ブレストはお題が9割 | 面白法人カヤック

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2024.10.22

#面白法人カヤック社長日記 No.137
ブレストはお題が9割

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今回は、カヤックが大切にしているブレストにまつわるお話です。

今年公開した12分の25周年の記念ムービーの中にも、何度も登場するブレストというキーワード。

「ブレストに始まりブレストに終わる」。カヤックといえば、ブレスト。ブレストといえばカヤック。とループするぐらい、カヤックとブレストの関係性は深く、僕自身もブレストが世界を変えていくと信じています。そんなブレスト一本槍の僕も、過去にカヤック流ブレストのルールや、そのブレストが組織文化にもたらす効能という話は、何度も書いてきていますが、まだ書いてない要素がありましたので、今回は書いてみたいと思います。

それは、ブレストがうまくいくためには「お題の出し方」が重要だということです。

なお、ここでそもそもブレストがうまくいくという状態がどういうことかを話しておく必要があります。一つは、アイデアがたくさん出しやすいという状態です。もう1つは、ブレストすることで意識が変わったり、より考え方が柔軟になったりする状態です。

この2つの状態が、お題の設定次第で、どこまで良くなるかというのが実は変わってくるのです。お題の立て方が今ひとつだと期待される成果が出ません。

ということで、今回は、どういうお題設定だとブレストがうまくいくのか、いかないのかについて書いてみたいと思います。

その1「アイデアではなく知識を求めてしまうお題設定はうまくいかない」

これはブレスト初心者が設定しがちなお題の傾向です。
例えば、新しい商品を作ったとします。この商品の販売を拡大したいと思っていたとします。そこで、「この商品をどこで売ったらいいでしょうか?」というお題を立てちゃうパターンです。ところが、このお題設定だと、あそこの店で売ったらいいよとか、Amazonで売ったらいいよとか、参加者が知っている知識をただただ言い合うだけになります。もちろんこれで網羅的に販売経路を出し切るという価値はあるのですが、これではブレストの醍醐味が出ません。ChatGptで、新商品の販売先として考えられる販路を全て出してください。と投げかけるだけで十分ということになります。こういったお題は、ブレストよりもリサーチの方が向いており、ブレストの醍醐味である誰かのアイデアに創発されて、全く考えてもなかったようなアイデアが出ること、といった成果が出にくいのです。

つまり、これはアイデアを出し合うというよりは知識を出し合うことになるなと、感じてしまうお題設定は見直した方がいいというのが第一の教訓です。

その2「アイデアを出すお題にしやすい一つの定番方法は、 “仕組み”を考えるお題にしてみる」

上記の事例の続きです。新しい商品についてブレストをしたい目的は、その商品の販売を拡大したいということでした。であれば、そこで安易に、「この商品をどこで売ったらいいでしょうか?」というお題にするのではなく、「どうやったらこの商品の販売ルートが増えるでしょうか?」と置き換えてみます。商品の販売ルートが増える方法=仕組みです。
そうすると、例えば「サンプルをいろんな店に配りに行く」とか「商品を3回購入してくれたら販売することができる」とか、創意工夫したアイデアが出しやすくなります。

盛り上がるお題にするために、「仕組みを考えるお題にしてみる」。これが、2つ目の教訓です。

ちなみに、余談ですが、商品名を考えてほしいというような、ネーミングを考えるお題も、実はそれほどブレストには向いていません。確かにネーミングは知識ではなくアイデアと言えばアイデアなのですが、皆で集まってブレストするほど盛り上がるお題としてはそこまで適切ではありません。各自がネーミングを考えて持ち寄るで十分と言えます。

その3「お題は広すぎるときついし、狭いと出しやすいがアイデアが尽きる」

引き続き、上記の事例の続きです。繰り返しになりますが、新しい商品についてブレストをしたい目的は、その商品の販売を拡大したいということでした。であれば、その目的のまま、「この商品がどうやったらたくさん売れるか?」というお題設定にしたとします。
これはちょっと雑で広すぎなお題とも言えます。実際は売れるためにはいくつかの要素があるわけです。それこそ取り扱い販売店が多いとか、商品が良いとか、他の商品より安いとか、口コミが多く集めるとか・・・
このように広すぎると、各自が思いついた別々の領域を探索し始めるので、ブレストの醍醐味である。創発が起きにくくなります。
同じお題と同じ領域でアイデアを深ぼっていくから、誰かがアイデアを出した時にそこに乗っかってまた新たなアイデアが生まれやすくなる。お題が広すぎてしまうとどうしても各自がバラバラ言うだけになっちゃうのです。

