2022.04.28
#クリエイターズインタビュー No.66プロセスもエンタメ化! 課題解決に留まらないクライアントワークで生み出すシナジー
知る人ぞ知る47都道府県の“推し土産”に投票し、地域を応援するプロモーション『インディーズ土産 全国デビューへの道』(2021年7月〜8月)。カヤックが企画・制作した株式会社メルカリのキャンペーン特設サイトは、Twitterリーチ数約1.7億(2021年8月時点)、Twitter投票総数約32万票を達成。ずっと非対面だったメルカリとカヤック制作チームがついに集結し、成功の理由やプロジェクトを通して培われた信頼関係を振り返る。
前列:株式会社メルカリ コンテンツディレクター/山岸香織さん(右)コミュニケーションプランナー/池田早紀さん(左)
後列:カヤック クリエイティブディレクター/コピーライター/プランナー/山口真吾(右)プランナー/髙野晋也(中央)制作進行/乗松優多(左)
◆ピンポイントでカヤックに依頼した理由と、プロジェクトに込めた思い
ーーまず、カヤックと協業した経緯を教えていただけますか。
山岸
本プロジェクトは地域貢献を起点に発案されたプロモーションだったのですが、カヤックさんが『まちのコイン』など地域関連の取り組みをされているのを知っていたことが、最初のきっかけです。
池田
カヤックさんが手がけた、UNOの50周年記念キャンペーンを見たこともきっかけですよね。
山岸
そうそう。UNOをはじめ、カヤックさんが手がけた案件は、単にキャンペーン訴求をするのではなくて、徹底的にユーザーの体験を優先したアウトプットが多いと感じていました。
プロモーションがきちんとエンターテインメントになっていることが重要だと思っていたので、もう他と比べる理由がなかった。すぐカヤックさんに声をかけました。
プロモーションのエンターテインメント化に関しても、コピーライティングを大事にしているのが伝わってきました。人に覚えてもらえて、愛されるものが基本設計になっている。それは、私が担当する編集コンテンツでも心がけていることなんです。自分とマインドセットが近いと感じたことも大きいですね。
ーーどのような期待がありましたか。
行政も巻き込めたら最高だろうな、と思っていて、なおかつアウトプットもエッジの効いたものにしたかった。『インディーズ土産 全国デビューへの道』というプロジェクトを広く知ってもらい、多くの方に参加してもらうことが第一のKPIでした。
ーー『インディーズ土産 全国デビューへの道』は、推し土産に投票し、地域を応援する特設サイトということですが、内容を簡単に説明していただけますか。
山岸
コロナ禍で行きたいところにも行けないし、人やモノとの出会いが限られた今、「デジタルの空間を通して、地域とモノの魅力をもっと発見してもらおう」と立ち上げたのが、メルカリの『ローカルミツケテプロジェクト』。その中のキャンペーンのひとつが『インディーズ土産 全国デビューへの道』です。
もともと私たちには「メルカリ」というサービスをもっと身近に感じてもらいたい、という思いがありました。
身近という感覚は、住まいだったり、アイデンティティに近い存在から感じるもの。そこで、地域の共通言語のようなものやローカルカルチャーを切り口としてブレストを重ね、“地域のお土産”に着目しました。
このアイデアをもとに制作したのが、推し土産に投票し、ローカルを応援する特設サイト『インディーズ土産 全国デビューへの道』です。ユーザーに積極的に参加してもらうためには、47都道府県別の投票形式がいいだろうという話になり、さらに認知を広げるためのシェアボタンも入れ、Twitterでの投票とシェアという設計になりました。
◆フックは、お土産と音楽をかけ合わせた新しい言葉「インディーズ土産」
ーー『インディーズ土産 全国デビューへの道』という特設サイトのタイトルもインパクトがありますよね。
池田
このプロジェクトは、“インディーズ土産”という言葉がポイントになっていると思う。なんでメジャーの王道的な土産じゃなくて、インディーズ土産にしたんでしたっけ?
