ブレストが授業を変える!?カヤックのブレストが鎌倉の中学生に届くまで | 面白法人カヤック

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2016.04.12

#クリエイターズインタビュー No.49
ブレストが授業を変える!?カヤックのブレストが鎌倉の中学生に届くまで

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昨年、SFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)の創立25周年を記念して、卒業生と在校生が一緒に取り組むプロジェクト「未来創造塾」が立ち上がりました。

SFC卒業生が母校で在校生向けに、各々自由なテーマで1回完結講義を行うという本プロジェクト。OBでもある柳澤もその一環として、「ブレスト(ブレイン・ストーミング)を教育現場に導入しよう!」をテーマにグループワークを担当しました。

このテーマを選択した学生達の最終ゴールは中学・高校など実際の教育現場で、ブレストの授業を実践すること。初回講義後も、柳澤は学生達と月2回ペースのミーティングを半年間続けてきました。

柳澤
カヤックにはもともとブレスト文化があって、そこから多くの新規事業が誕生してきましたのですが、ブレストって単に事業を生み出すためのツールではなく、数を重ねていくことでよりアイデア思考になるということが分かったんです。何か問題が起きたときに、文句を言うのではなく、どうやったら解決するのかのアイデアを自然に出すようになる。それって、体質がポジティブに変化するということと同義なんです。
カヤックで20年間ブレストを経験をしていて、その確信を得てきたんです。だからこそ学生、それこそ小学生や中学生にだって授業で伝えられれば、世の中全体が非常にポジティブになるんじゃないかと思っていたところで、今回のチャンスをいただけたという経緯です。

今回、プロジェクトの振り返りをかねて、ワークショップに参加していたSFC学部生に、柳澤とともに話を聞いてみました。ブレストが、取り組む人々のポジティブさに影響を与えることで、状況も好転していく。そんな気配を感じるインタビュー、どうぞお楽しみください。


今回お話を聞いたのは2016年4月より大学2年生になった八木進さん、木下文宏さん、阿部薫子さんの3名と、ティーチングアシスタントとして講義に入られていた土肥梨恵子さん。

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今回のプロジェクト科目には全部で4チームあり、柳澤のテーマである「ブレスト」以外には、ドローンを用いたビジネス、農業を広めるための施策などがありました。

柳澤
最初に取り組みたいテーマを聞かれて、「ブレストの素晴らしさを、小・中学生に教えたい」とお伝えしてはいました。でも正直、18歳、学部の1年生が多いなか、このテーマに興味をもってくれる人いるのかな……と思っていました。実際、僕が学生ならどう考えてもドローンの授業受けるよね(笑)
阿部
私はもともと教育に興味があって、ブレスト自体はあんまりしっくりきてなかったんですけど、カヤックと小中学校で何かをやるということに惹かれていて。これが第一志望でしたよ(笑)
八木・木下
まあ… そりゃイマドキの大学生、みんなドローンとか興味、ありますよねえ(と、言葉を濁す。抽選に漏れた組の二人)。でも、結果的にブレストを選んで本当に良かったです!
そうして集まった計5名の大学生チーム。ちなみに初回の講義では柳澤がブレストについての説明を行い、カヤック社員3名がブレストのデモを実施したところ、15分というわずかな時間でもアイデアが何十個も挙がり、学生メンバー達は圧倒されたそう。
八木
まずは自分達がブレイン・ストーミングを体得するところからのスタートでした。たとえば、ブレストチームは全員早起きが苦手だったので、どうしたら朝早く楽しく起きれるかをテーマにしたり、とにかく練習を重ねました。
最初はスピード感もなかったけれど、気づけばSFCから湘南台駅までのバスに乗っている10分間でブレストをやったら40個くらい出るまでにはなっていました。朝8時半に集合して朝練したり、泊まりがけでもブレストしたり。
柳澤
ブレストは相手のアイデアに乗っかる形になるからこそ、誰でも身につけられる技。制限時間内で多数のアイデアを出すことが目的です。とにかく数を出すということがポジティブシンキングなんですよ。質問とか否定とか、余計なことをしてる時間が無い。それが脳を変えるんです。
阿部
私自身、他の授業のアイデア出しでも、前よりいっぱい出せるようになったかな。たとえば作品をつくるにあたってどういうのがよいか、など。
八木
本当に、ブレストをやる前は「これは実現が難しいし、くだらないアイデアだから言わないでおこう」と躊躇していたのが、一切なくなりました。
柳澤
できない理由を考える必要はないし、アイデアを出すことに焦点を合わせると、思考そのものがポジティブになっていくんですよ。おまけに、みんなでやるから、どんどんメンバーと仲良くなっちゃう。
八木
他のテーマを選択したチームの人からは、「なんでこんなにプライベートな話してるの?」って言われるくらい仲がいいです。「フラれた」とか(笑) ブレストチーム全体としてポジティブです。
阿部
否定されないから、「何を言ってもいい」っていう安心感があるんですよね。
八木
未来創造塾の講義で中間プレゼンがあって、他のチームが真面目に発表する中、僕達だけは担当者がプレゼンしていると、チーム内の誰かが野次を飛ばす。他のチームと全然雰囲気が違ってきてました(笑)。

