2024.05.01
#クリエイターズインタビュー No.85“憧れ”が人の創意工夫精神を動かすというギミック【カインズ面白事業部】
3月2日(土)と3日(日)、原宿・東急プラザ表参道原宿で行われた「カインズDIYマーケット」のプロモーションイベント『KIOKUTEKI SPACE MART WITH CDM(記憶的部屋販売店)』が大盛況に終わった。
2022年11月にカインズ社内に設立された、面白事業部(カインズと面白法人カヤック混合部隊)が仕掛けた。
「カインズDIYマーケット」をどう立ち上げ、これからどのようにして人の“創意工夫精神”を起動していくのか、仕掛け人たちに聞いた。
泉 聡一(左)
面白法人カヤック 面白プロデュース事業部 ディレクター兼プロデューサー
カインズ イノベーション推進本部 面白事業部
煙草 光芳さま(中央左)
カインズ イノベーション推進本部 面白事業部
Yu_taさま(中央右)
「キオク的サンサク」ライフスタイルメディア代表 プロデューサー
北川 尚宏(右)
面白法人カヤック 面白プロデュースサービスユニット担当執行役員兼プロデューサー
カインズ イノベーション推進本部 面白事業部
目次
在庫を持たないからできる、新しいジャンルの「カインズDIYマーケット」
ー「カインズDIYマーケット」の開発背景について教えてください!
煙草
カインズはブランドコンセプトとして「くらしDIY」を掲げていますが、くらしを語る上でははずせない”家具”というカテゴリに着目しました。一方で、家具は単価も比較的高額で、一点あたりのサイズも大きいため、販売面積を圧迫します。
北川
回転率もそこまで高くないため在庫負担が大きく、従来のように在庫を持つ販売方法では多様化するニーズに応えられないという課題がありました。
ーどのようにしてその課題にアプローチしたのですか?
煙草
注目したのがコンピューターによって自由に加工、切断が可能な木工用CNCルーター、ShopBotです。もともとカインズの一部の店舗でお客さんに貸出しをするなどの形で利用していましたが、新たなShopBotの活用ができるのではと考えました。
(米国ShopBot社のパートナーであるVUILD社が提供するShopBot/CAINZ DIY MARKETブランドムービーより一部抜粋)
煙草
ShopBotを使えば、普段店舗に並んでいる木材を切り出す「受注生産型」の販売ができ、販売している木材の新たな活用方法になるだけではなく、家具の在庫を持つ必要もなくなります。多様なニーズに合わせ6つのくらしのシーンを想定して商品開発を行い「カインズDIYマーケット」が誕生しました。
泉
切り出した素材がプチプチに包まって届くんです。部品感を感じられると思います。
“憧れ”が創意工夫精神の起動スイッチ
ー「カインズDIYマーケット」をお客様にどう伝えているのでしょうか?
煙草
「カインズDIYマーケット」は、新しいジャンルを切り開こうとしているので、まだ「組み立て家具」みたいなふさわしい言葉がないんですよね。
北川
まずは、お客さんへのコミュニケーションとして、「カインズDIYマーケット」の商品を面白がってつくってもらえそうなクリエイティブ感度の高い人を巻き込みながら、その人たちが実際につくっている様子を見せる方法でいくことにしたんです。
煙草
InstagramやYouTubeなどで情報が溢れている今、「創意工夫精神」の起動スイッチは、(それらを見せることによる)「憧れ」なんじゃないかと考えています。
北川
それらを踏まえて、クリエイティブ素材をいくつか制作しました。
(左/親子がターゲットのシリーズ「CAINZOOシリーズ」。プロモーション動画を子ども向けクリエイティブを中心に手掛けているアートディレクター鈴木友唯さん(DRAWING AND MANUAL所属)と制作、右/「カインズDIYマーケット」の特設サイトにはさまざまなクリエーターの方々にDIYしてもらった商品を実際の生活で使う様子を公開)
キオク的サンサクならではのカッコ良さで「DIYってここまでいけるんだ!」
ーそこで声がかかったのが「キオク的サンサク」さんですよね。改めて普段どんなことをなさっているのか教えていただけますか。
Yu_ta
キオク的サンサクは、YouTubeを軸にインテリア、ライフスタイルについて発信をしている「ライフスタイルリビルディングチーム」です。
ーどんなことがきっかけで活動を始めたのですか?
Yu_ta
21歳の時、知り合いに美大生の友人の部屋を見せて面白がっていたことがきっかけです。
そこから、有名人ではなく一般人のこだわりの部屋を見せることを大事にし、“手に届きそうな憧れる部屋”を発信するようになりました。
北川
やろうとしていることはカインズが掲げる「くらしDIY」と通ずるところがあるなと思い、「この人たちしかいない」と声をかけました。
ー初めて話をもちかけられた時にはどう感じましたか?
Yu_ta
カインズさんのイメージは、郊外に大きなホームセンターがあり、万人が使う場所というイメージでした。一方で僕らは対照的で、都市部の若い人、クリエイティブ感度の高い人に絞って活動しています。全然違う場所にいたので、コラボすることにワクワクしました。
泉
「カインズDIYマーケット」そのものがカインズっぽくないですもんね。
煙草
われわれの想像を超えるアレンジをしてくださる気がしました。
Yu_ta
『KIOKUTEKI SPACE MART WITH CDM(記憶的部屋販売店)』のイベントでは、クリエイターたちが「カインズDIYマーケット」を使ってDIYした商品も販売しました。
煙草
会場では「DIY前の商品」と「DIY後の商品」を並べて展示しました。「これってDIYする前提でつくられた商品なんだね」とも言っている人もいて、コミュニケーション的にわれわれが商品に込めた想いが伝わったのかなと思います。
Yu_ta
思ったよりクリエイターがつくってきたDIY作品のクオリティーが高すぎて、どれがカインズDIYマーケットの商品からつくったのかわからなくなると思ったんですよね。笑
煙草
これだけクオリティーの高いものが完成されたのをみて可能性を感じました。「ここまで変わるんだこの商品!」って。笑
Yu_ta
実は中にはつくっているうちに気に入りすぎて、クリエイターが自分で使いたいという商品も出たんです。笑
北川
つくると愛着が沸くとはこのことですよね。
Yu_ta
DIYって日本だと節約するためにするイメージがあるかもしれませんが、DIYによって独創的で唯一無二のものをつくることができるんです。既製品を買うより「DIYの家具のほうがかっこよくない?」と思える世の中になるといいなと思っています。
ー様々な取り組みをしてきたと思いますが、「つくりたい」という創意工夫精神を起動させるメソッドは得られたのでしょうか?
泉
僕は、憧れにはピラミッド構造があるんじゃないかと思っています。キオク的サンサクさんは結構上のクリエイティブ感度層の階層にいて、少しずつ次の層、次の層に解釈されながら、一番大きいボリュームゾーンに届いていくものなんじゃないかと考えています。
北川
つくるプロセスが楽しければ、人にシェアしたくなるというのはありますね。「カインズDIYマーケット」はモノを売っているのではなく、DIYをするというプロセスの体験を売っているとも捉えることができると思います。
キオク的サンサクさんとはまた一緒にやりたいですね!在庫がないので、デザイン的な挑戦もできますし!
Yu_ta
ぜひ!
(取材・文 渡邊好惠)