2016.10.28
#クリエイターズインタビュー No.50未来のクリエイターが挑戦!「Kocri」を活用したこれからの授業アイデアとは?
1万人が使う、黒板と電子黒板の「いいとこどり」アプリ
約100年続く老舗黒板メーカー・サカワさんとともに昨年発表したハイブリッド黒板アプリ「Kocri(コクリ)」。先日もACCシルバー(インタラクティブ部門)を受賞したばかりです。Kocriに必要な道具はアプリを起動させたiPhone/iPadと、AppleTV、どの学校にも必ずあるプロジェクターの3点のみ。これらを繋ぎ、アナログ黒板に同期されたアプリ画面を投影することで授業が展開できるという手軽さから、リリース1年を経た現在、全国1万人以上の先生に教育現場で使われています。
「ファミスタの父」から未来のクリエイターへの課題
今回、そんなKocriと東京工科大学がタッグ。 ブレスト&プレゼン修行も兼ね、学生さんたちがKocriの効果的な活用アイデアを提案する全2回の授業が行われました。
参加したのは岸本好弘先生率いる、東京工科大学メディア学部ゲームデザイン演習のメンバー。岸本先生は、往年の人気野球ゲーム「ファミスタ」の生みの親としても著名な方です。
そんな伝説的ゲームクリエイター・岸本先生のもと、大半がゲーム業界の企画職を目指しているという学生達が、審査員にKocri開発メンバーを迎えて活用案を披露しました。未来のクリエイターが現役クリエイターにアイデアの挑戦状をたたきつける授業の行方とは?
第1回目授業はゼロから考える40分間
授業は八王子市の大学構内で実施。2、3年生を中心に約20名が複数班に分かれ、「Kocriを使用した受けてみたい授業」のアイデアを出します。
1コマ90分のうち、実際にブレストに使えるのは40分程度。冒頭に概要レクチャーを受けたとはいえ、ほぼゼロからの案出しです。
ある班では早速、Kocriの白黒反転機能に目をつけ、講義室の黒板に人間の陰がどう映るかの実験を始めたり、他の学生も方々で活発に議論します。
「静止画より、動画のほうが理解も深まるんじゃない?」
「高校物理ではドップラー効果の説明がわかりづらかったから、音で体験させてあげたい」
などなど。
歴史あり、理科あり。第1回の優勝は?
そして審査員へのプレゼンタイム。動画で実験手順を見せてスムーズな授業展開を促す案や、黒板掃除の時間に投影し、きれいになったら嬉しいメッセージが出る案、3Dモデルを画面上で回転させて理科・数学教科などの理解を深める案など、知恵を出し合って到達したアイデアに、審査員も熱心に聞き入りました。
そんな中、優勝したのは「平成 黒板の乱」! 発表中で唯一、授業の流れを含めて設計したのが決め手でした。「動画をただ見せて終わりではなく、質問を出して生徒に考えさせることがKocriを使う長所だと思います」と、白地図クイズの授業を提案。日本全土の白地図を投影し、先生が「織田信長の進軍ルートは?」と出題すると、生徒がチョークで黒板上の白地図に記入した後、あらかじめ先生が用意した正解画面を表示するという授業案です。
- カヤック深津康幸
- 「Kocriはあくまで先生の一道具。それを使って、いかに生徒の集中力を絶やさないかがポイントになります。優勝班はそこをよく捉えて考えていた。
- サカワ坂和寿忠氏
- 「Kocriだからこその使い方、予想外の使い方と両方あった。自分なりの『面白い』を基準にするとアイデアが浮かびやすい。
学生、審査員ともに新たな視点を発見して、この日はお開きとなりました。
第2回目授業は個人戦
学生さん達は後日、改めてKocriの活用アイデアをA4一枚で提出。そこから選抜された5名が第2回目授業に進むことに。当日は3年生・林竜之介さん(Moving Choke)、脇坂明日香さん(コロコロ穴埋め)、八野飛龍さん(画像が動く! ARマグネット)、2年生・桑原健吾さん(ヒストリーオブジャパン)、1年生・師岡ひな乃さん(体育館の謎)のラインナップでプレゼンが行われました。
※カッコ内はプレゼンテーマ
選抜されたアイデアだけあって、渾身のプレゼンは聞きごたえ抜群。審査員3名も意見が割れたため、優勝者を決めかねるという結果となりましたが、ここではプレゼン案の中から、脇坂さんの「コロコロ穴埋め」をピックアップしてご紹介します。
「コロコロ穴埋め」は、Kocriの白黒反転機能を応用した英単語クロスワードパズルの提案。
授業を受ける学生は、黒板をノートを写す時に同じ箇所は一度しか見ない、自分が面白いと判断しなければ思考しないことが多いのでは?という分析から、能動的+遊びを含んだものが必要!とこのアイデアに行きついたそう。
やり方は白黒反転切り替えで、クロスワードの縦横列を交互に表示し、穴に入る文字をチョークで黒板に書き込むというもの。これなら、英語授業に遊び要素を取り入れて、生徒のやる気や理解力を引き出せそうな気がしませんか?
こうして幕を閉じた第2回目。今回の授業がクリエイターの卵にとって実り多い機会になったことを、願ってやみません。
座談会~話題は授業からKocri開発まで~
― 本授業は、同大学で岸本先生が展開される「なんでも!面白化プロジェクト」の一環として行われました。企業を訪問して学生がアイデアをプレゼンする特別企画です。そもそもどんな経緯でKocriを知ったのでしょう?
- 岸本
- 2015年10月に行われた『eラーニングアワード2015』です。Kocriが日本e-Learning大賞を獲っていた。可能性のあるツールだし、学生達のプレゼンネタにもいいと思い、声をおかけしたのが最初でしたね。
- 坂和
- 今年3月にサカワにご来社いただいたのが今回の授業に繋がったんです。Kocriは僕と深津さんはじめカヤックメンバーで、教育現場を便利にしたい、授業の準備や進行の手間を軽減したいと開発してきた。それが評価され、注目してもらえるのはうれしい。
- 深津
- 今回のように義務教育を離れて間もない人から活用案をもらえるのは、貴重な機会だよね。僕らで考えつかなかったものもいくつかありましたよ。
― Kocriのメリットは、どこでしょう?
- 岸本
- 使う側からしたら『板書はポイントだけでいい』というのがいちばんのメリットだと思うなあ。書くのが必要最小限でいいとなれば、生徒へのフォローをより手厚くできますもんね?
- 深津
- まさにそうで、デジタルのいいところって面倒をなくせるところなんですよ。Kocriには色々な機能を搭載しています。画像や動画、文字を書くためのガイド線を黒板に投影できる機能とか、書画カメラ機能とか。このアプリ一つで、大量の板書をしてまた消してっていう作業をかなり省けるようになる。
- 坂和
- でも、全部デジタルじゃなくって。チョークで書く、地に足ついた感じもちゃんと残すのがテーマの一つだったよね。
- 深津
- そう。アナログ・デジタル両方のいいとこどりで、黒板をデザインし直すっていう感覚。タブレットなどハードの存在が大きく後押ししてくれます。
坂和、深津両氏は「面倒を省いた結果、授業は本来のライブ感を増す」ともいいます。まだ体験していない先生方、黒板の概念が、いい方向に激変するかもしれませんよ。
Kocriについてはこちらをご覧ください!
ハイブリッド黒板アプリKocri
http://kocri.com/