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鎌倉学園でのブレスト授業実践編

ブレスト練習を重ね、チームの仲も深まった秋頃、早くもこのワークショップの目的であるブレスト授業を実際の教育現場で行うチャンスが訪れました。学生チームの呼びかけに、私立鎌倉学園中学校の先生お二人がご快諾してくださったのです。

柳澤
普通はなかなかこんなにすぐには実行できないよね。話をしてから1ヶ月くらいでしょう?ちょうど冬休みに冬期講習のタイミングでやらせていただけたので本当にラッキーでした。先生方もすごくポジティブで。
土肥
もともといろんなことを教育に取り込みたいという意識の先生方だったので、たまたまSFCのブレスト講義の話をしていたら、二つ返事で「やりましょう」とおっしゃっていただけて。
学生チームのメンバーは事前に学校へお邪魔して、実際の教室やどんな子がいるかなどを見学。どんなことに興味がありそうかなど中学生のニーズを汲み、八木さんをリーダーとして事前の資料づくりを行い、授業へと臨みました。
そして迎えた授業当日。お二人の先生が顧問を務めるサッカー部とバスケットボール部からそれぞれ15名ほど、合計30人の男子生徒が集まってくれました。1チーム6人でチームを結成し、そこにSFCブレストチームの学生がファシリテーターとして、カヤックの社員が書記として加わり、一緒にアイデアを出していきました。
八木
冒頭に、カヤックさんがこれまでに世に出してきた企画を中学生に紹介しました。いきなり「ブレストをするよ」って言うと、やっぱり抵抗感が出ると思ったので。僕がSFCに入学した当初、やなさんの講演を聞く機会があって、「弊社のサービスを紹介しますけど、どれが聞きたいですか?」という場面があったんです。
そのとき僕が一番知りたかったのは「うんこ演算」。結局その講演では違うサービスが説明されたけれど、これは確実に中学生位の男子にはウケるだろう、と(笑)。今回、授業をしたのは中1と中2の男子学生だったんですが、彼らに実際に紹介したら大爆笑で。
柳澤
中学生目線でね。授業準備も万全にして、いざ本番というときに「まずつかみに『うんこ演算』持って来ましょう!」ってやぎしん(八木)が言うから(笑)。

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そうして始まった中学生達のブレスト体験30分。お題は「学校をどうしたら楽しくできるか?」。気づけば各チーム30個以上のアイデアが出て、ホワイトボードのスペースが足りないほどだったそう!各チームに一番面白かったアイデアを聞いてみるど、「学校の廊下をトランポリンにする」、「毎日席替えする」などさまざまな案が出たそう。

柳澤
チームにいる人の組み合わせ次第でアイデアの方向性もどんどん分岐して変わる。ということは、世の中にアイデアはゴマンとあるってことでもあるよね。
八木
チームによってフォーカスするポイントに違いが出てくるんです。たとえば、場所だったり人だったり、と。あとは、盛り上がっている生徒からアイデアが出てその周辺に派生していくって感じでした。中学生たちも最初の方は戸惑っていたけど、一度スイッチが入ると、どんどんアイデアが出ていましたね。
木下
実は最初、結構チームごとのアイデアが被っていて。「学校をなくす」とか「授業をなくす」とか、「先生がいなくなる」とか、ネガティブなものがどこも共通して出ていたんですが、たった30分間でここまで意識が変わるのかと驚きました。単純にポジティブなアイデアが増えると盛り上がるというか、それがなんとなく時間が経つにつれ分かってくるんじゃないかな、と感じました。

