1部の第1巻からいきなりこれです。しびれます。
主人公であるジョジョが⽗親の病気の⼿がかりを探すため スラム街を訪れ、そこに住む悪党たちと闘ったときに発した⾔葉です。
この「動機の格が違う」という言葉。この部分に注目してください。
それは、悪党たちが強盗をしようと「⾃分本位な欲」で動いているのに対して、 ジョジョは⾃分のためではなく、「⽗のため、ジョースター家のため」に動いています。
ジョジョはとてもまっすぐな⼈間で、誰に対しても敬意を払う真に優しい漢(ヲトコ)なので、「⾃分の動機のほうが格が“上”だ」という上から目線の直接的な表現はしていませんが、「⾃分の動機のほうが、格が高く、だから⾃分が闘いに負けるわけがない」という強い意志があります。
これはビジネスにおいても言えることなのではないかと思います。
「⾃分のためだけに動いている⼈間か?」
それとも、
「⾃分のためだけではなく、他者のためにも動いている⼈間か?」
の違いで、後者のほうが動機の格では上であり、勝負に勝つということなのではないかなと。
そもそも、会社を成⻑させたいのであれば、⾃社の都合だけではなく、他社との共⽣や、社会に対してどう貢献していくかを考えなければならない。これは経営が進化していくと必ずたどり着くところです。
これは「そうしなければならない」という哲学や美学の話ではなく、「そうした方が悪党に勝てる」、すなわち、より現実的な「戦略」としてその方が正しいのだと漫画が教えてくれます。
ジョジョの世界観は⼈間賛歌
ここで悪党に勝てると書きました。でもジョジョを読むと、勝ち負けだけがすべてではないと学ぶことが多い。これは、ジョジョに限らず漫画の世界全般で言えそうです。悪党は最後まで徹底的に悪党のままのこともありますが、時には主人公たちと仲良くなっていいやつに改心したり、悪党なりの理屈や美学が見えてくることがある。当時の少年漫画によって僕はそれを学ばせてもらいました。
ビジネスの世界でも勝ち負けがあります。ただ、世の中は勝ち負けだけが全てではありません。この狭い地球の中で勝ったり負けたりに興じるがあまり、世界にとって害をもたらすようなことも起きてしまいます。であれば、さっさとお互いに手をとりあって世の中をよくした方がいい。自社都合だけで動くのではなく、より大きな動機のために、時には敵とも手を組むことができる、これは漫画の中でもよくあることで、そんな世界観に僕らも影響を受けています。
このようにいろいろな影響を与えてくれたジョジョに改めて御礼申し上げます。 25周年おめでとうございます。
――
2021年の柳澤からの解説:
この記事を書いた僕が38歳。当時の興奮が伝わってきます。荒木先生に会えてよっぽど嬉しかったのでしょう。多くの人がいる生誕25周年パーティに参加してちらっとおみかけしただけなので、もちろん荒木先生は僕のことなど覚えていないでしょう。それでも当時の興奮が蘇ってきました。
ちなみに、その当時からもう9年経ちましたが、『ジョジョの奇妙な冒険』は、まだ続いています。ちょうど先月(2021年8月)に、冒険 Part8となるジョジョリオンが完結しました(過去の作品はもちろん全部単行本で揃えております)が、すでに次回作をほのめかす話が出ているそうですので、まだまだ続きそうです。第一部のスタートが1987年でしたので、もう35年近くも!!!
願わくば生誕35週年の会にも参加できることを祈っています。(そもそもどうやって25周年の会に参加できたのか・・・記憶にない・・・誰が誘ってくれたんだろう)
(原文は日経ビジネスオンライン2012年10月24日掲載。日経BPの了承を得て掲載しています)
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