髙野
たしか、僕がポンと出したインディーズという言葉が、山岸さんに引っかかった。発掘・発見という切り口だったからですよね。
山岸
発掘・発見、という部分を補足すると、「メルカリ」って色々な使い方をされていて、使う人のライフスタイルが投影されているんです。
例えば、福島に移住して木こりをされている方がいて、作業で余った木の根を成形して「メルカリ」に出品するのを生きがいにしている。ニッチだけど、そこにはローカルならでは・その人の生き方の魅力があります。
池田
メジャーだとか関係なく、いいものが発掘・発見されていくマーケットプレイスだということに気づいてもらえるといいな、と話していたんですよね。「メルカリ」が持つ側面、「ローカルの知られざる魅力を発掘できる」部分をもっと深めたいんです。
ーーその思いが“インディーズ”という言葉につながっている、と。
池田
はい。みんながすでに知っているものではなく発掘・発見されるもの、という意味でインディーズ。
山岸
発見して喜ぶ瞬間って、人の心が動きますよね。だから、インディーズという言葉が絶対いいと思いました。
髙野
インディーズ土産という言葉にフックがあるので、音楽と絡めて、投票で1位になったら全国デビューという立て付けにしたんです。投票用のビジュアルをCDジャケット風のデザインにすることは、インディーズ土産という言葉ができた頃から構想がありました。
山岸
CDジャケット風のビジュアルをつくったらそれが絶対バイラルするというアウトプットまで、カヤックさんの中では見えていたんですね。その結果、話題化に成功し、キャンペーンLPも47万PVを達成。すごいですよね!
髙野
2021年7月にリリースしてから約1ヶ月でTwitterリーチ数約1.7億、14日間のキャンペーンの総投票数で32万を越えることができました。
ーーすごい快挙ですね! その他に、こだわった部分や苦労した部分があれば教えてください。
池田
苦労した部分と言えば、インディーズ土産の選出が大変でしたよね。
山岸
最初はまだ「インディーズ」の定義がふわっとしていたから、認識合わせはお土産の候補リストを実際に見ながらすり合わせていきました。「大手の雑貨店ですでに売っていたからダメ」「ローカルのスーパーで扱っていたらもうメジャーかも」なんて議論しましたね。
池田
特に「東京のインディーズ土産って何だろう?」って悩みました。
山岸
そうでしたね! カヤックさんに、山下メロさんという土産物の専門家も紹介してもらいました。
ファクトが欲しいというか、内輪で恣意的に選ぶのは嫌だったので、Twitterで「知る人ぞ知る地域のお土産とは?」とアンケートを取り、客観的な数字も見ました。
池田
「インディーズ土産のファクトを出してほしい」って言われても「え?」ってなりますよね、笑。でも、お土産屋さんに対しても、投票してもらうユーザーに対しても説明がつくことが絶対大事だから、そこは真摯に取り組みました。
カヤックさんがリサーチしている間にメルカリ側でアンケートを取ることで、定性的なデータと定量的なデータを組み合わせて、インディーズ土産かどうかを見極めていきました。最後は“土産物マスター”みたいになっていましたね。
山岸
みんなで成長していった感がありましたよね。
◆プロセスを楽しむものづくりが、結果につながった
ーープロジェクト成功の秘訣はなんだったと思いますか。
山岸
まず、カヤックさんの進行管理はすごかったです。実際に手を動かす人のことを考えているから、この日までに絶対に決め切ろう、とスケジュールをしっかり切ってくれる。乗松さんからも「明日返答ください!」とか、まあまあ鬼なリクエストもありましたね、笑。
髙野
Slackで、「今日中にフィードバックくれたら、スタンプ差し上げます」なんていうやり取りもしましたね。
池田
いつも盛り上げてくれたことも大きかった。47都道府県のお土産屋さんに電話やFAXで許諾交渉をした時も、カヤックさんで星取表みたいなものをつくってくれましたよね?
髙野
やりましたねー。地区ごとに色をつけて、攻略していく喜びがありましたよね。
ーー全国の候補先へは一件一件、電話やFAXで許諾交渉したのですか?!
池田
200件以上のテレアポを、チーム全員でやりました。私、結構成果が高かったんです。大変でしたが、今振り返ると楽しかった!
