2022.07.27
元編集者がちいき資本主義事業部にもたらす新風!「問い続ける軌跡が私たちの価値になる」
カヤックでは珍しい元編集者というバックグラウンドを持ち、移住スカウトサービス『SMOUT』のプロデューサーとして活躍する宮本さん。なぜカヤックに転職したのか、築いてきたキャリアをちいき資本主義事業部でどのように活かしているのかをインタビュー。
「これからの資本主義」「資本主義の中のエアポケット」を問い続け、カヤックで見出した解とは......?
宮本早織
1982年生まれ、2021年入社
ちいき資本主義事業部/『SMOUT』プロデューサー
座右の銘は開高健さんの「森羅万象に多情多恨たれ」
元編集者はなぜカヤックへ転職したのか?
ー本日はカヤック・ちいき資本主義事業部に中途入社された宮本さんに、転職の経緯や実現したいことについて伺いたいと思います! もともと前職はどのような仕事をされていたのですか。
前職は、企業のデジタルマーケティングの支援をする会社で、オウンドメディアの企画・編集・運営や、デジタルコミュニケーション施策を担っていました。
7年ぐらい勤める中で、メディアの編集から仕事内容が徐々に変化して、企業のサステナビリティや企業・行政・市民での共創、社会課題にどう向き合うかといったプロジェクトに関わるようになったんです。「これからの資本主義はどうなるのか」に興味が湧いてきて、仕事としてもっとコミットしていきたい気持ちが強くなったことが転職のきっかけです。
また、資本主義的には、仕事というものは分業することで効率的になりますが、そもそも「ここまでは私、ここまでがあなた」という捉え方自体が好きではないのかも、と思って......。さらには、仕事と暮らしを切り分ける生き方についても色々な疑問が湧いてきました。
ー資本主義や分業について考える中で、様々な気持ちの変化があったのですね。転職する際になぜカヤックを選ばれたのですか。
社長の柳澤の著書『鎌倉資本主義』を読んだことから、カヤックは既存の資本主義的な分業をする会社ではないだろうと感じ、まずは話を聞きに行きました。
前職は、どちらかというとクライアントワーク事業部(現面白プロデュース事業部)の仕事の範疇に近いんです。でも、ちいき資本主義事業部長と面接してみたところ、三拠点生活だったり、 職住近接しながら鶏を飼育していたり 、地域に根ざしたユニークな暮らしぶりが印象的で......。仕事と暮らしが切り離されていない生き方を体現しているように見えて新鮮でした。
単に条件や年収がいいとかではなく、「この人たち面白そう!」と感じられたから転職したのだと思います。
ー転職の際には、どのような思いや期待がありましたか。
人生のテーマとして、「資本主義の中のエアポケット的な場所を見つけたい」と思っているんです。「資本主義の限界」という言葉をよく耳にしますが、一方で私たち自身かなり内面化していて、簡単に逃れられるものではない。例えばある本によれば、明日の為に早く寝ることだって、明日・明後日のために今を犠牲にするという意味で、すでに資本主義的な考え方だと言えるのだとか。
だから、資本主義をただ否定するより自分もその一部であることを認めた上で、そこから少しでも逃れられる場所を見つけることが、自分なりの問いなんです。
このとりとめもない思いは、カヤックのちいき資本主義事業部のやっていることとも通じていると思いました。『SMOUT(スマウト)』は「ここではないどこか」で自分らしく生きる選択肢を提供しうるプラットフォームだし、『まちのコイン』は法定通貨ではないコミュニティ通貨という意味で、資本主義のものさしから逃れる選択肢になり得ます。自分のお題へのひとつの解となるサービスに携われること、自分なりの発見ができそうな環境であることが、いちばんの魅力と期待でした。
移住スカウトサービス『SMOUT』を通して、つくる人をふやす
