2018.07.14
#クリエイターズインタビュー No.54カヤックのゲームは“友情体験”が味わえる~新作喧嘩バトルゲーム「東京プリズン」のプロデューサーインタビュー~
カヤックの人気野球ゲーム「ぼくらの甲子園!ポケット(ぼくポケ)」の初代プロデューサー清真一朗が、新たに送り出す「東京プリズン」。近未来の東京を舞台にしたギルドバトルですが、実は「友情体験」に勝利の鍵があるのだそう。そうした制作の裏側や作品への想いを、清本人に聞いてみました。
ケンカの奥にある仲間との熱い一体感を形にする
― 「東京プリズン」は近未来の東京を舞台にしたギルドバトルだそうですね。
- 清
- はい。ユーザーは5つあるユニオン(勢力)のどこかに所属し、1シーズン約2カ月間ケンカでポイントを競います。チームは3人で、ランダムで組まれるか、もしくは友達同士でチームを組むことができます。プロデューサーとして関わった「ぼくポケ」のような、仲間との一体感や連帯による「友情体験」が味わえる、別のアプローチのゲームが出せないかと相談されたのが最初でした。
― そもそも「ぼくポケ」とはどんなゲームなのでしょう。
- 清
- ユーザーが一人の野球選手になって、他のプレイヤーを集めて9人チームでリーグ戦に出て戦い、甲子園出場や優勝をめざすゲームです。1人では試合に出られないのがポイントで、ベンチに入るメンバーは9人ですが試合で勝つには応援なども必要になるため、9人以上人数を集める必要があります。また、試合では各自に役割があり、それをこなさないと順位が上がらない変わった仕組みです。
― となると「東京プリズン」は真逆のテーマですね。
- 清
- はい、ですからかなり悩みました。スポーツはチーム戦が前提で一体感も表現しやすいのですが、それでは新たな挑戦にはならないなと。そこで、少年マンガのケンカものは仲間を大事にしますから、メンタリティは意外とスポーツにも近いと気づいたんです。「熱血・友情・勝利」のロジックも合いますしね。
― 舞台を東京に設定された理由とは?
- 清
- 私自身、舞台は身近な場所のほうが没入できるという考え方なんです。昨今多い架空の世界が舞台のファンタジーゲームと差別化する上でも、やはりリアルさがある方いいだろうと。ただ、リアルな東京だとストーリーに現実の情報が影響して目的がボヤけてしまうため、近未来の東京としてリアルすぎない没入感をつくりました。
― この絶妙さだと「ぼくポケ」オフ会のようなリアルイベントにも発展しそうですね。
- 清
- そうなるといいですね。 先日も週に1回開催している「甲子園大会」の第100回記念大会イベントがありましたが、ゲームユーザーのコミュニケーションが醸成された結果だと思うとすばらしいですよね。
ポイントは「ターン制マルチバトル」での連携
― 「ぼくポケ」ユーザーが楽しめる「東京プリズン」のポイントは?
- 清
- 今まで以上に密な連携が必要になる点です。「ぼくポケ」では1チーム9〜20人で構成されますが、「東京プリズン」では戦場に出るには人数が多すぎるので、バトルは人数を3人に減らして密度を濃くし、ユニオンでコミュニケーションを取れるようにしました。人数が少ないので、より綿密な役割分担や戦略が必要となります。この大規模ギルドバトルは他のゲームにはない要素かと思います。またユニオン内で貢献度の高いユーザーを幹部プレイヤーに位置づけ、意見や作戦を提案できる特権を付与する仕組みもあります。
― ユーザーはどのようにゲームを進めるのですか?
- 清
- まず一人用の「ストーリーモード」で操作に慣れてもらい、キャラクター育成をしてもらいます。そのあと、アリーナで3対3の「ターン制マルチバトル」の練習を重ね、慣れてきたころに抗争に参加するという流れです。「ターン制マルチバトル」とは、シミュレーションRPGと全員同時マルチプレイMMOの中間の構造です。通常のシミュレーションRPGの場合、味方の攻撃のターンに入ると味方が1人ずつ順に動くのが普通ですが、「東京プリズン」では3人同時に動けます。だからこそ呼吸を合わせ、誰が何をしたいかを知らないと攻撃がバラバラになるんですよね。
― 難易度、かなり高くないですか?
