2024.02.29
カヤック、英治出版のパーパスを守る目的の黄金株を 1株残して子会社化
新たな事業継承の形を実践する両社がM&Aの門出を祝して「組織の結婚式」を開催
株式会社カヤック(本社:神奈川県鎌倉市、代表取締役 CEO:柳澤⼤輔、東証グロース3904)は、英治出版株式会社(本社:東京都渋谷区、代表:原田英治)を2月29日(木)に子会社化しましたのでお知らせいたします。
今回の子会社化にあたり、発行済株式の約99.9%をカヤックが取得、一方で、英治出版の従業員のみで構成する社団法人「一般社団法人英治出版をつなぐ会」がパーパスと社名の変更に拒否権を持つ種類株式(いわゆる黄金株)1株を所有します。これは、英治出版の長年培ってきた組織文化やブランドを守り、パーパス経営と従業員参加を促す目的で本仕組みを導入しました。カヤックにとってはもちろん、M&Aの活発化する国内でも例の少ない、グループ会社の独自の組織文化を尊重することを目的とした新しい試みです。
また、英治出版から刊行予定の書籍をもとに両社で「組織の結婚式」を開催し、面白法人グループ加入の新たな門出を祝いました。
■ 背景:英治出版の事業継承と事業機会拡大に、カヤックのコンテンツ的付加価値を
カヤックは創業以来、「面白法人」を企業理念に、「つくる人を増やす」という経営理念のもとで、クリエイターを中心とした組織で事業を多角的に展開してきました。話題性のある広告やゲームなどのデジタルコンテンツ領域を軸としながら、eスポーツや地方創生などのコミュニティ関連領域や、冠婚葬祭などの様々なライフスタイル事業にもビジネス機会を広げ、様々なテーマでクリエイターによるコンテンツ的な付加価値創造を進めてきました。また2023年6月より面白法人グループの成長戦略として「仲間を増やす」ことを方針に、M&AやCVC活動などの推進を本格的に開始しています。
一方、英治出版は「Publishing for Change “みんなのものにする”ことを通して人・組織・社会の未来づくりを応援する。」をパーパスに掲げ、ビジネス書や社会書を中心に独自色ある書籍コンテンツを生み出してきました。また、当社刊行の『ティール組織』などに象徴される、社員の自律性と対話を重んじる組織運営に取り組んできました。
英治出版では2022年8月以来、創業者からの事業承継を検討、および新たな事業機会を探索する中で、多様な領域でビジネスを展開するカヤックによる買収に合意し、面白法人グループに参画することを決定(2月15日IRリリース参照)。本日2月29日に既存株主との株式譲渡契約が締結され、発行済株式の約99.9%をカヤックが取得しました。
英治出版を面白法人グループに迎えることで、同社のビジネスコンテンツの開発力を広義に捉え、カヤックの持つサービスやエンタテインメントコンテンツの開発力と組み合わせた新たな「まなびコンテンツ」の展開を検討していきます。また、それらのビジネスコンテンツを通じて、共に学び、共に成長するというテーマへ広げ、当社のコミュニティ活性化の技術を組み合わせることによる事業機会拡大も構想して参ります。
さらに、同社が培ってきたビジネス領域での先進的なナレッジやネットワークは、当社が志向する新しい組織運営や経営のあり方にも反映できると考えます。同社のアセットを活かして、面白法人グループとしての新しいガバナンスのあり方や経営的進化も推し進めながら、グループ全体としての競争力強化と企業価値向上を目指します。
■ ブランドとパーパスを守る黄金株1株に込められた想い
今回の子会社化では、発行済株式数の約99.9%を取得し、1株を黄金株として英治出版の全社員で構成する社団に残す仕組みを導入しています。それは、英治出版が生み出してきたロングセラー、ベストセラーは優秀な担当編集1人の力ではなく、従業員が主体的に関与する組織文化の力によるものという考え方に共感したためです。英治出版は出版業界でも珍しく経理や営業、編集者も全員がプロデューサーという肩書きをもち、本の企画は担当編集だけではなくプロデューサー全員の合意を得て決まるというフラットな組織文化でマネジメントされており、本の奥付にはいつもプロデューサー全員の名前が記載されています。
