社長日記復刻リメイク版その4:カヤック流「根回し」の技術。 | 面白法人カヤック

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2021.10.12

#面白法人カヤック社長日記 No.94
社長日記復刻リメイク版その4:カヤック流「根回し」の技術。

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今回は、「根回し」というキーワードについて考えてみたいと思います。

僕も社会⼈になって20年弱。こういう基礎のビジネススキルについて、改めて考えてみるとのも意外といいことではないでしょうか。

根回し

「根回し」。この⾔葉を聞いて、みなさんはどんな印象をもたれるでしょうか。余りいい印象はない⽅も多いかもしれませんね。会議の前に⼀⽣懸命、関係各所に事前に交渉や説得を試みるという、何だか正々堂々としておらず、政治的に⾯倒くさそうな話に聞こえます。

僕なんかもそう思っていたので、だったらもうその会議の場でドンとお披露⽬してその場で⼀気に公平に決めちゃえばいいじゃないか、そのように考えたくなる。 とかくカヤックのようなオープンであることを最⼤に重視している会社では、なおさらです。

しかしながら、根回しせずにプロジェクトを進めて、上の⽅に「俺は聞いてないぞ」と⾔われてしまい、うまくそのプロジェクトをまわせなくなってしまった・・。 そんな経験をビジネスマンであればだれしもが⼀度ぐらいはしているのではないでしょうか。

俺は聞いてないぞ

「俺は聞いてないぞ」という発⾔。何だか感情的で、そんなことぐらいでへそ曲げないでよ・・って⾔いたくなりますよね。

本当にいい提案やいいプロジェクトなら、事前に聞いていようがなかろうがその場で聞いても賛成してくださいよ・・そう正論で戦いたくなりますよね。

ところが、逆の立場も体験して、なるほどこういう時に言いたくなるのかということがわかるようになりました。

そもそも「俺は聞いてないぞ」と誰かに⾔われてしまう事態になるというのは、 どういう時なのでしょうか。

そういう事態になる時というのは、実は、逆説的ではありますが、その提案やそのプロジェクトが、意外と誰が聞いてもそれは良いことだというものを提案するときほど多いのではないかと思っています。というのも、「これは上司が⾸を縦 にふるかどうかわからないぞ…」というような判断の難しいものは、実は事前に意識しなくても根回しをしてしまう。反対されそうなものはさすがに事前に対策を考えがちなのです。

正論だし、通るだろうというものが通らない

ところが、「これはどうやっても正論だし、通るだろう」というものほど、意外と根回しを怠りがちな状況であることが多いのではないでしょうか。

だからこそ、突然ぶつけて、それで「俺は聞いてないぞ」となってしまうのです。

しかし、そういう時の「俺は聞いてないぞ」は、実は単に「聞いてないぞ」という感情的なものだけではない何かを含んでいるのです。

というのも、「だれが聞いても正論だし通るだろう」という提案やプロジェクトは、実は⾃分だけが考えている提案やプロジェクトではないことが多い。過去にそれを考えていた⼈もいれば、その直接の提案先の上司も⽇ごろから課題に思ってい ることだったりするケースが多い。そうなると、「それ事前に⾔ってくれれば、過去の経験やもっといいプラスアルファの案やアドバイスを出せたのに」と思ってしまう。誰も思いついたこともないアイデアであれば聞く⽿も持ちますが、既に上司 の中では過去に検討したことのある提案やプロジェクトを、上司が考えているレベ ルよりも低い形で進めようとしているのですから、「ちょっと待った」と⾔いたくなる。

しかも、提案レベルが想像を超えてない上に、ビジネスマンとしての基本的スキ ルである根回しもできてなかったりすると、「この部下にこのプロジェクトを任せ るには⼒量不⾜だ」と感じてしまうのも仕⽅がない。プロジェクトをストップさせ るだけの材料はそろっています。それゆえ「俺は聞いてないぞ」という、⼀⾒横暴ともとれることを理由に、その提案やプロジェクトは葬り去られてしまうのです。

・・・というケースを考えた場合、我々はひとつの教訓を得ることができます。

それは、「これは誰が聞いてもいい提案だしいいことだ」と思うことほど、周囲 に、上司に、先に根回しすることを意識した⽅がいい、ということなのではないかと思うのです。

しかも、そういった誰もが反対しなそうな良い提案やプロジェクトであればあるほど、様々な⼈が様々な意⾒や経験をもっていたりするものです。根回しの過程で、多くの⼈からアドバイスをもらい、それを反映していくことで、⾃分だけで考えている以上のものになる。

すなわち 「根回し」とは、単に事前に説得するための⾏動ではなく、多くの⼈の意⾒をヒアリングしながら当初の案をよりブラッシュアップしていくもの。そう思えば、俄然楽しい作業になります。 根回しという言葉の再定義とも言えます。

以上、今回はシンプルではありましたが、たまにはこういう話も良いのではないかということで。

――

2021年の柳澤からの解説:
今回は、前回と同じ趣旨で、過去の社長日記のリメイク版の第4弾です。合計第6弾まである予定です。(*注記)

この記事を書いたのが2014年ですから、今から7年前。40歳にして社会人として根回しの重要性に気づくという随分遅咲きな気もしますが、これを書いた2年前ぐらいから、ちょうど鎌倉で地域の仕事を始めたことが影響があるのではないかと思います。

ビジネスにおいては、合理的でさえあれば、多少根回しをすっ飛ばしても、正しい判断が行われるケースもありますが、地域の仕事は、仮に論理的に正しくても、重鎮から「俺は聞いてない」と言われるだけで進まなくなってしまうプロジェクトがどれだけあることか・・・それが身に染み始めた時だからこそ、これを書いたのだろうと思います。

地域の仕事をさせてもらう中で、本当に大事なのは根回しそのものではなく、相手にプロジェクトを自分ごと化してもらうこと、応援団になってもらうことだという気づきもありました。

ビジネスをしていく上では基礎的なことではありますが、改めて選んでみました。

*注記:
ところで、この社長日記ですが、2015年からカヤックサイトで連載を始め、月に最低1回という形で続けています。実はそれ以前は、日経ビジネスオンラインや日経PCオンラインなどの媒体でなんと2006年から続けておりました。つまり、足掛け15年も社長日記を続けていることになります。しかも、今でこそ月1回から2回ペースですが、日経に連載していた頃の僕は毎週書いていました。8年間一度も休むことなく。よくできたなと思います。

そして、その過去8年分の記事は、以前までアーカイブがあり残されていたのですが、昨年、日経BPさんと日本経済新聞出版社さんの経営統合に伴って、日経さんのサイトからは見られなくなってしまいました。

古い記事は、自分の成長の変遷を見るには良いものの、恥ずかしい内容のものばかりなので、これはこれで好都合なのですが、日経BPさんのご厚意で、過去のアーカイブをファイルでいただきました。

そこで、せっかくなので、その中からいくつかを多少リメイクして解説付きで、お出ししたいと思います。セレクトしたのは合計6本。これから6回にわたってリメイク版を紹介して行きたいと思います。

(原文は日経ビジネスオンライン2014年1⽉29⽇掲載。日経BPの了承を得て掲載しています)

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