2014.07.21
#退職者インタビュー No.11玉田雄以「カヤックに入って“笑わない人”から“笑う人”になった」
カヤックを旅立った元社員に現在の活動や在職時のエピソードを聞く「退職者インタビュー」。今回は、BM11メンバーとして活躍し、現在は独立し、「株式会社宙に(ちゅうに)」の代表兼Webディレクター/コンサルタントとして活動する玉田雄以です。
瞬発力勝負の仕事に惹かれてカヤックに
—— カヤックに入るまではどんなことをされていましたか?
- 玉田
- 1社目は自社サービスのネットワークエンジニアやプランナーとして、2社目ではWebディレクターとして勤務していました。2社目は大企業の受託業務が中心で、すでに管理職になりつつあったんです。でもそれが本当に僕のゴールなのかと考えた時に、やっぱり現場で作ることで勝負できる仕事をしたいと思ったんです。
—— それがカヤックならできそうだと?
- 玉田
- はい。2007年前後はBM11が大量にサービスをつくっていた頃ですね。
- その頃の僕は、1年かけて作るような大規模プロジェクトや、客先に常駐して数年かけて収益を得るような業務が中心だったので、瞬発力勝負の仕事に興味があったんです。あと鎌倉という立地も判断のポイントになりました。
—— 最初からBM11の活動が中心だったのですか。
- 玉田
- いえ、はじめはコミュニティサイト制作などのクライアントワークです。やなさんは多分、僕が手がけた大企業向け受託制作のキャリアを見て採用してくれたんだと思います。最初の2カ月間はずっとその担当だったので。
—— それが変化したのはいつ頃?
- 玉田
- 打ち合わせの道すがら、やなさんからやりたいことについて聞かれたので、HOUSECO(譲渡済み)とBM11がやりたいと伝えたんです。すぐOKが出て翌週から両方の定例に出始め、3つの業務を平行してやるようになりました。
「笑わない人」から「笑う人」への変身
—— 実際に働いてどうでした。前職との違いはありましたか。
- 玉田
- 何でも自分の手の届く感じが新鮮で居心地がいいと感じたのを覚えています。朝、鎌倉駅から若宮大路を歩いて出社して、オフィスをみんなで掃除したり、足りないものは調達する。よくあることだけど前職にはなかった部分でした。自分たちで盛り立てないと会社が回らない、そんな「会社を作る余地」が感じられて面白そうだなと感じました。
—— ご自身ヘの影響はありました?
- 玉田
- ええ、すごく。まず僕は以前「笑わない人」だと言われていたんですが、カヤックに入ってよく笑うようになったんです。学校にいたらいるだけ楽しい、行かないと面白いことを逃すかも、と思う小学生みたいに毎日が楽しくて。仕事自体は多忙極まりない状況でしたけど(笑)。
—— 玉田さんはイジられキャラだったという情報がありますが…。
- 玉田
- もちろん、最初は抵抗がありました。それまでは人と距離を置くことを処世術としていましたので。誰かと仲良くなって何かやることには抵抗がありました。でも、カヤックで真剣勝負をすると決めた以上、それでは何もできないと思ったから、自ら一歩踏み出すようにすることにしました。
—— 自分を180度変えたということですよね。それはすごい!
- 玉田
- カヤックは社内の全員が素晴らしい人たちばかりでと仲良くしたいと考える間もなく、仲良くなれる環境でした。ディレクターだから幅広い職域の人と話しますし、HOUSECOやBM11もいろんな人の集まりだし、人との接点も必然的に増えますよ。そこから段々、みんなで物をつくることに対して前向きに適応できたのではないかと考えています。
—— 歳を取ってから自分を変えるなんて、難しいことじゃないですか。
- 玉田
- そうですね。でも自分の殻を壊す作業も真剣勝負の一つだったから面白かったです。カヤックは変化を重視する会社ですが、それまでは変化を意識することもなかったし。それ以降は「どれだけ変われるか」を基準に自分を捉えるようにもなりました。
自分の殻を壊して見えてきた、新しい世界と思考
—— 仕事の内容や進め方も変わりましたか。
- 玉田
- そうですね。以前はビジネス面にあまり興味がなかったんですが、逆にカヤックでは利益や予算を追求するようにしました。予算の交渉も含めて一通り経験することで、すべてを引っくるめてものづくりをやるんだという覚悟が持てるようになった気がします。
—— 特に思い出深いプロジェクトや作品はありますか?
