2023.06.28
面白法人の採用担当者に聞く「カヤック流、面白い組織のつくりかた」
自ら「面白法人」と名乗るカヤックの人事採用はどのように行われているのでしょうか。一般的な人事との違いや、カヤックならではのユニークさと難しさをヒアリング。カルチャーフィットを重視する採用での解像度の上げかた、カヤックが考える「組織の面白さ」とは......?
佐藤謙太(右)
1987年生まれ、2015年カヤック入社
人事部/採用担当
カヤックの採用責任者、トーナメントプラットフォーム『Tonamel』のコミュニティマネジャーを担当し、現在は複数のグループ会社の人事支援を行っている。スマブラが普通の人よりちょっとだけ上手い
歌野原洋允(左)
1981年生まれ、2021年カヤック入社
人事部/採用担当
埼玉出身。チラシの制作会社、転職エージェントを経てカヤックへ。未だにただのカヤックファンです
人事採用経験者も驚く?!カヤック独自の選考
ー本日はカヤックの人事採用について伺っていきます。まず、簡単な自己紹介をお願いします。
- 佐藤
- カヤックに転職する前は、新卒採用の責任者や総務の仕事をしていました。2015年にカヤックの人事採用担当として入社し、現在は、主にグループ会社の人事採用を支援しています。
- 歌野原
- 新卒後は制作会社を経て、人材紹介エージェントに転職しました。最初は外部からカヤックに人材を紹介する立場だったんです。2021年に中途入社し、今は自分自身がカヤックの人事採用担当として働いています。
ー佐藤さんも歌野原さんも中途入社ですが、カヤックのどんなところに惹かれたのでしょうか。
- 歌野原
- まず、「面白法人」という名前のインパクトが大きかったです。それから、領域にこだわらず、面白いけれど全然お金にならなそうなことを収益化していることに衝撃を受けました。自分はカヤックのクリエイターにはなれないけれど、人材紹介なら役に立てるのではないかと思いました。
- 佐藤
- 僕の場合は、最初はカヤックがそこまで好きではなかったんです、笑。それに、人事の領域から外れようとも思っていた。
- でも、「カヤックの人事にはすごい人がいるよ」と信頼しているエージェントの方に勧められて、柴田史郎さんとみよしこういちさんに会ったことで気持ちが変わりました。人事という仕事をひたすら考え抜いて活躍するふたりに驚き、一緒に働いてみたくて転職を決めました。
ー先に転職していた佐藤さんが、歌野原さんをカヤックに誘ったのだとか。
- 佐藤
- そうなんです。歌野原さんとはエージェント時代からのお付き合いですよね。
- 歌野原
- カヤックの「1社だけの合同説明会」で「決定ナンバーワンエージェントブース」の担当もしていました。どうやったら採用がうまくいくか、2週間に一度は一緒にブレストしたりしていましたね。
- 佐藤
- 僕がカヤックに入社した当時、まだ人材紹介エージェントとの関係がうまく機能していなかったんです。そんな中でも歌野原さんは、求人も特に出していないのに積極的に人を紹介してくれるし、カヤック独自の選考スタイルを理解してくれていました。だから、声をかけてみたんです。
ーカヤックの選考には独特な点があるのでしょうか。
- 佐藤
- 当時は特に、スキルよりカルチャーフィットを大事にしていました。カルチャーフィットは本当に言語化しづらい判断基準。でも、歌野原さんはカヤックに合いそうな人を連れてきてくれるし、採用実績もありました。
- 想像し辛いかと思いますが、あの頃は求人票通りに採ったことはほとんど無かったかもしれません。「いい人がいる!」となると、その場で2次面接以降の担当者を呼んで即採用することもあり、破茶滅茶でした、笑。
- 歌野原
- 最初はとても驚きましたが、カヤックが大事にしているものが普通の人事選考とは違うことが何となく理解できるようになっていきました。
「熱量」「多様性」「マッチングポイント」が面白い組織をつくる
ー「何ができるか」というスキルより、「どんな人か」がポイントになるという点について、具体的に聞いていきたいと思います。何かエピソードはありますか。
- 佐藤
- 求人票に書かれているスキル・経験ベースで人を集めるのが得意な人事担当者はたくさんいると思いますが、歌野原さんの紹介はキャリアチェンジの人ばかりでしたね。例えば今、アキバスタジオで大活躍しているすご腕エンジニア。「この人は今ディレクターだけど、カヤックのエンジニアに向いている」と紹介されて、新卒で少しコードを書いたことがある位の人を技術職で採用しました。カヤックはそういう会社なんですよね。
- ゲームプランナーから広告プロデューサーになった人、UIデザイナーから広告のアートディレクターになった人もいます。
ー皆さん色々な可能性を秘めているんですね......!
