2015.05.28
#退職者インタビュー No.16カヤックを独立した人はなぜ「3人」で起業する人が多いのか?
ことのはじまりは、「カヤックから独立した人は3人で起業する人が多い気がしますね。」という人事部長・柴田の一言だった…。
それを検証するため、代表・柳澤と柴田が対談しました。
実は、カヤックの代表取締役は3人います。
- 柳澤
- この対談のきっかけは、柴田くんの一言だったよね。実際には3人で起業っていうのは多いのかな?
- 柴田
- そうなんですよ。「生きろ!マンボウ!」の「SELECT BUTTON」、「PARK」、それに、「そろそろ」。いずれもカヤック出身者3人組で起業していますが、どうして3人組が多いんでしょうね。
- 柳澤
- それは、単純に、カヤックが友達同士ではじめて3人の代表取締役がいる会社だからじゃないかな。そういう様子を見ているから、自分たちも友達同士で会社をつくるイメージが湧きやすいんだと思う。普通、友達同士って大丈夫かな?と心配になると思うけど。
※ 株式会社カヤックの代表取締役は3人います。
CEO 柳澤 大輔 (やなさん)
CTO 貝畑 政徳 (かいち)
CBO 久場 智喜 (cap)
カヤックの社名は、この3人の名前の頭文字からとりました。
(15年前、3人で会社を立ち上げたときの物語が漫画になっています。こちらも読んでみてください。→「ならべカヤック! 」)
- 柴田
- 3人で起業したとしても、ふつう代表取締役はひとりで、3人とも代表取締役になるという発想はなかなかないと思うんですよね。
- 柳澤
- 確かにそうだね。やっているからこそ、その難しさはよくわかるし、独立した社員のなかでうまくいかなかった事例も幾つもみているからね。
- 柴田
- それなのに、どうしてカヤックの代表取締役は3人になったんですか?お金でモメるのをやめるために「「サイコロ給」」が生まれたというのは聞いたことがあるのですが、それと同じ理由なんでしょうか。
- 柳澤
- ふつう、10年もしたら役割が変わってしまうし、儲かったとき絶対モメるから、共同代表という形はなかなか選ばない。だから、3人で代表取締役というのは、「個人の思いよりも組織の思いを優先させる」という、しっかりした意思があるんだと思う。
- そもそも、お金でモメるというのは個人の欲みたいな話。それをいったん端に置いて、法人という組織のためにどうあるべきかと考えたら、むしろ3人で牽制しあうからこそ、より法人として成熟するという考え方もあると思うんだよ。
法人を人として捉える。だから「面白法人」
- 柴田
- かいちさんはエンジニアで、capは企画部で、という役割はあると思うのですが、代表取締役の3人はどういう三位一体なんですか?
- 柳澤
- うーん。説明が難しいな…。もちろんそれぞれの役割と権限は規定してある。でも、カヤックって、法人を人として捉えてるじゃない。
- 柴田
- そうですね。
- 柳澤
- 機械論ではなく生物学的に捉えているから、「面白法人」という名前をつけている。権限と権利を分けて、ここからここまであなたの範囲ですよ、というのは、極めて西洋医学的な発想なんだよね。久場やん(cap)は、どんな役割なのか分かりづらいように見えたかもしれないけど、人間の体には何をしているか分からない臓器があって、それがないとバランスがおかしくなる。それが、東洋医学的な考え方だと思う。
- 代表取締役が3人いて、なんとなくそれでバランスがとれているというのは、より生物っぽいからいいと思う。3人合わせてひとりの人間ができるということだから。
- ロボットで言えば、合体して大きな巨大ロボットをつくるということなんだけど。ひとりひとりが体のパーツになる。たまたまびしっとはまるかもしれないし、拒絶反応が起こることもあるでしょ。
「他のふたりが死んでも俺がカヤックを背負う!」って3人とも思ってる。
- 柴田
- 柳澤さんからみて、代表取締役が複数いる場合、どういうルールがあればうまくいくか?というのはあるんですか?あったら教えてください。
- 柳澤
- ふたつあるので、順番に説明しようと思う。
- まずひとつ目は、「どういう人を評価するか、という価値観が一緒であること」。自分たちだけの会社なら要らないけど、人を増やすなら必要だよね。そうじゃないと、分裂して派閥ができてしまう。
- もうひとつは、もちろんお互い三位一体で力を合わせるというのはあるんだけど、でも、みんな「たとえひとりになっても、俺が会社を続けるっていう覚悟がある」。
- カヤックの場合は、3人とも、もし他のふたりが死んでも俺がカヤックを背負うと思っているし、お互いを信じている。その覚悟がない人は、代表を名乗ってはいけないと思う。