一方、カヤックも「何をするかよりも、誰とするか」を大切に、社員の90%以上を占めるクリエイターの集団を核に様々なコンテンツを生み出していく、組織戦略ファーストの会社です。また、社員全員が人事部に所属し、全員で「採用」「評価」「給与査定」に関わりながら、自分たちが面白く働ける組織をつくっています。
両社は「組織文化」を大切にするだけに留まらず、その企業の在り方自体が事業の成長性やブランドにも影響を及ぼしている点でも一致しています。
そのため、パーパスや社名の変更を範囲とする黄金株を英治出版の従業員に所有してもらうことが、英治出版のブランド、パーパス、組織文化を守ること、そして従業員が主体的に経営に関わる意識づけにも繋がり、組織を持続的に発展させていくことにつながると考えました。
近年、事業承継ニーズの増加等を背景に中小企業のM&Aが活発化しています。英治出版と同様に、培ってきた事業・組織が大切にされる形での承継を望む経営者・従業員は多くなっていると考えられます。今後、面白法人グループへのM&Aを推進するに際して、その企業らしさを保つ仕組みを備えること、従業員参加型のプロセスをとることは、M&A実行後の事業・組織のさらなる成長につながると考えています。
■「黄金株」の具体的なスキーム
・カヤックは創業者等から当社の普通株式5,800株(発行済株式の99.9%)を取得
・残り1株を拒否権付種類株式(商号・パーパスの変更にのみ拒否権を持つ)に転換し、当社従業員が構成・運営する一般社団法人英治出版をつなぐ会が保有
・カヤック・英治出版・一般社団法人の関係性を規定する三者間合意書※を締結
※カヤックの関係会社管理規程と整合性をとり親会社としてのガバナンスを担保
一連のスキームの具体化にあたっては、持続可能性や共存性を重視する企業への投資・経営支援を専門とする株式会社ZEBRAS AND COMPANY(本社:東京都港区麻布十番、代表取締役:田淵良敬、阿座上陽平)の助言・伴走をいただきました。
■ カヤックと英治出版の「組織の結婚式」を開催
英治出版の面白法人グループ参画に先立ち、2月22日(木)に両社の「組織の結婚式」を英治出版で開催いたしました。これは英治出版から4月に発行する『「儀式」で職場が変わる――働き方をデザインするちょっとヘンな50のアイデア』(クルシャット・オゼンチ、マーガレット・ヘイガン著、齋藤慎子訳)で紹介されている、「2つの組織の結婚式」を自分たちでも実践しようというものです。
これは両社が共に従業員参加型での組織を大切にするという価値観の一致から実現しました。
実施の目的は以下の4つの通りです。
1.「Eat your own cooking」、英治出版はもちろん同グループの仲間であるカヤックも、英治出版のつくる本をしっかり自分たちで体現していくため。
2.面白法人グループ化に至るプロセスをフロントで進めてきたメンバー以外にも、新しい「変化」と「機会」を意識付けるため。
3.それぞれ個性ある組織として、お互いの文化、一人ひとりの個性を知り、認め合う機会にするため。
4.実際の結婚式のように、いつか振り返って思い出せるような「力のある思い出」をつくるため。
今後、カヤックではM&Aを加速していく方針ですが、その会社固有の組織や文化のあり方、それをつくる社員一人ひとりの気持ちを大切にして、その会社にあったM&Aプロセスをコンテンツ的な発想で進めてまいります。
「組織の結婚式」の実際の様子はカヤックニュースをご覧ください。
(※なお、今後カヤックがM&Aする会社が全てこういった儀式を行うということではありません)
英治出版 会社概要
人・組織・社会の未来づくりを応援し、ビジネス書・社会書をはじめとする書籍の出版を行っています。それにより、人間的な経営や自律的な組織づくり、イノベーションや事業開発、ソーシャルビジネスや世界の諸課題への取り組み、個人の行動変容など、よりよい未来をつくろうとする動きやムーブメントを後押ししています。また、組織改善プログラムの共同開発、シェアスペースの運営等、本や出版の本質的価値を大切にしながら、それを生かす新たな可能性を探求しています。
設立:1999年6月22日
代表者:代表取締役 原田英治
所在地:東京都渋谷区恵比寿南1-9-12 ピトレスクビル4F
事業内容:出版事業
URL:http://www.eijipress.co.jp