鎌倉投信とカヤックはなぜ”鎌倉本社”にこだわるのか? | 面白法人カヤック

Corporate

2019.04.03

鎌倉投信とカヤックはなぜ”鎌倉本社”にこだわるのか?

Corporate

2014年に上場して間もない頃から、カヤックに出資いただいている鎌倉投信。創業時から鎌倉に本社を置き、3つの「わ」(和・話・輪)を大切にして、「いい会社」に投資するという独自の哲学を持つ同社 代表取締役社長の鎌田恭幸さんに、「いい会社」とは何か、なぜ鎌倉にこだわるのか、これから100年、どのような潮流となっていくのかを伺いました。

企業の「見えない資産」とはなにか

鎌倉投信では「いい会社」に投資しています。「いい会社」とは「これからの社会に必要とされる会社」です。投資するとき、バランスシートはもちろんですが、その会社の「見えざる資産」を重視します。「見えざる資産」が、長期的には「見える資産」を生み出していくと考えています。

では「いい会社」の共通点とは何か。元・法政大学大学院政策創造研究科教授の坂本光司先生と一緒に、そんな研究をしたことがあります。すると、外部環境が厳しいときでも、きちんと利益を出して周囲からも評価されている会社には、共通項があったんですね。

  1.  経営理念
  2.  人材育成(人間性を高める)
  3.  関係性

この3つです。

カヤックの場合、「つくる人を増やす」という経営理念があります。物事を自分ごと化するっていうのは、究極の組織構造だと思いますが、ブレインストーミングなどを通じて、無理せず自分ごと化する仕組を取り入れているというのは、やっぱり他社にはない企業風土ですよね。それから、鎌倉という地域への貢献性、そして人材というところは、投資を始めたポイントでもあります。

柳澤さんを含めた経営陣は、カヤックという会社のあらゆる仕組みを、とにかく「自分ごと化する」という方向性でつくって来ているのだろうと感じます。人事評価や給料体系もそうかもしれません。「面白がる」という感覚と、主体性というものをつなげて、本気で取り組んでいる会社というのは、たぶん、ほかにないんじゃないでしょうか。「つくる人を増やす」という経営理念の中で、社員一人ひとりが成長機会を見出して、いろんなことに挑戦する。かつ対立が生まれない関係を築く。その企業風土そのものが、カヤックの最大の「見えざる資産」でしょうね。

サイコロ給を導入している理由のひとつに、「人は人を評価できない」という思想がありますが、根底にある思想がヒエラルキー(階層構造)と真逆に向かっている。組織運営でいえば、階層的な方が動きやすいですよね。指示しやすいし、指示を受ける側もわかりやすい。評価制度というものは、人を評価してモチベートしようとするものですが、根本的に「人は人を評価できない」という思想を持って、ある種、割り切ってしまえるのはユニークだと思います。

次の100年における「地域」の可能性とは

カヤックの事業については、今後5年、10年かけて、いろいろ種を蒔いているものを育てていくのだろうと見ています。当然、その中で、強い柱をつくっていかなければいけませんが、いろいろな領域に広がっていく中で派生していく先端領域があると思うので、それを形にしていく。そして、そこから先は、海外に向かう方向性もあるのではないでしょうか。

まずは事業の屋台骨をしっかりつくって、蒔いている種を育てて、先端領域のものを形にしていく。そして、さらにその先には、形になったもの、たとえば新しい資本主義のあり方だったり、企業と地域社会だったりを、世界に問いかけていく。その時は、東京を経由するのではなく、鎌倉からダイレクトに世界に発信する。「日本には、こんな会社がある」っていうふうに世界から見られるのではなくて、「鎌倉には、こんな会社がある」というように。

著書である『鎌倉資本主義』も読みましたが、「先端領域を実際にやり始めているな」という感じがしています。壮大な社会実験ではありますが、非常に意味のある問いかけだなと思います。本の中に、地域経済資本・地域社会資本・地域環境資本の3つを総称して地域資本としようというくだりがありますが、一番大切なのは、僕は、やっぱり社会関係資本だと思うんです。

この100年の潮流を見ていくと、まずグローバリゼーションが進んだ。それから、ドルや円といった、いわゆる法定通貨がすごく力を持った世紀でした。実態と乖離したマネーというものが乱暴に動き回っている。そして、モノの価値を金銭価値で測ることが当たり前になり、量の豊かさが重要であるという考え方が主流になりました。けれども結局、この100年、それを追求してきて、人の心は豊かにならなかった。この本は、そこに対する問いかけですよね。

グローバルに対してローカル、法定通貨に対して地域通貨、経済資本に対して社会資本。それは対立する概念ではなく、そのバランスが問われていくのだと思います。人の幸福ということを考えた時も、そのバランスが絶対に重要ですよね。

いま、鎌倉でそのひとつの解を探そうとしているわけですけれども、では、その成果をどういう指標で測るのかという話になります。たとえばブータンの国民総幸福量(GNH)のようなモノサシがあります。鎌倉に住む人の幸福量が異常に高いとか、あるいは元気なお年寄りが多いとか、そうした成果を測れるかどうかですね。

米国ペンシルヴェニア州にロゼトという町があります。かつて、この町の住民の心臓疾患の死亡率が圧倒的に低いことに注目が集まりました。研究者によれば、その原因は、食事や運動といった生活習慣の違いではなく、住民同士が良好な人間関係を築いていたからだというのです。つまり、地域社会資本が地域における長寿につながった。この事例は「ロゼトの奇跡」と呼ばれています。こうした取組によって、心の幸福だけでなく、たとえば健康面における数値が変わってくるといったことが起きてくるかもしれません。

北海道・根室町の障がい者雇用プロジェクトでは、社会資本がどのくらい増えたかを分析してレポートにしています。雇用がどのくらい増えて、その経済効果がどのくらいあったのか。ご家族への影響はどうだったのか。いろんな要素を経済価値に置き換えて、投資資本に対して、どのくらい収益があったか分析したそうです。鎌倉における地域社会資本の取り組みも、何かパラメータが見えてくると良いと思いますね。

鎌倉投信は、昨年で創業10年を迎え、次のステージに何をやるのか考えています。個人的な考えですけれど、やはり地元である鎌倉や地域というものに対して、なにかもっとできることがあるんじゃないかと考えています。たとえば、カヤックと地域で協業できる可能性があるかないかでいえば、あると思うんですよね。もちろん、鎌倉投信の事業のステージの中で、どこまで力を入れるかという話はありますが、ひとつのキーワードとして「地域」はある。

だから、いろんな先端分野の事業が鎌倉から生まれたらいいと思うし、並行して、社会のプラットフォームが変わっていくとしたら、とても意味があると思っていて、そこはなにか関わってみたいと思いますね。

鎌田 恭幸 氏
鎌倉投信株式会社 代表取締役社長 兼 資産運用部長
日系・外資系信託銀行を通じて30年にわたり資産運用業務に携わる。株式等の運用、運用商品の企画、年金等の機関投資家営業等を経て、外資系信託銀行の代表取締役副社長を務める。2008年11月に鎌倉投信株式会社を創業(個人が保有する株式・投資信託等投資商品のうち、「結い 2101」が占める割合は100%。ただし、鎌倉投信の株式は除く) 。
著書等に「日本で一番投資したい会社」(アチーブメント出版)「21世紀をつくる 人を幸せにする会社」共著(ディスカヴァー21)
https://www.kamakuraim.jp

関連ニュース

© KAYAC Inc. All Rights Reserved.