人事部に入っても新規事業ができる、カヤックという組織。
- 柴田
- 話を聞いていて思ったんですけど、カヤックってあまり上下関係のないフラットな組織だけど、3代表の横の分業にも、役割を超えた関係があるんですね。縦も横もフラットで、両方ともカヤック的なんだな。
- 柳澤
- 縦はないけど、横の分業はある程度あるんじゃない?でも、どんな部署でも、「俺の仕事じゃないからやらない」というのはナシだよね。うちは人事部に入っても、新規事業ができるもんね。
- 柴田
- 今となっては理解できるけど、最初は、人事部が新規事業って言われても全然分かりませんでした。人事部って、人を採用する人じゃないの?って。
※ カヤックの人事部は、「ブランド戦略室」のような形で職種を横断したチームをつくり、面白法人というブランドを伝えるために、大学の新歓を企画として競い合う「学生新歓コンテスト」や卒業制作をそのままポートフォリオにできる「卒制採用」など、さまざまなプロジェクトを立ち上げています。
- 柴田
- 僕が人事部に入ったときも、三好さんというもうひとりの人事との上下関係が結構ふわふわしていて、他の会社からすると分かりにくかったみたいです。でも、僕たちは、ふたりでいい感じでやればいいじゃんって。それも、3人で共同代表っていうのと似ているのかな。
- 各事業部の代表も、それぞれ3人にするっていうのはどうなんですかね?
- 柳澤
- この案も、よく出ていたんだよね。でも、人事部は柴田君がリーダーだとはっきりしているし、カヤックもCEOは1人であるように、共同代表といっても、その中でどういう役割があるかははっきりとしないといけないとは思う。
- 共同代表としてうまくいくか、再現性があるかというと、まだそこまでは僕らもわからない。たまたまうまくいっているというところもあるし、代表になる人の覚悟がそれぞれにないと成立しないというのもあるし。
- でも、カヤックの場合は、各事業部だったり職種のリーダーだったりを常に複数置くというのは意識しているかもしれないね。
代表取締役が3人いるのは、会社をフラットにするための ”象徴” のようなもの。
- 柴田
- 3人という人数が大事というわけでもないんですね。
- 柳澤
- そうだね。代表取締役が3人いることで、みんなに伝わればいいと思っているのは、カヤックはフラットでオリジナリティーを大切にする会社なんだ、ということ。
- よく、「競合はどこ?」と聞かれこともありますが、面白法人という会社そのものには、あまり競合がいないと思っているんだよね。
- もちろん、各事業では当然それぞれ他社を研究するわけだけど、カヤックは「あいつを倒せ!」と仮想敵をつくってまとまることを、あまり推奨していない。
- 共通の敵をつくるのは、仲間をまとめるマネージメントとしてよくやる方法のひとつ。でも、リーダーがそういう手法をとると、社内でも同じ手法をとる人が出てくる。
- たとえば、上司を悪く言って部下をまとめようとしたり、あるいは上司が自分に矛先が向かないようにスケープゴート的に誰か問題児をつくったり。結局フラットではなく、派閥のできる組織になってしまう。
- だからカヤックは、敵をつくる代わりに、オリジナリティーを追求しよう、という発想なんです。自分たちのオリジナリティーを追求するということは、人の領域を侵さないということだと思うので。
- 結局、トップの思想がその会社の文化をつくる。だから、フラットな組織をつくろうと思ったら、社会に対してもフラットに見なければならない。だから、競合と言われるところも、敵ではなく”感謝する対象”にする。そんな風に考える。
- 代表取締役が3人いるのも、会社をフラットにするための象徴のようなものだから。3人でやってるんだ、と思ったら、自然とみんなが仲良くなるじゃないか、というね。
- 柴田
- カヤックに代表取締役が3人いるのは、色々な意味があったんですね。
- 柳澤
- カヤックの場合は、代表取締役が3人いること。それ自体に伝えたい思いがあるんです。
たぶん、目に見えない、言語化できない価値というのを捉える感受性が重要なんだと思います。
こうして、まとまりのないまま、そして本題の「どうして3人で起業する人が多いのか?」という話からは若干脱線したまま、対談は終了となった…。
次回の対談もお楽しみに!
記事に登場した人物
柳澤 大輔 CEO
柴田 史郎 ギブ&ギ部(管理本部)
貝畑 政徳 CTO
久場 智喜 CBO
記事に登場したURL
カヤックから3人で起業した会社
人事部のプロジェクト
その他
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