2020.07.27
#クリエイターズインタビュー No.57リカちゃん愛から誕生「リカちゃんコーディネートメーカー」ヒットの裏側
花王株式会社のおしゃれ着用洗濯洗剤「エマール」と株式会社タカラトミーの「リカちゃん」がコラボレーションした、自分だけのオリジナルリカちゃんのおしゃれ着コーディネートが楽しめる「リカちゃんコーディネートメーカー」の制作をカヤックがお手伝いしました。
2019年11月20日から期間限定で花王のおしゃれ着洗剤エマールのプロモーションとして公開されたこのメーカーは、公開当初からTwitterのトレンドワードにランクインし、栄誉ある「2020日本キャラクター大賞、プロモーション・ライセンシー賞」を受賞しました。
このヒットを陰ながら支えた「リカちゃんコーディネートメーカー」生みの母親たちとも言える、カヤック制作メンバーにインタビューしました!
カヤックの”メーカー職人”市川がこだわった、「全部をリアルにする」という新しいかたち
― 大ヒット作として世の中の多くの方に楽しんでいただいた「リカちゃんコーディネートメーカー」ですが、そもそもどういった経緯で制作されたんでしょう?
- 市川
- カヤックではこれまで「ちゃんりおメーカー」「マジョリ画」「KIRIN 惑星メッツ 最強決戦武道会」といった数々のオリジナルキャラクターメーカーを手掛けてきました。これらの実績を通して興味をもってくださった花王さんからお声がけいただきました。
― 本当に着せ替えをしている気持ちになりました!大変だったんじゃないですか?
- 市川
- これまで手掛けてきたメーカーでは、ユーザーが顔のパーツやヘアスタイルを選択して、イラストでオリジナルキャラクターをつくるという体験を提供してきましたが、 「リカちゃんコーディネートメーカー」では膨大な種類の服装・持ち物をまるで実写のように着せ替えてコーディネートできることに重点をおきました。そもそもリカちゃんは着せ替えやヘアアレンジを楽しんでもらうおもちゃとして、子どもに限らず幅広い世代で長年愛され続けています。そこで、着せ替えで遊ぶというリカちゃん本来の楽しみを残した状態で、ユーザーがいかに自分ごと化できて楽しめるコンテンツが作れるかというところを追求しました。
企業の垣根を超えて、我が子のようにリカちゃんへの愛が芽生えた制作現場
― 元々リカちゃん好きなメンバーで制作チームとして結成されたんですか?
- 市川
- リカちゃんを元々好きなメンバーもいましたが、もちろんリカちゃん初心者のメンバーもいました。最初のうちは、普段からリカちゃんのことをずっとずっとずっと考えて向き合ってこられたタカラトミーさんに本当に多くのことを教えていただきました。「リカちゃんコーディネートメーカー」の制作過程でリカちゃんの知識が深くなるにつれて、全員の中に共通のリカちゃん愛みたいなものが生まれていった感覚があります。リカちゃん一人一人にも顔の個性があるので、ちょっとした表情の違いもわかるようになりましたね。
- 植竹
- リカちゃんを我が子のように感じてましたよね。リカちゃんの衣装撮影のときにはついつい「かわいいね!」と声をかけたり。あと、例えばモックにアイテムが追加されていく中で、靴を履けるような仕様になったときは、制作チーム全員で「リカちゃん靴履けるようになったね~~~!」とスタンディングオベーションする勢いで喜んだりしてました(笑)
- 市川
- 実写でのメーカー制作は弊社としても初めての取り組みで、何度も検証を重ねながら実現させる方法を試行錯誤していく形での制作となりましたが、タカラトミーさんや花王さんとリカちゃん愛を共有していくことで、企業間の壁を感じることなくひとつのチームとして実現に向けて動いていけたように思います。特にこだわったことが「きせかえの臨場感」です。リードデザイナーの野崎がこだわり抜いてくれました。
― 「着せ替えの臨場感」とは?
