大塚雅和「家電をiPhoneで操作するデバイスで、つくる人を増やす」 | 面白法人カヤック

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2014.04.10

#退職者インタビュー No.8
大塚雅和「家電をiPhoneで操作するデバイスで、つくる人を増やす」

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カヤックを旅立った社員に、現在の活動や外側から見た印象を聞くインタビュー。
今回は、在職中に現在カヤックの顔ともなったWebサービスを多く開発し、現在はフリーで活動するエンジニアの大塚雅和です。

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元カヤックのスターエンジニアがつくる新しい家電

—— よろしくお願いします。現在は個人でプロダクトを制作されているとか。

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大塚
はい。長く開発を続けていた「IRKit」という家電が完成して、ようやく最近販売を始めたところです。IRKitは、エアコンなどの家電を赤外線リモコンのようにiPhoneやiPadで操作できるデバイスです。

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大塚
家電としての便利さだけでなく、自分で拡張できるのもポイントです。ソフト的には、iPhoneアプリやPCソフトのエンジニアが開発でき、ハード的には、世界で最も有名な電子工作キット「Arduino」がベースなので、情報も多く機能の追加がしやすくなっています。
実は、IRKitはカヤック在職中から開発していたんです。もともとはブッコミでカヤックのプロジェクトとして手がけていたんですが、退職するにあたって買い取らせてもらって自分のプロジェクトにしました。
リモコンへの興味は、エンジニアならみんなあるものなんですよ。電子工作の部分も含め、全然進化しないリモコンを便利にしてみたい、最初はそんな気持ちで自分用につくっていました。
僕は2006年に入社してからずっとWebサービスやiPhoneアプリをつくってきました。でもここ数年は、新製品のニュースでも、新しい体験を提供するデバイスに興味が惹かれるようになっていたんです。それで、自分でもそんな製品をつくりたいと思ったことが大きいです。

「つくる人を増やす」ためのデバイス

—— なぜ、個人的につくっていた電子工作を商品化しようと?

大塚
僕のようなソフトウェアエンジニアにとって、電子工作は技術分野が違って情報の手に入れ方もわからないし敷居が高い分野なんです。自分も、Arduinoを買ってから2年もほこりをかぶっていたくらいで。IRKitを使えば、ソフトウェアの開発をすれば思い通りのリモコンをつくれるのでかなり敷居が下がります。
それから、エンジニアではない一般の人にとっても、家電の仕組みを気軽に学べる存在になってほしいという意図を込めました。つまり、エンジニアには電子工作の敷居を感じずに家電をハックするためのデバイスであり、一般向けには生活を便利にし、知りたいと思えば、中を簡単に見られる家電というわけです。
後者は、僕がとても好きな「つくる人を増やす」というカヤックの理念に繋がります。在職中にサービスをたくさんつくりましたが、つくる人を増やすサービスであるwonderflkoebuが特に楽しかったんですよね。

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大塚
僕は、少人数のチームで開発しユーザー対応まで分やチームのメンバーで行ってきましたが、これらのサービスはユーザーと運営の距離が近いというか、ユーザーもクリエイターとして評価される感覚を知っているので、問い合わせにも思いやりが感じられたんですよね。
モノをつくる人は、思いやる気持ちも強いんじゃないかなという気がします。「つくる人を増やす」のは、思いやりのある人を増やすことになるのかもしれませんね。日常で使っている製品の構造を知ることもつくる人になる第一歩だと思うんです。

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大塚
例えば、wonderflならFlashの作品とソースコードが比較できるので、ゲームで遊んだ人が難易度を変えたいと思えばコードを見て変更できます。IRKitも同じで「使った後に仕組みを見て、必要な部分を触ることができる」という考えから生まれています。

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大塚
明るすぎるLEDを暗くしたければ、カバーを外して回路を触れます。普通ならプロ任せの部分だけど、調べられるなら調べたい人もいますよね。だから、こうした商品も必要だと思うんです。これを入口につくる人が増えれば、思いやりのある人も増えるかなと。