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また、実際に教育現場でブレストをすることで、新しく見えてきた可能性もあったそう。

木下
ブレストすると、生徒さんに学校環境への当事者意識が生まれてくることが分かってきました。当事者意識の反対はすなわち現実逃避で、そうすると自分が環境に対して影響を与えようとは思わず、ただ環境に流されるままになっていく。
でも、最初の「学校をなくす」という現実逃避的なところから「教室を無重力にする」とか「毎日席替えする」というように、どうしたら自分たちが環境を楽しく変えていけるだろうって当事者意識を持ってくれて。
八木
僕は割と進学校と言われる中高一貫の学校に通っていたのですが、学校に対して当事者意識が当時全くなく、先生達が高校を大学受験への通過点として見ていることに、すごく違和感を感じていて。
でも今回の鎌倉学園中学でのブレスト授業を通じて、「どうすれば自分たちの環境をもっと良くしていけるんだろう」って中学生達に促すことができたことにすごく可能性を感じました。

今回、ブレスト授業の取り組みを終え、窓口になった先生方からは「ぜひ続けてほしい」との要望に加え、ホームルームでもブレストを取り入れたいという、非常に前向きな感想もいただいたそう。

八木
ただ質的に変わったよねというだけでなく、きちんと教育的効果を測っていきたいと思って、これを機にオリジナルの指標を取り入れたアンケートも実施しました。それを定期的にみることで、ポジティブ度の数値変化を測っていきたいなって。
阿部
たくさん意見を言っていた子はやっぱり満足度が高い。でも、あまり言えなかった子も「もっとおもしろいアイデアを出したい」ってアンケートに書いている。だから、鍛えていけばみんなもっとアイデアを出せるんじゃないかな。

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柳澤
最初はガチガチに固まってた生徒も、言えるようになってたもんね。最後に、「1個思いつきました!」って言いに来てくれたりね。
八木
あれは一番嬉しい瞬間でした!あと、アンケートを見てると、「カヤックのことをもっと知りたかったです」っていうのもあって。
柳澤
いい大人が「うんこ演算」つくってたら、そりゃそうなるわ(笑)

最後にプロジェクトを終えてみて思ったことをあらためて

そんなわけで大充実の初ブレスト授業を経験し、半年間のワークショップも終わる頃の3人。あらためて感想をお聞かせください!

木下
アイデアの出し方の質が変わったり、自分自身の変化が分かるのが面白かったです。あとは、中学校での授業を通じて、他者の出すアイデアの質が変わっていく瞬間に立ち合えたのがすごく貴重なんじゃないかなと感じています。
このブレストチームメンバーも気心が知れていて、とても価値のある仲間だなって思えます。
八木
僕は、これが本当の「学び」なんだって思いました。今回ブレストを習得したことで、答えはひとつだけじゃないって分かるのは、すごく心に余裕ができるというか…。「自分の見識を超えることが学びだ」とカマコンの宍戸さんという方にも教えていただき、まさにそうだなと。
あと、通常ブレストは単にアイデアを出すためのものと思われているけど、人をポジティブにしたり、僕達が中学生に実施した授業で見てきたような当事者意識を芽生えさせるきっかけであったりとか。いろんな見方ができるツールなんだっていうことがある意味、最大の学びでした。
阿部
私はブレストと出会えたこと自体がすごく自分にとって大きかったです。ワークショップ開始当時は大学に入り、自信を失くしかけたり、諦めモードになっていた時期で。ブレストしていると夢や発想が広がるから、大学へ行くこと自体もすごく楽しくなりました。他の科目で制作物がうまくいかないときも、ブレストをするとポジティブになれるし、アドレナリンみたいのが出てきて楽しくなっちゃうんですよね(笑)。
もうひとつは、現場で実証できた経験。なにかやろうと思ってもその前に諦めてしまうことが多いから、講義の目的である「自分達がブレストを授業として教える」ことまでできたのが、本当に大きかったなって。

たった半年で本人も予想していなかったところまで来てしまった、と笑う3人。現在も彼らは次にブレストを実施してくれる小学校や中学校(おそらく高校も!)を随時探しているところなので、これを読んで興味を持った学校の先生方や関係各位は、カヤックまでご一報ください!

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