2024.02.21
#クリエイターズインタビュー No.82カヤック×baton、共創のシナジーは無限大!BTC型チームで挑む新規事業立ち上げ支援
新規事業の立ち上げやDX化で悩む企業のお悩みを解決するべく、面白法人グループを横断したかつてない支援体制が登場。BTC(ビジネス・テクノロジー・クリエイティブ)の視点でマーケットインする斬新なアイデアをビジュアル化し、プロトタイプ開発からサービス立ち上げまで併走するプロジェクトとは......?「世界一」という言葉も飛び出した担当チームが、案件のプロセスと今後の豊富について語る。
前田徹哉さま(中央)
株式会社baton/ 執行役員 アライアンス部 ゼネラルマネージャー
マーケティング一筋。B2Cマーケが長く、今はB2Bマーケの分野で戦略や計画立案を実施中
杉政英樹(左)
株式会社カヤックアキバスタジオ/CEO、カヤックボンド/DX事業部マネージャー
オリジナルIPをヒットさせるのが夢
後藤裕之(右)
面白法人カヤック/ディレクター
円周率暗唱(42,195ケタ)元ギネス記録保持者
◆労働集約型から脱却した新規サービスを立ち上げたい
ー最初に、今回の依頼のきっかけについて教えていただけますか。まず簡単に自己紹介をお願いいたします。
前田
「楽しいから始まる学び」をテーマにしたメディア「QuizKnock(クイズノック)」を運営している、「株式会社baton」の前田です。YouTube動画やWeb記事を中心に4年ほど前からタイアップが増えてきて、クイズなどを使った企業や官公庁の広報などのお手伝いもしています。お客様には「我々は『難しいことをわかりやすく伝える』ことが日本一得意な集団」であるとお伝えしています。
ーどんなことに困っていたのでしょうか。
前田
企業や官公庁とのタイアップが大きな規模を占めていく中で、クイズ制作や演者のスケジュールが埋まって依頼をお断りせざるを得ない、という状況が発生していました。労働集約型から脱却したサービスをつくらないと成長の限界を迎えるのでは、という懸念がありました。
そんな時に、「カヤックさんと組めば、batonが概念的に考えているようなことを面白く伝えられる、より生産性の高いサービスやアプリ開発ができるのでは......」と思ったことが依頼のきっかけです。特に「面白く」という部分は「餅は餅屋」ということでやっぱりカヤックさんだな、と。
杉政
色々とアイデアの種はあるものの、サービスとして形にするところやDX化で困っている。そういったご相談が最近多いんです。カヤックは広告やキャンペーンでの話題化が得意なイメージですが、クライアントの持つ強みと面白法人グループで持つ強みを掛け合わせ、新しいプロダクトやサービスの開発支援にも力を入れているんです。
batonさんのやっていること、例えば「難しいことをわかりやすく伝える」「楽しいを原動力にする」という考え方や姿勢がカヤックのカルチャーにもすごく近いと感じ、これはぜひ一緒にやってみたい! と思いました。
ー今回のプロジェクトは、新たに発足したカヤックボンドの新規事業支援サービスと、カヤックのゲーミフィケーション専門チームのアイデア力を取り入れて課題解決に取り組んだ新しい試みだと伺いました。
杉政
2023年からグループ会社のカヤックボンドで新規事業立ち上げ支援サービスが始まったり、カヤックでゲームで課題解決する専門チームが立ち上がったこともあり、面白法人グループ全体を横断して、本プロジェクトに取り組むことになりました。
◆組織を横断し、「BTC」を軸にしたプロフェッショナルなチームを結成
ーかつてない独自のフレームワークについて伺いたいのですが、まず、カヤックボンドの新規事業支援サービス「Sokmock(ソクモック)」について教えてください。
杉政
「Sokmock(ソクモック)」とは、新規事業がまだ何も決まっていない柔らかいところからクライアントと併走し、実現まで支援する取り組みです。「新規事業の担当になったけれどなかなか形にできない」「社内で企画を通せない」などの困りごとを、ストラテジーと技術とアイデアで解決することが提供価値です。
杉政
「Sokmock」では、「BTC(ビジネス・テクノロジー・クリエイティブ)」の視点を兼ね備えたチームを提供します。色々なクライアントと話してみたところ、困りごとを解決するポイントはBTC型人材なんですよね。