- 野崎
- 通常のオリジナルキャラクターメーカーの場合、イラストなのである程度コントロールができるんですが、「リカちゃんコーディネートメーカー」はカヤックとしても初挑戦となる実写メーカーだったんです。約1800種類のアイテムをほぼ全て実写撮影しましたが、アイテムの組み合わせは32穣通りを超えます。32穣って10の28乗なんですよ。形状が異なるどんな洋服や小物を組み合わせても不自然にならないように検証と調整を繰り返しました。たとえば、同じトップスでもタイトなパンツを合わせることもあれば、広がりのあるスカートを合わせることもありますよね?合わせるアイテムで形状やイン・アウトが切り替わるようしたり、アウター着用時もインナーやボトムスの広がり方などリアリティを細かく追求しました。
- ボトムスの形状でアウターの形状も変化。徹底的にリアリティを追求した結果、撮影点数は2500カット以上に。©︎TOMY
- 市川
- ただ着せ替えをしてもらうだけじゃなくて、リカちゃんがいかに可愛く綺麗に見える着せ方ができるかというところも随分こだわりましたね。誰一人妥協することなく愛をもって最後までよりよい体験を追求したことを、コンテンツを通して感じていただければ制作冥利に尽きるなと思います。
- 野崎
- リカちゃんの世界観を崩さないようにこだわり抜いたことで、ユーザーのみなさんには単純に「オリジナルキャラクターを作れて楽しい!」から一段上がった 「これまで現実世界でやっていた着せ替えがWeb上で自由自在にできるのが楽しい!」「色んなコーディネートを考える過程が楽しい!」といったたくさんのお声をいただけたんだと思います。
― 初挑戦となった実写メーカーでの新しい気付きは?
- 市川
- これまでは顔生成のオリジナルキャラクターメーカーを中心にサービス提供してきましたが、生成結果がすべてではなく制作過程そのものを楽しんでいただけるというところが新しい発見になりました。
- メーカーは体験デザインだと考えていて、おかしな仕上がりにならないよう完璧に制御されているのですが、一方でユーザーには不自由を感じさせてはいけません。自分の好きなように自由にカスタムできると感じてもらえるツールにすることで、自然と遊びたくなるスムーズな体験を作ることが大切だと考えています。
- リカちゃんファンの方がすでにいらっしゃるということは、制作側にリカちゃん愛はあるのか、ということを無意識に推し量られていると思うんです。だから、制作側に愛がないとすぐに見抜かれる。愛には愛で応えるしかないんですよね。制作過程でどんどんリカちゃん愛が深まったことで、制作チーム内でも次々に新しいアイデアが浮かんできました。その一つが、リカちゃんファンの方だけでなく、どんな方にも楽しんでいただけるように、うちわ・ペンライト・チケット・双眼鏡といったアイテムを追加したことです。様々な層が自分ごと化しやすく、世界観が一気に広がってたくさんの方に遊んでいただけたと感じています。
オリジナルキャラクターメーカーでライフスタイルがもっと自由で楽しいものに
― 長い時間をかけて育まれたリカちゃんコーディネートメーカーですが、反響はどうでしたか?
- 市川
- ありがたいことに、想像以上に多くのユーザーからSNSを通して嬉しいお声をいただきました。
- 植竹
- 「リカちゃんメーカー楽しすぎて永遠に遊べる」という文章が定型文化してTwitterでたくさんつぶやいていただけたのは震えましたね。
― オリジナルキャラクターメーカーで今後チャレンジしたいことはありますか?
- 市川
- 新型コロナウィルスの影響を受けて、オンラインで使えるツールがたくさん発表され、実際に多くの人に使われるようになっています。次のステップとしては「オンラインツールを自分なりにカスタマイズができる」というところが必要とされるんじゃないかなと考えています。
- たとえば、オンライン会議やオンライン飲み会の際は画面上の画が自分の身代わりになりますよね。その「身代わりの自分」を素敵な自分に演出したい、みたいなカスタマイズ需要は高まっていくのではないかと考えています。カヤックにはオリジナルキャラクターメーカーの経験を積んできたメンバーだけではなく、ARフィルター制作が得意なメンバーもいたりするので、色んな需要に合わせて今必要とされるコンテンツを提供し続けていただきたいです。
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やりきった人にしか出せない満面の笑みで、「リカちゃんコーディネートメーカーの制作を通してコンテンツ愛とはなにか?を深く考える機会になりました」と口を揃えて話されていた市川さん・植竹さん・野崎さん。今後もオリジナルキャラクターメーカーを通してユーザーの「たのしい」を作り上げてくれるのが楽しみです。