- 玉田
- なんだろうな。BM11に2年参加してやりきったことは力になりましたね。とにかくアイデアを出して形にしないといけないから、毎日楽しみつつ苦しんでいました。アイデアはたくさん出しても、それをどう形にするかが大変なんですよ。毎年12月までに90〜100本のサービスをリリースするのですが10月の時点でまだ30本ほど残っていた年はさすがに焦りましたね…。
—— 胃がキリキリしそうな日々ですね…。
- 玉田
- 一度立てた目標を達成することに、とにかく厳しいんです。オーソドックスなことだけど、それができてこそ得られるものもあったと思います。あともう一つ、BM11で得た変化にブレストがあります。元来そんなにアイデアを出す人間でもないと思っていたんですが、自分にとってすごく大事なものになりました。
—— それはどのように?
- 玉田
- 場数をこなすうちに「アイデアを出すこと」の仕組みがわかるようになったんです。最初のうちはブレスト参加者の意見をどうまとめようか悩んだ時期もありましたが、今はどんな場所、どんなお題でも100個アイデアを出す自信があります。
—— すごい、そこまでになるものなんですね。
- 玉田
- アイデアって、人が出したものを組み合わせる作業や、人がアイデアを出せる環境を作ってあげることが重要なんです。その「点が線に繋がる感覚」をカヤックで会得できたというか…。昔は理詰めで考えるタイプでしたが、この経験を通じて思考パターンも直感や瞬発力を重視するようになりましたね。
- 素直になることもそうです。意識して素直に意見を聞くようにしたら、完全に思考が攻め型になりました。多少危うくても今面白いと思うものにかけよう、と思うようになったんです。
—— 未知なものを掘り当てる楽しさが感じられそうです。
- 玉田
- それも僕なりの真剣勝負だったんだと思います。まあでも、受けとめてくれる会社でないと無理ですからね。事業計画の提出やなんかをすっとばして面白いと思ったら翌日から作り始めるとか、普通の会社では無理ですよ。
それぞれの道を歩く時期が来た
—— でも、昨年8月に退職されましたよね。
- 玉田
- 理由はいろいろあるんですが、一番は会社の新しい方向性と自分の感覚が違ってきたことですかね。会社が大きくなればいろんな人が増えますし、スピード感より手続きを重んじる部分も増えます。それは仕方がないことです。
—— それまでの楽しさが薄れてしまったということですか。
- 玉田
- 会社としては正しい進化です。事業の多角化や新しいビジネスに挑戦することも理解できます。ただ、ゲームって長期間かけて開発するものが大半だから、瞬発力勝負の仕事がしたくて来た私からしたら前職に逆戻りだなと。
- 昔のスタンスに戻る道もあったけど、新しい自分、変化した自分でもっと勝負したいと思ったのと、経験を活かせる場は他にもあるだろうとの考えから退職を決めたんです。
—— 会社の方向とは別な場に、玉田さんの活躍する舞台が変わったというだけなんでしょうね。
- 玉田
- そうだと思います。だから今もカヤックが好きだし、「宙に」という会社を興した理由も働きたいと思う会社が思い浮かばなかったからなんです。
—— 改めて、カヤックを客観的にご覧になっていかがですか?
- 玉田
- 経営的には安定志向なので、もっとスピード感や崖っぷち精神を持てるように、例えば、30歳定年にして別会社を作り、若いカヤック本体から仕事をもらう業態とかやってほしいですね。…いや今の規模ではもう難しいんでしょうけど、どうしてもそういう無茶なことを期待してしまうんですよね。
—— それはそれで面白そうですけどね。
- 玉田
- やはりカヤックは若い人が成長するための場だと思います。そのためには年上の人間はあまりいないほうがいい気がします。その意味での新陳代謝は必要なのかもしれません。というのは、あくまで一個人の意見ですが。
未来の可能性を広げる「多様性」をつくる仕事
—— 今のお仕事にはカヤックの経験は活きていますか?
- 玉田
- ええ。「つくる人をふやす」という経営理念がすごく好きなんです。そこで自分が何を作りたいか考えた時に、僕は多様性をつくっていきたいと思いました。例えば、未来をつくる要素は、この世のさまざまな要素の中で偶然選ばれたものにすぎないわけです。つまり、いろんな可能性があると言える。
—— なるほど。
- 玉田
- 可能性を導く多様性をつくることは人類の将来をよくするはずだから、そのお手伝いをしたいなあと。そこで今は、最新技術で何かをつくりたいと考える基礎研究や研究開発の専門家を中心に、やり方や関連知識も含めたアイデアを提案する仕事もしています。彼らの研究とWeb業界のアイデアをぶつけて化学変化を起こせれば、いろんなものが届けられるはず。在職中に得た経験を、今後はそういった形で活かしたいと思っています。
—— ありがとうございました!
カヤックでは、退職者インタビューを時々公開しています。
退職に対する考え方は、コチラをお読みください。
「カヤックがサイトで退職者を公開する理由」
http://www.kayac.com/news/2013/08/goodluck_interview