佐藤ねじが考える「自分を成長させる会社の使い方」 | 面白法人カヤック

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2017.08.04

#退職者インタビュー No.19
佐藤ねじが考える「自分を成長させる会社の使い方」

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アートディレクターとしてカヤックのデザインとアイデアを牽引してきた 佐藤ねじさん。2016年7月に退職して、株式会社ブルーパドルを設立。Webやコンテンツの新たな可能性に取り組む。ヒットを生み出す秘密を惜しみなく披露した「超ノート術」の出版も話題に。

カヤックで過ごした6年半、そしてブルーパドルでの新たな取組について聞きました。

カヤックを退職してブルーパドルを創業するまで

―ご退職されてちょうど一年ですね。

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佐藤
昨年7月にカヤックを退職して、同僚だった深津康幸と7月7日に株式会社ブルーパドルを創業しました。

「パドル」というのは、水たまりという意味です。ビジネスでは、競争が少なく利益の少ない「ブルーオーシャン(青い海)」を目指すことが推奨されますが、簡単に見つかるものではありません。でも、小さな水たまりだったら、実はたくさんあるかもしれない。

「これは誰も思いつかなかった」という驚きのある、小さいけれど新しいアイデアをたくさん生み出していきたいという思いを込めています。

―独立して仕事はどう変わりましたか?

佐藤
在職中はお引合いがあって、それをどう受けていくかというところから始まることが多かったですが、現在は、仕事をとってくるプロセスそのものを自分たちがつくり出していると感じます。

たとえば昨年「超ノート術」という本を上梓しましたが、その本のPRとして、読書感想文を送ってくれた方にアイデアをひとつプレゼントするというキャンペーンを行いました。感想文を送ってくれた方と実際お会いすることになって、「ヤサイくん」として個人プロデュースすることになりました。

「仕事をどうつくるか」という方法にも、いろんな工夫の余地があって、アイデア次第でいくらでも変わるんですよね。

カヤックにいなかったら独立していなかった

―カヤックにいてよかったと思うことは?

佐藤
それはたくさんありますね。企画力だけではなくて、大型案件で構築や運用に苦労したことも役に立っています。いろんなテーマに対応できる体がつくられるというのは、やっぱりカヤックにいたからこそですね。具体的には、Webの階層構築とか、IA(Information Architect)で学んだことが多いです。

ぼくはカヤックで、ゲーム事業も経験しておけばよかったと思うんですよ。独立してから、未経験でゲームつくるってなかなかできませんから。そういうことって、会社にいるうちに経験して、どんどん吸収すればいいと思う。

面白い仕事や賞をとった仕事ももちろんですけど、人事採用やマネジメントの経験も、やっぱりすべてが生きますよね。商談ひとつするにも、話す相手が全員クリエーターなわけじゃなくて、企業経営者だったりしますから、いろんな言語で話せるっていうのは大きいと思う。

―カヤックで身につけたことは?

佐藤
ほんとにたくさんありますけど、たとえば、読書の習慣もカヤックで身についたことです。ぼくが入社した頃は、本を読むことを奨励する文化がいま以上に強かったんですよ。

入社して数年、薦められた本を読み漁りました。一度その習慣が身についたら、本からいろんなスキルを学ぶようになるじゃないですか。成長するためのエンジンをもらった感じがありますね。それがなかったら、きっと独立もしていないと思います。

バズる企画を生み出すためには、インプット・アウトプット・レビューのサイクルを回し続ける

―企画をバズらせるための方法論はあるのでしょうか?

佐藤
方法論は人によって違いますから、あまりそういう話はしないんですよね。ただインプットとアウトプットの数を増やすこと、そのために、いろんなものをノートに書いておくといいよっていうのはあると思います。そういったノウハウは「超ノート術」に書いています。

入社して、いろいろやっていれば、ヒットを飛ばすタイミングって絶対やってくるんですよ。それを繰り返すうちに、自分に向いているバズらせ方というか、つくり方というものを後づけ的に把握していくことだと思うんです。

あとは、きちんとレビューすることですね。なにかをつくったら、どこがよかったのか、何がダメだったのか、きちんと見直す。

チームで仕事を振り返るのはもちろんですけど、個人でレビューの時間を持つことが大切だと思うんです。仕事のレビューを仕事の一部としてやるか、それとも個人でやるかの差は大きいと思います。いわゆる「自分ごと」化ですね。

カヤックにいる時も若い子たちにいっていましたけど、会社に勤めていても、自分の仕事としてやることが大事です。同僚や上司は仲間ですが、同時に自分のクライアントでもある。そういう感覚を持つことで、吸収率も上がるし、能動的に動けるので、いいパフォーマンスが出せるんですよね。

会社を自分のクライアントと捉えて「自分ごと」化する

―そう思うようになった転機は?