コンサルティング会社が提供するようなビジネスモデルや市場調査(B)、最適なソリューションやサービスの実現化(T)、斬新なアイデアやライフタイムバリューの高いUI/UX(C)。これらを提供できるプロフェッショナルなチームで、上流工程から併走します。
「BTC」がバランス良く組み合わさることで、説得力を持つ幅広い提案ができるんです。ビジネスに偏りすぎるとユーザーに使ってもらえないし、クリエイティブに偏りすぎてもビジネスアイデアがなければ事業継続できない。そして、どちらも技術的な視点がなければ実現できません。
ー「BTC」を軸にした「Sokmock」のチーム体制がベースなんですね。
杉政
ただ今回は「Sokmock」のパッケージをまるっと提供したわけではありません。座組みも、ビジネス面はbatonの前田さんが担当するなど、ご要望に沿ってフレキシブルに対応しました。前田さんはマーケティングのプロフェッショナルですし、テクノロジー人材は、クリエイターが8割以上を占めるカヤックの強みです。また、クリエイティブには、ゲーム制作の知見が豊富な後藤さんを半ば人さらいのように引っ張ってきました(笑)。結果的に素晴らしいチームができたと思います。
後藤
今までたくさんのゲームをつくってきましたが、クイズ作品も多かったんです。親和性が高いので、いいバリューが出せると思いました。
ー後藤さんと言えば、ゲーム企画のノウハウをコンテンツ開発に応用するゲームフルデザインの専門チーム「ゲームフル」のリーダーですよね。
後藤
ゲームはただの暇つぶしだと捉えられがちですが、楽しみながら興味を持たせたり、継続のモチベーションを高めたり、コミュニティを促進したりと、活用方法や利点がたくさんあります。こういった、ゲーミフィケーションが届いていない分野がまだまだ多い。そこで、もっと世の中に浸透させていこうと本格的に立ち上げたチームが、「ゲームフル」です。「楽しいから始まる学び」というbatonさんの領域にはすごくシンパシーを感じたので、参加できて嬉しいです。
◆実は相性がいい!ゲーム制作のノウハウと新規事業立ち上げ
ー次に、プロセスについて聞かせてください。どのようなアウトプットをしていったのでしょうか。
杉政
企画フェーズのプロセスとしては、新規サービスのターゲットを前田さんにインプットしてもらいつつ、マーケットの課題や仮説を立てていきました。そこから整理したことを後藤さんに伝え、アイデアや企画出しをしてもらいました。
後藤
ビジネスモデルのアイデアとして出したのは60案くらい。チーム内ブレストやひとり脳内ブレストも含めたら、約300案は考えたと思います。
前田
資料を見た時に驚きました。ものすごいアイデア数ですよね!
杉政
前田さんはクリエイティブに関して理解があり、勘所がすごいなと思います。ビジネス的な視点でどっしり構えてくれているので、後藤さんが思い切りボールを投げられるんでしょうね。横で見ていると、「けっこうな変化球を投げたな」と思うことも......(笑)。
後藤
駄洒落でもいいから、幅広く考えるようにしているんです。特に初回のミーティングではちょっとマッチしないかもというアイデアもあえて出して、範囲を探り、狭めていきました。
ーゲームフル的な視点はどのように反映されていますか。
後藤
ゲーミフィケーションにおいて大切なのは、「アウトゲームの動き」です。アウトゲームとはゲームの要素で、例えば、アイテムのコレクションやギルドなどのソーシャル的要素といった「基本的な遊び」の外側の部分。「分かりやすく伝える」「興味を継続してもらう」などのアウトゲームのノウハウが、課題解決に効くテクニックとフィットすることが多いんです。カヤックでソーシャルゲームをつくるようになって得た知見を、集中的に活かせたと思います。
ーソーシャルゲーム制作のノウハウが新規サービスの企画時に活用できるとは面白いですね。今後はどのように展開していくのですか。
前田
「なぜ、誰に、何を」を3ヶ月間で絞り込んでいき、最終的に3つほどのビジネスモデルが固まってきました。サービスの売り先や売り方のアイディエーションから、実際にお客さんにプレゼンしていくための段階に進むところです。