- 清
- 実際に遊べばそう難しくはありません。奥深く遊ぼうとするとキャラやスキルなども熟知する必要があるので難易度が上がりますが、基本は「移動して殴る」ですから。またゲーム中は感情を表すエモーティコンなどによる意思疎通が重要になりますが、そこがハマった時がものすごく嬉しいんです。ゲームの達成感にも繋がる大きな要素です。
― スキルというと「スキルデッキ」や「ギア」あたりが関係しますか。
- 清
- そうですね。使える能力や攻撃方法をユーザー自身が組めるのが「スキルデッキ」です。同じキャラクターでもユーザーによってスキルが異なるので、そのスキルを読んで戦う必要があります。スキルとギアは自由に組めるので、その時々でトレンドをつくると面白いでしょうね。
― やり込み要素が満載ですね。
- 清
- もうそこはつくりすぎたくらいなので(笑)、長く遊んでもらえるタイトルになったと思います。また、「ぼくポケ」の甲子園優勝チームに制作する「甲子園新聞」的なものを「東京プリズン」でもつくる予定です。ユーザーがゲームをつくる、より愛着を持てる、といった仕組みをどんどん増やしたいですね。
企画・シナリオ・ビジュアル全方向で独自性を追求した一本
― ビジュアルがクールな印象ですが、基本ターゲットはどういった層なのでしょう。
- 清
- バトル系の少年漫画が好きな30〜40代男性です。マルチプレイバトルを好む20代もそうですね。キャラクターに関しては、他の作品に多い萌え系とは違った王道感や独自性を追求した結果ですね。「巷にない、男性が好む、お笑いにはしない、クールさやバトル感がある」という漠然としたオーダーを汲み取り、社内のイラストレーターが仕上げてくれました。
― 制作中の思い出深いエピソードなどはありますか。
- 清
- 企画が固まるまでにかなり試行錯誤をしたことです。面白いか面白くないかもわからなくなったある時、思い切って全社員に評価してもらったんです。厳しい意見もありましたが、僕らが伝えたかった部分に共感してもらえる意見が多く、仲間との一体感や連携感にも評価が高かったんです。そこでようやく「イケる」という実感が生まれ、一気に進められました。聞くまでは不安もありましたが、進む方向性は間違っていないと勇気付けられたのでよかったですね。
― カヤックのゲームの個性ってどんな部分だと思いますか?
- 清
- 少なくとも僕が作るゲームについては、ユーザーに理不尽を押し付けるものが多いです。「ぼくポケ」の1人では試合ができないところもそうですよね。でもその理不尽こそが面白さを生むとも思うんです。めげずに突き進んでもらえれば必ず面白いものに出会える。そういう部分がオリジナリティな気がします。今回は「ぼくポケ」で得たものを注ぎ込んで作りました。また違った仲間との一体感や連携感を味わえるので、既存のギルドバトルに飽きた方にも楽しんでいただけると思います。僕のゲームはもちろん、カヤックのゲームを遊んだことがない方にもぜひ遊んでもらいたいです。
ちょっとしたハードルを乗り越えれば素晴らしい景色が見えてくる。清のつくるゲームは、スポーツの上達や仲間の本心を掴むような、何かを超えた時の感覚を得たときにこそ、より身近に感じるのかもしれません。ぜひ「東京プリズン」でその感覚を体験してみてください。
「東京プリズン」公式サイトはこちら:https://tokyo-prison.kayac.com
ちなみに、7月9日(月)から『東京プリズン』の公式YouTube放送「東京プリズン放送局」を開始!本放送では、最新情報などをお届けします。第2回放送は 7月19日(木) 予定。是非、ご覧ください!
「東京プリズン」公式チャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCnOQM284G1UoxwPIQF088dw
「東京プリズン放送局 #1(7月9日の放送アーカイブ)」:
https://www.youtube.com/watch?v=EnKTcya4NQU&t=1618s
清やゲーム事業部のメンバーと一緒にゲームをつくりたい!という方からのご連絡もお待ちしております。
取材・文:木村早苗