髙野
許諾をもらえた後のやり取りを、池田さんが全て巻き取ってくれて本当に助かりました。新卒の乗松も、入社して突然テレアポをやらされるとはびっくりしたでしょうね。
乗松
18時20分〜30分の10分間しか電話連絡できないお土産店さんがいて、あれは大変でしたね......。
山口
でも、テレアポをやって良かった。OKがもらえないことも多々あったのですが、ただPCに向かって企画するだけではなく、実際に人と接することで、「インディーズ土産を成功させたい!」という覚悟が強まりました。
ーー協力し合い、楽しみながら、リサーチ・選出・許諾に丁寧に取り組んだのですね。地域やユーザーの反応などで、印象的だったことはありますか。
山口
「広告の枠買いました」って、お土産屋さんが自社で中吊り広告を出してくれて嬉しかったです。
池田
他にも、自主的に駅のキヨスクにチラシを配置したり、お土産のキャラクターが駅前で街頭演説したり。お土産屋さん同士、SNS上で絡んで盛り上がることもありました。
特に印象深いのが、宮城県気仙沼の「はまぐりもなかくっきー」さんですね。お店をたたもうとしていたところ、インディーズ土産の選出がきっかけで奮起して自らメディアをまわり、YouTubeまで始めたそう。
「買いたい」という一般ユーザーのツイートを目の当たりにしたお土産屋さんが、Twitterアカウントやオンラインショップを新設し、デジタルへ進出するきっかけにもなっています。
山岸
コミュニケーションを丁寧に取ったことが、結果に絶対跳ね返っていると思います。そこでのエンゲージメントがあったから、各地域での自主的な盛り上がりにつなげることができた。
髙野
お土産屋さんの熱量は、こちらの想定以上でしたね。
あと、「今年は帰れないけれど、頑張って」「今すぐ食べに行きたい」など、コロナ禍で足を運べない地元に対するユーザーのツイートもあって、ローカルに思いを馳せてもらうことができました。
◆非対面でもフラットに言い合う信頼関係でワンチームに
ーー大きな反響を引き起こしたプロジェクトですが、あらためて振り返ってみていかがですか。
山口
ずっと非対面でしたが、コミュニケーションがすごくスムーズでした。ストレスが全然無かったです。全体の雰囲気がよくて、ピンチの時も深刻化しない。常にピンチはあるけれど、楽しいというか。
乗松
入社して初めての案件だったのですが、楽しむマインドが身につきました。これ以降の案件も、クライアント様と楽しく取り組むことが基準になりました。
髙野
ワンチームでいいものつくってやろう! という雰囲気が良かった。
実は、リアルで対面するのは今日が初めてなんです。でも、フラットに言い合える関係ができていたと思います。
山岸
コミュニケーションが硬化しなかったのは、カヤックさんをめちゃくちゃ信頼しているからだと思います。だから、NGを含め、全部思ったことを言えた。
池田
言えば応えてくれる、と信頼していました。
山岸
カヤックさんは私たちと定例ミーティングに入る前に、社内で意見がばらつかないように必ず裏定例をやってくれていましたよね? 体制がしっかり組まれていたので、誰に何を頼んだらいいのかも、一発で分かりました。
池田
ローンチのタイミングの件も印象的でしたね。ちょうどオリンピックと被ってしまって、いつ出そうかと悩んだ時に、わざわざ競技スケジュールと競技開始時間まで調べてくれて。その辺りのきめ細やかさも、すごいと思いました。
山岸
プロだ! と思いましたよね。カヤックさんのチームプレーは、新卒の乗松さんを含め、全員すごかった。カヤックさん、いい採用してます、笑。アウトプットって、結局は人がつくるものだから。
髙野
ありがとうございます、泣。
プロセスも楽しくて、結果も出せたっていうのは最高。結果にこだわるあまり、プロセスが辛くなるケースってよくありますが、メルカリさんとの本プロジェクトは、みんなで面白がりながら前向きにできたのが良かった。ひとことで言うと、グルーブ感?
池田
そうそう! 髙野さんがDJで、チームみんながフロアで沸いてる感じでした、笑。
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取材・文 二木薫
本チームの快挙は続き、メルカリ公式Twitterのお正月キャンペーン『メルカリみくじ』(2022年1月)に同じ座組みで取り組み、フォロワー数3万増のKPIに対し18万増というミラクルを起こした。単なる課題解決に留まらず、ユーザー目線を最優先にしながら、クライアントと共にプロセスを楽しむものづくり。信頼感をベースに、期待以上の結果を出すクライアントワークに今後もご期待ください。
このプロジェクトの企画書がダウンロードできます
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