サラリーマンを引退して、好きな物をつくる人生にしたい

—— ご自身の制作の芯をカヤックで得たわけですね。では、入社のきっかけを教えていただけますか。転職組とお聞きしましたが…。

大塚
IRKitをつくる経緯とほぼ同じです。元々パナソニックでカーナビをつくっていたんですが、在職中にWebが面白そうだと思い始めたんです。ニュースを見ても、カーナビよりWebのほうが目につきはじめて、自分でつくりたくなったんです。
自宅でサイトやアプリをつくっていたのが本業にできそうだと感じた時に、名前を知っていたカヤックを思い出したんです。鎌倉オフィスに遊びに行ったらとんとん拍子に進んで(笑)。まだ会社の規模も30人ほどで何もかも違ったので迷いましたけどね。
奥さんには「サラリーマンとして7年働いたことだし、引退して好きなものをつくる人生にしたいと思う」と話した気がします。
面接で「自分でつくりたいものがあるから、それは続けたい」と話したんですが、入社後もBM11(ブッコミイレブン)で好きなこと開発させてもらっていました。当時のIT企業の中では、サービスを一番出していた会社だったと思いますね。

—— 仕事のスタンスなども違いましたか?

大塚
ええ。カーナビは何千人が関わって数種類の商品をつくり、何万人に売る仕事なので…。制作者とユーザーが関わったり、商品に個人の意見が反映されたりすることはほぼありません。一方、Webは多くても3人ほどでつくるので、仕様の数十%は自分で決められます。
僕はけっこう口を出す方だったので、自分のサービスという意識も強くなりました。運営業務もやったので、ユーザーの声をすぐ反映できたり、直接フィードバックが受けられるのはとても新鮮でしたね。
特に初めて開発したSNSの「koebu」は、SNS開発の経験がある社員自体が少なかったので、もう1人のメンバーと運営のスタンスから考えました。人格のある運営としてユーザーと近い関係性を取ったこともあり、楽しかったですね。当時はお知らせなども僕らが声を録音して流していたんです。
僕らも声のプロではないので、声優の卵などが多いユーザーたちと近い立場でコミュニケーションできるのがよくて。録音への緊張感もわかったし、ユーザーの必要な機能も見つけやすかったんです。

これからも失敗を許せるカヤックでいてほしい

—— さて、そんなカヤックを退職されて数カ月が経ちました。外側から見た今のカヤックはどんな感じですか?

大塚
僕自身、こんなに失敗をさせてもらえる会社はなかったと思っています。サービスをどんどん出すこと自体が珍しくて、業界的にもカヤックのサービスばかりって印象だったのでは。その割には失敗続きというね(苦笑)。
ただ、これがカヤックの良さだったのに、今はそこが少し薄れてきた気がします。かつて試行錯誤を多くしてきた結果、成功する、しないをわかった気になっているせいでしょうか。
それで失敗できない人たち、失敗させてもらえない人たちが増えないようにがんばってもらいたいと思います。やめた方がいいこと、流行らないことは予測も簡単です。ほとんどの新規サービスは流行らないのですから、「その企画は流行らない」っていうのは簡単なんです。
でも、そんな中でも流行ると自信を持って言える、多少危うくても若い社員の企画を後押しできる人が必要なんです。僕も在職中は多少ヒット率が高い方だったので、それは意識してきたつもりなんですが…。
だから今後も、失敗できる環境であり続けてほしいですね。昔からカヤックの人間は、行き当たりばったりに見えつつも、失敗して必ず何かを学んできたわけですからね。

—— では最後に、今後の活動を教えていただけますか。

大塚
先ほど話した「つくる人を増やす」というカヤックの理念は、僕にとって非常に重要な芯になりました。それから、新しいサービスを出す中で多くの失敗ができたこと、カヤックという会社にいたからこそ、それらの失敗のダメージも多少は軽くなったのでありがたかったなと。
やはり、個人活動になると新しいサービスも数を打てなくなります。開発期間には別の受諾制作を平行して稼ぐ必要もありますから、物理的にもね。幸いIRKitはうまく行きそうなので、こちらのサービスやコミュニティをしばらくは暖めて育てていきたいと思っています。
できるだけユーザーのアイデアや意見も取り入れつつ、改良もしつつ、です。カヤックでは、開発だけでなく運用の大切さも学びましたから、今後はその両方を大事にしていきたいとと考えています。

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カヤックでは、退職者インタビューを時々公開しています。
退職に対する考え方は、コチラをお読みください。

「カヤックがサイトで退職者を公開する理由」
http://www.kayac.com/news/2013/08/goodluck_interview

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