- 歌野原
- 全く違う分野から転職してきて、ハイパーカジュアルゲームでダウンロード世界一を達成したり、メタバース事業部のテックリードになったり、多くの成長を見ることができました。採用した人がイキイキと活躍してくれると、本当にやりがいを感じます。
ー面接では、どのような部分を見ているのですか。面白法人と言うからには、面白い人じゃないと採用されないのでしょうか。
- 歌野原
- 面接では、「面白い人」という採用基準ではなく、面白いものを追い求める姿勢や熱量を必ず見ています。好きなものへの着眼点や面白がり方が重要なんです。自分の中で熱く語れるものがある人はそのパワーで事業を盛り上げてくれる、というエビデンスになると思っています。
- 佐藤
- あと、会社に色々な人がいること、それが大事です。というのも、カヤックでは、「面白い=多様性」だと考えているから。なぜこの経歴でカヤックに来たのかと驚くような変わった人や、すごく真面目な人が共存している状況自体が、面白さを生んでいると思うんです。ただ、真面目と言っても皆、心は柔軟です。指示待ちに慣れていたり、固定観念が強いと辛いかもしれません。
- 僕は、カヤックのことをよく「動物園」に例えます。ライオン、ペンギン、象など全く違う生き物がいて、ひとつのエンタメ空間になっている。
- 歌野原
- だからこそ、採用基準や判断の抽象度が上がっちゃうんですよね、笑。
ーなるほど、採用担当者自身の解像度を高めることが重要そうですね。
- 佐藤
- カヤック本体の採用担当時代は、「入社後に活躍する人を採用すること」を重視していました。採用後も、1on1や現場のヒアリングを続けていき、カヤックで活躍するために何が必要かを理解することに努め、そこで把握したことを採用活動に反映させるようにしていました。
- 歌野原
- 転職して1年半が経ち、各事業部のメンバーの顔や状況も見えるようになってきたので、志望者と現場の人たちとが一緒に働いているところを必ず想像するようにしています。また、誰と一緒になったらより頑張れそうか、というマッチングも想像します。ミスマッチによる退職はすごく残念ですから。
- 佐藤
- やっぱり、事業部とのコミュニケーションが大事。最近このエンジニアがこのゲームにハマっている、みたいな小さなことが採用のヒントになったりするんです。カルチャーフィットの採用は、マッチングポイントにかかっている。当時は、現場で半日くらいウロウロしながら、とにかく色々な人と会話するようにしていました。
効率に頼らない柔軟なバランス感覚で、新しい価値をつくり続けていく
ーその他にも、一般的な人事とは違うと感じる部分はありますか。
- 歌野原
- 様々な面で、一般的な人事とは違います。服装からしても、かっちりしたスーツからスポーツウェアまで、全くバラバラです。佐藤さんはいつもランニングするような格好をしてますよね、笑。
- 佐藤
- 珍しいといえば、様々な学問分野からアプローチするアカデミックな人事をしているところ。いわゆる採用トレンドを研究するというより、人事領域に限らず研究論文を読み込んで、施策を決めるようなレベルでやっています。
- 歌野原
- 最初に話したようなアクロバティックな破茶滅茶さは、以前に比べると少なくなったような気もします。
- 佐藤
- ただ、「採用活動においてもやっていることが面白いかどうか」を問われるところは、まさにカヤックならではの部分。「いちゲー採用」「エゴサーチ採用」「エイプリル採用」など、面白採用キャンペーンを行って話題化してきました。採用キャンペーンで、成果につなげること以上に面白さが大事だなんて、もはや謎ですよね。
- 歌野原
- 一応、そこから採用して事業部長になった人もいますよね。
- 佐藤
- 「いちゲー採用」に関しては、ゲームが上手い人やかなりやりこんでいるという人は想像以上にいて、1日6本面接する日もあり内心辛かったです、笑。エイプリルフールにかけた経歴詐称もOKの「エイプリル採用」は、連絡先から詐称する人もいて滅茶苦茶だったとか。
▲「ウソをつくのも才能のひとつ」。エイプリルフールの日限定で実施されたかつてない企画には、3000名以上の応募が殺到した
ー採用活動自体をコンテンツとして面白くすることが重要なんですね。仕事上、難しいと思う部分はありますか。
- 佐藤