ー現在は、ちいき資本主義事業部で移住にまつわるサービス『SMOUT』に従事しているそうですが、サービス内容について簡単に教えてもらえますか。
『SMOUT』は、移住したい人と受け入れたい地域をマッチングするオンラインプラットフォームです。移住したい人のプロフィールを見て、地域が直接スカウトする仕組みが特徴。メディアは「うちはこういう地域です」と一方的に情報発信することが多いのに対し、スカウトから始まる『SMOUT』のサービスはコミュニケーションが生まれやすいんです。
ー宮本さんは『SMOUT』でどのような仕事を担当しているのでしょうか。
マッチングがうまくいくように、手を替え品を替えコミュニケーションをサポートをするのが私の仕事。プロデューサーとして、移住者募集プロジェクトを作成するための講座や勉強会を開催したり、開発チームと一緒にユーザビリティの方針を考えたり、営業チームと一緒に企画出しをしています。
『SMOUT』の仕事は個人が担う範囲が広く、分業や外注をあまりしないことに驚きました。イベント開催・配信・企画出し・営業・カスタマーサポートを同時進行することもよくあります。ひとりひとりが「つくる人」として、主体性をもって最後まで関わるところがカヤックらしいですね。
このサービスに携わってみて面白いと感じたのは、地域につくる人をふやすサービスでもあることです。現在掲載されている6千ほどのプロジェクトは、地域の方が全て自分たちでつくっています。
ー地域の方の積極性がすごいですね。カヤックの理念「つくる人をふやす」が反映されていると言えますね。
はい、人気のあるプロジェクトはよく考えられていて、タイトルも写真も完成度が高い。そういうプロジェクトには、多数の応募が集まるといういい流れができています。逆に、募集要項をコピペしただけだと、よほど魅力的な案件でない限り、人は集まらないんですよね。
文章の書き方や写真の見せ方の講座も開催していますが、私たちが手を動かすのではなく、あくまでサポートに徹しています。
独自の視点から新しい発信!人生の選択肢を広げる
ー元編集者というバックグラウンドはカヤックでは珍しいと思うのですが、今までのキャリアを地域の仕事の領域でどのように活かしていますか。
編集者はライターやクリエイターと伴走していいものをつくることが仕事。今はその相手が自治体や地域の方に変わっただけで、自分としては180度違う仕事をしていると感じたことはありません。今は、地域につくる人をふやす、という点でキャリアを活かせていると思います。
例えば、『SMOUT』を使っている地域の方を対象にした『どすこい!地域部屋』というコミュニティがあるのですが、そこで文章の書き方やユーザー目線を意識した情報発信のアドバイス、移住業界のトレンドを共有しています。
また、移住オンラインイベント『みんなの移住ウィーク2022』(2022年6月実施)では、「働く」「住む」というベーシックなテーマに加え、環境問題やサーキュラーエコノミーなどを扱う「地球の循環」、先進的な地域の教育やリカレント教育などを扱う「学ぶ」といった新テーマを盛り込みました。テーマを変えることで、集まってくるユーザーも多種多様になるのが面白いですね。移住先を選ぶ観点の選択肢を増やしてもらえれば、と思っています。
最近、感度の高い若いユーザーさんと話すと、「移住したら補助金が100万円出ます」というメッセージより、環境問題への対処を移住のポイントとして考える人が少しずつ増えています。新しい視座をふまえて、環境への配慮、子育て支援、ダイバーシティなどに関する地域の取り組みもアピールしていきたいです。例えば、女性議員の比率が高い地域は、女性が活躍しやすいと感じられますよね。そういった、従来に無い切り口の発信も少しずつ進めています。
ー地域経済の活性化や、移住先の仕事や暮らしについての発信はよく目にしますが、その切り口は新鮮ですね!