そこでこういう時は、もう少しお題を絞る必要があります。
例えば、「この商品がどうやったら売れるか?」というお題にするのではなく、売り上げを上げる勝因の1つを取り上げて、「どうしたらこの商品の口コミが増えるか?」でやってみるのです。そうすると、「口コミ書いたら安くする」とか、お得で釣るなら、「口コミ書いた人の中で何かが当たる!」とか、ちょっとグレーだけど「AIが簡単に口コミを書く・・・」とか、「有名人に送りつけて書いてもらう」と、出てくるわけです。

ただ、「どうしたらこの商品の口コミが増えるか?」は逆に、気をつけないと狭すぎるお題とも言えるかもしれません。それは、このお題だと15分ぐらいやっていたらアイデアが出尽くしてしまうかもしれないからです。

広すぎるのはブレストの良さが活きないのですが、実は狭すぎてもアイデアが出尽くして行き詰まるのです。ただ広いかどうかはすぐお題を見てわかるのですが、狭いかどうかは実はお題からは事前に読みきれないことがある。実際やってみたら制限されているが故にアイデアを出しやすく意外と盛り上がったりすることもある。これはやってみないとわからない、というのが私自身の経験則です。

であれば、最初のお題の設定としては広すぎるのを避けて、多少狭くてもいいから制限をつけたお題にしてみる。そしてアイデアが尽きたり盛り上がらなくなったりしたら、もう1度目的に立ち返って、お題を少しずらしてやり直してみる。それを繰り返すと全体の目的に沿ったさまざまなアイデアが出るということになります。

実はこれがファシリテータ次第で、ブレストの結果がかなり異なるという所以です。ブレストが得意なファシリテータは、そのブレストをするための目的を理解し、広すぎずある程度狭くていいので、目的に沿ったお題をいくつかその場に投げることができる。アイデアが少し詰まったら、角度を変えてまたお題を投げてくれる。これを1時間の間に何度かやります。それでブレストが活性化するということになるのです。

ということで、まとめると3つ目の教訓としては、お題は広すぎるものにしない。狭いお題をいくつか切り替えながらやっていく。ということになります。

その4「自分ごと化をすすめるお題の秘訣」

そして、最後の教訓です。ブレストの効能は、イノベーティブなアイデアが出るということにプラスして、組織文化を変えるのに役立つということはカヤックのサイトやこの社長日記でも何度か変えてきました。具体的にはブレストを通して、1人1人が組織の課題に対してアイデアを出していくことで、組織がフラットになったり、自分ごと化が進んだりということがあります。つまり周囲を色々巻き込んだりしたい時にも、お題の立て方の工夫次第でブレストを活用できるという事例を話したいと思います。

その事例は、FC琉球というカヤックが最近投資しているJリーグ加盟のサッカークラブでの事例です。
今年、FC琉球では、Jリーグ業界初(?)、所属する男女サッカー選手、フロントスタッフ、監督、コーチ陣が、全員で混ざってブレストをしました。

その時のブレストのお題の立て方の事例を話したいと思います。

まずは、今回ブレストする目的は、「監督が目指したいチームづくりを皆で理解し、それに皆が協力し合うようになること」としました。

そのために、まずは最初に、監督から目指したいチーム像について話してもらいました。
そこで、出たキーワードが、「選手一人ひとりがアクションを自ら起こすチーム」でした。
言われたことをやるのではなく、自分で考えて行動する。それは試合中のプレーもだし、普段の練習の時からそうあってほしい。そんなメッセージを監督に語ってもらいました。

そして、さぁ、ブレストです。普通にお題設定をすると
「選手一人ひとりができるアクションはどんなことがあるか?」
というお題だったり
仕組みを意識するなら
「どうやったら、選手一人ひとりがアクションを起こすようになるチームになるか?」
とかになるのではないかと思います。

それでももちろんいいんですが、ここで一捻りしました。
お題はずばり
「監督の目指す、選手一人ひとりが自主的にアクションを起こすチームになるために、監督は何をしたらいいでしょうか?」

これは斜め上のお題でした。普段は監督に指示を受けて行動する選手が、全く逆の立場で自分達が監督に指示をするアイデアを考える。しかも選手だけではなく、普段はあまり接点のないフロントスタッフもそのお題でアイデアを出してみる。
これはある種のコペルニクス的発想の転換です。

これは自分がやるということではない分、いくらでも言いたい放題言えますし、そしてアイデアを出しているうちに、フラットになり、むしろ指示待ちではない発想がより身についていく。組織文化を作るということをブレストの目的にするなら、むしろこっちのお題の方がより目的に近づくお題設定になっている。

これは監督の器が大きいからこそできたお題設定です。実際、自分が威厳を保ち続けたい監督ではこんなお題はできないでしょう。でも威厳を保ち続けるということが選手1人ひとりのアクションを促すという方向とは違う方向に行ってしまうことがある。それを突破する、良いお題の捻り方だったと言えます。

ということで、最後の教訓としてあげたいのは、ブレストの効能である「自分ごと化を進めたい時」には少し捻ったお題を考えてみる。ということになります。

今回は以上です。

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