- 先ほど話したように、どんなタッチポイントもマニュアル通りではなく「カヤックらしさ」を意識しているんです。それを理解できるかどうかが、カヤックでの仕事のやりやすさにつながっていると思います。
- 例えば、問い合わせ対応や不合格理由の回答の仕方も、「カヤックらしい対応とは何か」を考え抜きます。これはやなさん(カヤックCEO)の思想に基づいていて、HPからのエントリー、エージェントからの書類選考、カスタマーサポートも、未だにやなさん自ら一次対応しています。やなさんとカスタマーサポートが一件一件問い合わせに向き合ってくれた結果、「カヤックが好きだ」という思いで何度もコンタクトを続けてくれた人材派遣会社さんにピンチを救ってもらったこともあります。
- 僕は今、グループ会社の採用を担当しているのですが、社外に出てみてカヤックのブランドづくりへのこだわりの強さを実感することが多い。そもそも、「採用は会社のファンを増やす活動でもあるから、たとえ不合格であったとしても関わった時間をどれだけいいものにできるか」なんて考えること自体がなかなか無いですよね。
- 歌野原
- そこに関しては、最近学びがありました。採用不合格の連絡後、媒体経由で何度も問い合わせが続いていて、ある程度のところでいったん対応終了にしようと思ったんです。でも、それに気づいた柴田さんが回答内容の提案まで一緒に考えてくれて、最後まで良いコミュニケーションを続けることができた。カヤックで採用を担当するなら、効率に頼らないスタンスが必要だと分かりました。
ーでも、リソースを考えると大変そうです......。
- 佐藤
- カヤックらしさを理解するには、柔軟なバランス感覚を求められます。まず、ロジカルに物事を考えられないとだめなんです。それをやることの意味、正しさをすごく問われる。その一方で、非効率を優先することも受け入れないといけない。
- 例えば、「ぜんいん人事部」は効率の良い打ち手なんです。社員全員に人事部という肩書きがついていれば、興味のある人に声をかけてもらえる確率が高まります。ただ面白いだけではなくて、根拠がある。
- 一方で、面白採用キャンペーンはすごくユニークな企画ですが、そこから実際の採用につながるかは完全に未知数です。「これをやる意味はあるんですか?」と聞きたくなるような非効率なことも、受け入れる難しさがあります。
ーでは、カヤックの採用担当者にはどんな人が向いていると思いますか。
- 佐藤
- それがハッキリ分かるといいのですが、僕自身、向いているのかどうかもまだ分からないくらい。動物園の話をしましたが、「こういう人だから向いてる」と決めつけない方がいいのかもしれません。カヤックの人事には本当に色々なタイプの人がいますよ。歌野原さんみたいに人と話すのが好きで粘り強いコミュニケーションを得意とする人もいれば、あまり主観を入れないドライな人も多いです。
ーそれは意外です。人事といえば、「人が大好き! コミュニケーションが大好き!」というイメージがありました。
- 歌野原
- 人事で忘年会を開いた帰り道、それまで盛り上がっていたのに電車内では別々で、黙々と帰る人とかいました、笑。
- 佐藤
- それぞれとても優秀なのですが、皆けっこう凸凹しているんですよね。
- 例えば、企画力に優れてクリエイティブだけど基本的に面接が不得意で、志望者がつくっているものが面白いかどうかなどセンスを問われる場面だけ登場するとか。僕は逆にセンスとかクリエイティブな領域は得意ではないので、面接や内定承諾率、選考スピードなど真面目な部分を頑張っていました。
そう考えると、僕にはできないことができる人が来てくれるといいと思っています。そもそも、カヤックの中途採用のコンセプトって、そんな感じでしたよね。
- 歌野原
- 「カヤックを変えてください」ですよね。「カヤックに、新しい発想をもたらしてください。新しい才能を、新しい技術を、新しい決意を、新しい刺激を持ち込んでください。カヤックは、変わり続ける会社。そのためにあなたの力が必要です。」これはやなさんが書いた文章です。
- 佐藤
- 普段あまり意識しないけれど、こうやって見ると「つくる人を増やす」という理念に立ち返りますよね。何かひとつ熱くなれるものや武器がある人にはピッタリな場所だと思いますよ。新しい価値を与えてくれる人、お待ちしています!
(取材・文 二木薫)
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