そもそも、地方創生だけのために『SMOUT』を運営しているとは思っていないですし、地方創生という言葉が好きじゃないんです、笑。いわゆる「補助金をもらって地方を盛り上げよう」という狭い視点ではなく、「今の時代、人は何に悩んでいて、どうしたら幸せになれるのか」を考えたい。もっと、人そのものにフォーカスしたいというか。
住む場所や関わる人が変わることでよりポジティブになれるという意味で、『SMOUT』は人生を変えることができるサービスだと思うんです。実際に『SMOUT』を利用した人から、そういう事例を感じられることがやりがいです。
また、サービスを続けてきた中で集まったデータを活用しつつ、自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進にも寄与できればと考えています。エモーショナルな部分とサイエンスの部分、両方に挑戦していきたいですね。
凸凹を認め合う、心理的安全性
ー仕事をする上での苦労や課題はありますか。
中途入社だからこそ見える課題は色々ありますが、意識していることは、他者の合理性を理解すること。『SMOUT』は5年目のサービスで、色々な人の色々な思いが詰まって出来上がっています。合理的な判断でやってきていることに対して、「もっとこうすべき」と安易に批判するより、「なぜこうなっているのか」を考えるようにしています。
例えば、メディアにはたいていAboutページがあり、理念やミッションなどを端的に表すひとことが書かれています。『SMOUT』にははっきりしたタグラインが無いので、転職直後はAboutページを充実させた方がいいと思いました。
ただ、よくよく考えてみたら、メディアとプラットフォームは違うもの。メディアはひとつの理念に即したコンテンツをつくって掲載しますが、プラットフォームは様々な「つくる人」が集まる場なので、色を固定しないこともひとつの選択なんですよね。そこに他者の合理性があったんだな、と思い至りました。
ー『SMOUT』は多様な「つくる人」自身が主体だからこそ間口を広くしておきたい、という捉え方でしょうか。
このサービスには「余白」が必要だと気づきました。使われている地域も広いですし、様々な理念の発信があります。「何か一気通貫したものがないとダメだ」という固定観念が、私自身にあったのかもしれないですね。
アンラーンというか、学んできたことから一旦離れることも大事だな、と思っています。移住ビジネスや地方創生は、「移住業界はこうだから」「地方創生はこういうものだから」と、中にいる人は結構ワンパターンなっている節があります。そうするとアイデアが広がっていかない。自分もすでにその中にはまっている感もあるので、凝り固まったものを捨て続けることを大事にしなくては、と思います。
ー業界的に形骸化しがちなところがある、と。
そうなんです。「そこに乗っかってどうする!」という気概が無いと、陳腐なものになってしまうだろうな、と思います。正直、皆同じことをやっている傾向があるので、そこからどう抜けていくかはこれからの課題です。
ー課題と言えば、最初に話していた「資本主義のエアポケット的な場所を見つける」ことの解は得られそうですか。
難しいですね......。色々な捉え方があると思うのですが、少なくともここには「心理的安全性」があると感じます。というのも、今自分がいる『SMOUT』は、相手の多様性を認め、関わり合いの中で協力し合うチーム。転職前は、ある程度オールマイティに仕事ができることが正しいと思っていましたが、みんな結構凸凹しているんです。私に関しても、編集はひとつのスキルでしかないのでできないこともたくさんあるし、エンジニアリングも全然分からない。それでも居場所があると感じられるんです。
こういう心理的安心性があり、凸凹を許容した組織の在り方って、ひとつの「資本主義の中のエアポケット的な場所」であると言えるのかもしれませんね。
ー最後に、これから目指したいと思っていることを教えてください。
『SMOUT』をよくしていくことはベースとしてあるのですが、ちいき資本主義事業部という名前をもっと活かしてコミットしていきたいです。だって、こんな変な名前の事業部って、あまり無いじゃないですか、笑。
地域資本主義って何だろうと問う時に、メンバー全員がそれぞれの考えを持ち、ああでもないこうでもないと毎日議論できるようなチームになるといいな、と思います。日々忙殺されていると事業部名について深く考えるチャンスが無いので、最近は周りのメンバーにどう思うかをあえて聞いたりしています。
正解なんて無いけれど、問い続け考え続けることが大事だと思うんです。その軌跡が私たちの価値になる。地域資本主義自体に真摯に向き合って、組織の在り方を日々考えていった先で、『SMOUT』と『まちのコイン』だけじゃない新しい事業にもチャレンジできたらいいですね。
取材・文 二木薫
カヤックの仕事に興味を持ってくださった方へ
カヤックのニュースレターに登録しませんか? メールでカヤックの制作実績や社員インタビューなどの最新情報をお届けします。やってみたい面白そうな仕事や一緒に働きたい社員に巡り会えるかもしれません。ご登録お待ちしています。