BtoC企業の広報はもちろん、BtoB企業にも大きなチャンスがあるのでは、と考えています。というのも、BtoB企業は学生や若年層に認知されにくい。そういった、なかなか届かない人に対する理解や拡散を手伝えるサービスやアプリをつくりたいです。まずは、既存のクライアントへアプローチして試していければと思っています。
杉政
その際、カヤック側では検証したい要件に合わせて体制と進め方を調整していきます。例えば、毎月テストマーケティングをしたいのであれば、目的を達成できる最小限の実装でのモックをすぐつくりますし、1000人くらいユーザーを入れて検証したいパターンなら、3ヶ月ほどあれば割としっかりしたものをつくれます。だから、「Sokmock=即モックをつくることができる」というサービス名なんです。
このように要望に応じたものを即提供できる技術力には、ハイパーカジュアルゲームの制作のノウハウやスピード感がけっこう活かされているんですよね。
ーなるほど! カヤックはハイパーカジュアルゲームも多数制作しヒットさせていますよね。
杉政
最速でリリースし、ABテストで良かったものを詰めていくスタイルが、意外に新規事業立ち上げの教科書通りというか......。ハイカジ制作のマインドとカヤックのブレスト文化、つまり「素早くたくさんのアイデアを出し、検証の結果ボツになっても苦にしない」ことと相性が良いのだと思います。
◆連携で広がる可能性、目指すは世界一のチーム
ー企画フェーズを振り返った感想はいかがですか。
杉政
「Sokmock」の左脳的なビジネス企画力、面白法人の右脳的なアイデア力が組み合わさり、幅広い提案ができたと思います。
前田
ネクストアクションも明確に定義できましたし、クライアントとしての腹落ちもちゃんとできて本当に満足しています。ぼんやりと思っていたことや課題を明確に言語化していただき、すごくスッキリしたというか......。営業感覚から言うと「これは確実に買っていただける」と思えるほどのサービスをつくれると確信しています。次のフェーズもよろしくお願いします!
ーbatonさんと面白法人グループが連携することで、具体的にどのようなシナジーや可能性があると思いますか。
前田
本当にいいパートナーだと思っています。例えば、我々が実際に展開している施策について、カヤックさん側からいい意味で辛口な意見をいただきました。後藤さんからも改善点がビシバシ出されてきましたよね(笑)。
弊社で展開しているサービスは、ビジネス観点ではあくまでも「手段」。エンゲージメントを高めるためにはどうすればいいのか、ビジョンやミッションやバリューを理解してもらうためにはどうすればいいのかが「より伝わって頭に残る方法」を勉強させてもらいました。
そうやって深掘りする過程で、カヤックさんの既存のサービスに弊社のコンテンツを載せてみよう、というアイデアも生まれましたよね。
杉政
ビジネスの可能性が大きく膨らみましたね。カヤックでもともとつくっていたサービスがあるのですが、batonさんと連携することで、今までアプローチできていなかった業種に展開できる。商品に親しんでもらうという売り方にすれば、売り先が相当広がるわけです。
前田
弊社は若年層に強いので、「届きにくい人への橋渡し」というビジネス上のニーズがあります。例えば「QuizKnock」のYouTube登録者は200万人以上なので、大きな顧客資産になり得ます。
ーお互いの持っているアセットを活かしあえますね。
後藤
タッグを組めば、「難しいことを簡単に伝えるのが日本一うまい」から「世界一うまい」くらいにできるんじゃないか、そのくらい本気で思っています。
前田
共創型は、今後常識になっていくでしょうね。弊社だけでやれることは限られていますので、大きなことをやっていくのであれば、同じ志を持った様々な人たちと連携していくべきです。個人的には「楽しいから始まる学び」のその先こそが重要で、「学びとは人間をつくること」だと考えています。自律的に考えて行動できる人間をつくりたいし、そういう人が増えれば世の中がもっと幸せになるのではないか、と思うんです。
後藤
本当にそうですね。教育に関しては僕も色々感じることが多いですし、その問題点をゲームやクイズの力で解決できると思っています。大袈裟かもしれませんが、楽しく学んでおしまいではなく、人生を変えるとか人生の目標を発見できるようなサービスをつくりたいですね。もっともっと発展させるべく、今後も様々な課題解決のお手伝いをしていきたいです。
(取材・文 二木薫)