たぶん世界初のコピペできるアスキーアートのミュージックビデオ制作秘話 | 面白法人カヤック

Client Work

2014.04.17

#クリエイターズインタビュー No.22
たぶん世界初のコピペできるアスキーアートのミュージックビデオ制作秘話

Client Work

アスキーアートをご存知でしょうか?

 ∧_∧
  ( ゚ω゚) ソロ~リ
..ノ| ハ,,
 ,√ 7"

こういうふうに記号や文字を使って、絵にすることをそう呼びます。先日カヤックで制作した、アーティストHaKUのシングル「the day」のミュージックビデオと特設Webサイトは、アスキーアートをふんだんに生かしたコンテンツでした。

ミュージックビデオでは、「the day」の曲中の歌詞にある単語を使ったアスキーアートで、HaKUの演奏している映像をアニメーション化。

特設Webサイトでは、そのミュージックビデオで動いているアスキーアートがテキストをコピペするようにコピペできたり、好きな画像を「the day」の曲中の歌詞でアスキーアートにできたりします。

一見シンプルに見えながらも独自の技術が詰まったコンテンツ。その制作背景について、ディレクターの深津康幸、ミュージックビデオの監督兼プログラマー担当の衣袋宏輝、編集担当の天野清之に話を聞きました。

「アスキーアート動画」のアイデアは5分で決まった

—— ミュージックビデオと特設サイト2つのコンテンツを制作したとお聞きしましたが、まとめてのご依頼ですか?

深津
最初はミュージックビデオのみのご依頼でしたが、Webサイトもあるほうが話題になるとご提案し、特設サイトも併せて制作させてもらいました。衣袋は撮影全般と開発、天野は進行や映像編集などを担当し、カメラマン以外はすべて内部スタッフです。ちなみにHaKUのグッズ、3wayキャンバスバッグは僕がデザインしています。

—— へえ!

深津
ミュージックビデオを構成から編集まで手掛けたのは、カヤック初ですね。アーティストさん側からの要望や指定は特になく、曲の印象や詞の内容が今までと違う前向きな印象になったことや、メンバーが歌詞を大事にしているということを伺いました。その内容を衣袋に伝えたところ、「アスキーアートはどうか」というアイデアが出たんです。
衣袋
それを基に、ネタ帳からいくつか再構成したネタを30個ほど用意して打ち合わせに臨んだんです。始まって5分位でOKをいただきました。面白いことであればOKというアーティストさんなのでしょうね。

画像

—— ネタは今回の企画のために考えていたものですか?

衣袋
いえ、普段のネタ帳から合うものを選んで細かな内容を詰めました。以前からアスキーアートの動画に興味があって。でもいわゆる職人と呼ばれる人たちが手動でつくるものが大半だったので、プロの技術も加えてつくったら面白いんじゃないかなと。

—— アスキーアートの動画はいわゆる映像作品ですよね。

衣袋
そうですね。何百枚ものアスキーアートの静止画をつないだものです。でもアスキーアートは文字や記号ですし、Web企業のカヤックならではの技術を組み合わせた「コピペできるアスキーアートの映像」を提案したところ、先方さんも面白いと言って採用してくださったんです。

人生初のミュージックビデオの監督

—— 制作はどんな流れで?

天野
まず、衣袋のアイデアをベースに、社内でグリーンバックの環境をつくって撮影して、一枚の絵をアスキーアートにしモックをつくりました。その後、衣袋が描いた絵コンテから、撮影と編集をして実写版の動画を制作し、それを同じように変換してアスキーアートの動画を制作しました。ちょっと説明が難しいですが(笑)。

—— 絵コンテではアスキーアートに変換した時の違いの見えやすさなどを意識したのですか。

衣袋
それもありますし、普通のミュージックビデオとして見ても、カッコよく見えることを意識しました。動く記号がよく見ると人に変わっていく…という流れができるように。
天野
手作業ではこのタッチを出すのは難しいと思いますね。一般的なアスキーアート動画は仕上がりが平面的ですが、動画を直接変換するので立体的なディテールを持つ動きが出せるんです。

—— 通常、アスキーアートにはアルファベットや記号が使われますが、このMVには日本語も出てきますよね。変換の扱い方は同じですか?

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画像

衣袋
それがまったく違うので大変でした。普通のAAのMVだと文字幅を同じと見て文字をドット絵的に扱うんですが、日本語は文字幅や大きさが全て異なるので、そこを考慮してフルブラウザで見られるプログラムを組んでいます。普通に見ているとわからないですが、相当細かな処理をしています。

動画をアスキーアートに変換する魔法のツール

——今回のミュージックビデオで使用されたソフトウェア「AAGram」の仕組みを教えていただけますか。

画像

衣袋
はい、たとえば右のウィンドウに歌詞を入力すると、左のウィンドウに表示された画像がアスキーアートに置き換わります。フォントサイズの変更、全面や輪郭線の描画やトーン化、モノクロやカラーも右の項目で設定するだけです。

—— このツールはどのくらいの時間で制作したのですか?

画像

衣袋
アプリ自体は2週間ほどで完成したんですが、途中で検出判定の修正などが必要になり、結局1カ月ほどかかりました。
天野
企画から完成までが1カ月位だったもんね。スタートから撮影日まで10日しかなくて、絵コンテの編集と香盤づくりを3日でやったような…。

—— そんな短期間でツールは開発できるものなんですか?

天野
いやいや稀です。ただカヤックは、各技術に精通したエンジニアがいてほぼ内製できるからその意味では強いですね。何をつくるか、できるかどうか、どうつくるかを社内で判断できるので時間のロスが少ない。
衣袋
最近感じるのはツールからつくると強いということです。PhotoshopやIllustratorでつくると作品にどうしてもツールの色が出ますが、ツールからつくれば独自の作品になりますから。今回の作品はそういうものになったと思います。
天野
いいクリエイティブはゼロからやることが大事なんですよ。全部オーダーメイドでつくるのがいい作品を生む秘訣だと思います。

—— ツールは時間がかかるだけに既存のものを使いがちですもんね。

天野
そうですね。あともう一つの面白さは、監督がエンジニアってところ。アプリ開発とMVの世界観づくりを同じ人がやるなんてそうないですよ。アスキーアートの動画にしたいからツールをつくるって発想も面白いですよね。

—— 監督をされたのは今回が初めてですよね?

衣袋
はい。監督の立場は本当に大変だなと…カメラマンさんに撮り方を伝えるのが特に難しかったですね。

—— そんな苦労を経て生まれたツールや表現ですが、今後何か応用してみたい物などはありますか?

ニコ生で見られる天野作のAA動画

天野
僕はもう自分の趣味に活用しています(笑)。それとは別で、今回はライブ撮り的な面も重要だったよね?
衣袋
そうですね。リアルタイムで対応できる要素が多いので、ライブ演出にも絡めるよね、というお話はありましたね。せっかくなのでライブにも絡めれば嬉しいんですが…。アスキーアートだけに限らず、僕自身、ライブ演出に興味があるので何かの形で実現できたらと思います。

本プロジェクトでミュージックビデオ制作の経験も加わったカヤック。Webサイトを飛び出し「なんでもつくる」化の加速しつつある中、そのクリエイティブの幅はより広く、より面白くなっていくと言えそうです。

HaKU NEW SINGLE "the day" SPECIAL SITE
http://www.haku-music.net/cam/theday/

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