2024.03.07
DEI&B?それって面白がってバイブスアゲることじゃん!という話。【サステナブル・ブランド国際会議 登壇レポート】
〜面白法人カヤック登壇者:グループ戦略担当 執行役員 佐藤純一のディスカッションから〜
2月21日(水)、22日(木)、サステナビリティのリーダーが集うアジア最大級のコミュニティイベント「サステナブル・ブランド国際会議 2024」(SB’24)が東京・丸の内で開催されました。
そのDAY1のブレイクアウト・セッションに、面白法人カヤックから執行役員の佐藤純一が登壇しました。
このレポートでは、セッションテーマの「DEI&Bの根幹」について、佐藤の発言を中心にレポートします。
▼登壇者
山岡 仁美【Facilitator】(写真左)
サステナブル・ブランド国際会議/D&Iプロデューサー
株式会社グロウスカンパニー+ 代表取締役
一般財団法人PEACEDAY理事
伊藤 翔次郎(写真右)
日本航空株式会社/経営企画本部 経営戦略部 エアライン事業戦略グループ アシスタントマネジャー
兼 W-PIT(Wakuwaku‒Platform Innovation Team)サ旅事業ユニット
佐藤 純一(写真中央左)
株式会社カヤック/グループ戦略室/執行役員
竹野 理香子(写真中央右)
合同会社CGOドットコム/総長
※上記SB’24公式ページ順/敬称略
セッションテーマはDEI&Bの根幹~Well-Beingを実現するEX(Employee Experience)の創出
DEIとは、Diversity(ダイバーシティ、多様性), Equity(エクイティ、公平性) & Inclusion(インクルージョン、包括性)の頭文字を取ったもので、会社で働く社員一人ひとりが持つべき権利として考えられています。
つまり、年齢・セクシャリティなどの違いを超え、皆が公平な扱いを受け、誰もが組織で活躍できる職場環境づくりが重要だよねということ。
そこに追加されているDEI&Bの「B」は、Belonging(ビロンギング、会社への帰属意識)。新型コロナウイルス感染拡大を機に増えたリモートワークによって会社への帰属意識が薄くなったという課題意識から、社員のビロンギングを向上しようと取り組む企業が増えているそうです。
DEI&Bは、要は「仲間感」ってこと
ファシリテーターの山岡氏から「面白法人カヤックのEX(従業員が企業や組織の中で体験する経験価値)はどう散りばめられているのでしょうか」との質問が。
そこで佐藤からは、カヤック流ブレストをご紹介。
「よく言われているブレストって『発散と収束』とか言われてますよね。ただ、カヤックでは収束はナシなんです(笑)発散しっぱなしで10分間でどれだけのアイデアを出せるかが勝負。お題を出してくれた人にたくさんのアイデアをギフトする、という考え方です。ブレストで素晴らしいアイデアが出るということよりも、大切なのは”みんなで一緒になにかをつくる”というシチュエーションであり、それをリーズナブルに体験できるところです。一緒につくることで仲間になる、チームになっていくということを重要視しているのです」
続いて日本航空株式会社(以下「JAL」)の伊藤氏からは、JAL社内のベンチャーチーム「Wakuwaku-Platform Innovation Team」の紹介をしていただきました。チームのスタイルである「Wakuwaku Driven」(=目の前にある課題ではなく、チームメンバーがどこにワクワクするのかを発端としよう考え)を重要視して活動していることや、フラットな関係であろうという「仲間」意識を大切にしているそうです。
「仲間という言葉が出てきましたが、まさにBelongingですね」と山岡氏。
一見難しそうに聞こえるDEI&Bを噛み砕いていくと「仲間」や「チーム」がキーワードになってくるのかもしれません。
続いて、「ギャル式ブレスト」で注目を浴びているCGOドットコムの総長・竹野氏ことバブリー氏。会社のミッションは「世の中のバイブスをアゲる」。ギャルといえども、平成はファッションから、令和はマインドからと言われているそうで、ギャルマインドは「自分軸」「直感性」「ポジティブ思考」の3つで構成されているそうです。そのマインドの実装手段となっているのが、ギャル式ブレスト。ギャル式ブレストも、カヤック流ブレストと共鳴する部分があり、より良いアイデアを出すことが目的ではなく、ギャルマインドの3つをもって、肩書き・役職をとっぱらい、「自分」としてコミュニケーションできるスタイルのことを言うのだそうです。
「DEI&Bに沿うと、普段の会議では同じような意見になってしまったり、発言者が偏ってしまったりという課題があり、さらに会社では役職・役割にとらわれて多種多様な『自分らしさ』が出しづらくなっている、それこそが一番大きな損失ではないかと考えている」とバブリー氏は指摘。
「面白いと感じる」と「面白がる」は違う?
話題は「面白法人」の話に。
佐藤からは「僕らは、正式名称は株式会社カヤックなのですが、自称:面白法人カヤックなんです。創業当時、“面白がれる人”を集めて会社を作ろうとなって、いまも“面白がる”というあり方を追求した“あり方重視の会社”です。」
「ここまできてバブリーさんと言っていることとほぼ同じだなと思った(笑)」と佐藤。
「“面白がる”とは、創造性と主体性そのもの」であり、関心の持てないことや否定したいことに対峙した時、短絡的に怒ったり拒否したりせず、どうやったら面白くなるだろうと想像したり工夫したりすることこそが、クリエイティビティだという考え方を紹介しました。
面白がるスイッチを常に持っていられるかどうかも重要
そこから話題はいかに「面白がる」を日常化できるのか、の話に。
会場から「与えられたブレストの場ではできても、その場所を出たらすぐ元にもどる、では意味がないのでは」という質問がありました。
佐藤からは「場づくりという意味だと、ブレストはアイデアを出すより周りのリアクション(相槌や合いの手)のほうが重要」と紹介。ブレストの場だけでなく、日常的にもリアクション上手でいられる関係性がつくれるといいと話しました。周囲のリアクションによって“自分のアイデアが周りの人に受け入れられている”という心理的安全性がつくられ、受容されている、仲間であるというマインド作りになるのかもしれません。
一方で、佐藤は、「楽しい、好き、のような受動的な感情は、面白がるとは違うと思っている」と考えを述べました。自分が好きなことを楽しいと思うことは普通だが、我々が考える“面白がる”というあり方は自分が好きでもないことや関心がないことも面白がれることが重要、とのこと。例えば2時間印鑑だけ押し続けるような普通は苦行でしかないことも、それをどう面白くできるかなと考えられる、とらえられることがポイントだと言います。
「“面白がる”とはめちゃくちゃクリエイティブ。ブレストの場から出たら面白くなくなるのは、好きな世界や楽しい場から抜け出てしまっただけだと思うんですよね。どんな世界でも想像力を使って前向きに面白がる姿勢があれば、面白い・面白くないという受け身の立場から抜け出せると思うんです。」(佐藤)
最後に佐藤からは、「“面白がる”はそんなに難しいものではなく、まずはものごとへの対峙の仕方を癖づけるということなんじゃないかと思います。日常に現れる様々な事象に、例えそれを心から面白いと思ってなくても、『それ面白いね!』って言い続けることからでも始められます。“面白がる”を世の中に伝播させていきましょう」と話しました。
セッションの最後は、「制度設計や施策ではなく、日常的にどうポジティブに面白がって、日常会話がブレストのように可能性を探っていけるのかがEXであり、これからのDEI&Bに欠かせない軸になってくるのではないか」という山岡氏の言葉で締めくくられました。
(取材・文 渡邊好惠)