明確な転機があったわけではないんです。ぼくは最初、デザインチームにいて、企画部からきた企画をデザインにしていく仕事をしていたんですね。そうすると当然、自分で企画も考えたくなる。

でも「企画やらせてください」というだけでは、効き目は薄いですよね。運がよければ機会がやってくるかもしれないけど、それってエサ待ちの状態だし、組織ってあまりそういう風にできていない。

今年1年間を振り返って、「いろいろ忙しかった割には、思ったほど面白い企画を生み出せなかった」と気づいたとします。すると原因を分析しますよね。そもそも、いい仕事の絶対量がなかったのか、それとも自分がいい仕事をつくれなかったのか、あるいはデザインチームのリソースが足りないなどの原因があるのか。

そうすると、おのずと全社視点が生まれてくるんです。たとえば、いいデザイナーを採用できたら、自分が作業できる時間が増えてアウトプットの質が上がる。ではどうやったら採用できるかというように。

そうやって能動的に動いていくと、全体が見えるようになりますから、動きやすくなるんですよね。頂点にあるのは面白いものをつくるためなんですけど、それを実現していくために、会社を自分のクライアントとして捉えて、いまこういう打ち手が必要だろうということをやっていく。

それはカヤックで学んだことだし、独立しても、そのまま生きる考え方であり、スキルだと思うんですよね。

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「ブルーパドル的」なものをひとつでも多く生み出していきたい

―今後、ブルーパドルでどのような挑戦を?

ブルーパドル的な事例を積み上げていくこと。それに尽きますね。一流のデジタルクリエイティブが町の床屋さんに注がれたら、もしかしたら日本で一番素敵な床屋のサイトが作れるかもしれません。そういう事例を増やしていきたい。

ジャンルはなんでもありで、Web制作をメインにやっていますけど、コーヒーの商品開発もやっています。組み先によって、生み出すものやジャンルは変わってくる。クライアントのブルーパドルを発見できるかどうか。そこの軸だけ、ずらさないでやっていければいいと思う。

会社の規模を大きくしたいとは思わないんですよね。KPIはたったひとつで、ブルーパドル的なものを、生きている間にどれだけ多くつくれるか。

いろんな手法とか考え方を違う場所に持ってくるっていうことはすごくやりたいですね。たとえばバズの手法を、インターネットじゃなくて店づくりに適用したらどうなるか。あるいは、NPOでバズの手法を使っても面白い。良いことをしているのに、PRが追いつかないNPOも多いですよね。そこにバズの手法を使ったら、面白い表現や価値が生まれるかもしれない。

カヤックも、必ずしもWeb領域に事業を限定していないですよね。以前は飲食事業をやっていたり、最近では不動産事業に参入したり。面白い事業を世の中にインストールするために、面白法人というコンセプトをつくって、世界を変えようと挑んでいるように感じます。

やなさん自体がブレないですよね、ずっと。ブレないこと、続けることが本当に大事だなというのは、自分自身も影響を受けていると感じます。

大きな何かを成そうと思ったら、一本道では行けないはずで、いろんな迂回をしながら、続けていかなきゃいけない。一発の企画だけで実現できないものを実現していくのは、「ハイレベルな企画者」だと思うんです。そのためにはブレずにやり続ける力が必要だと思う。

会社を使い倒して、経験を積んで、恩返しする

―カヤック社員にメッセージを。

安易な独立はしない方がいいですね(笑)。独立したら、もちろん楽しいです。だけど、成長できなくなる場面も多いと思うんですよ。特にデザイナーやエンジニアは。

ある程度スキルがあれば、若いうちは食べていけます。ただ、1年も2年も似たような仕事しかしないでスキルアップしないでいくと、退化につながっていく。だから、まずいろんな経験を積むのがいいと思う。

いま自分がこれだけ学べばいいと思っているものの範囲は、案外狭かったりする。だから自分に必要なスキルは得られたし、マネジメントはやりたくないから辞めるっていうのは、もったいない。

どれだけ会社を使い倒して、いろんな経験を積んで、会社に恩返しするか。自
分の採用コストに見合った分は2倍3倍にして返すということ。それは仁義ということだけではなくて、結局、自分に返ってくる。

その視点を、もしも全員が持ったなら、みんなが成長できるし、カヤックは会社としてさらによくなる。そう思います。

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