2022.02.16
#面白法人カヤック社長日記 No.100「地域資本主義サロン」まちづくりの実地見学レポートをお届けします。
今回の社長日記は、僕がホストを務めるオンラインサロン「地域資本主義サロン」のレポート寄稿形式でお届けします。
「地域資本主義サロン」をスタートして2年。コロナ禍ではありますが、落ち着いたら、こうしたフィールドワークを再開していきたいと思います。受入れをご検討いただける自治体や地域の方がおられましたら、どうぞご連絡ください。それでは、どうぞ。
ちいき資本主義事業部の宮本です。やなさわがホストを務める「地域資本主義サロン」では、まちづくりの最先端で活躍する人たちを毎月ゲストにお招きし、まちづくりに取り組む/関心のあるメンバーとともに、事例やノウハウを学び、共有し、実践しています。
今年から「社長と一緒に面白い地域をめぐる企画」を始めました。サロンの会員のうち希望者がやなさわの出張に同行し、まちづくりの現場を訪ねるというものです。記念すべき第1回の訪問先は新潟県上越市。やなさわがFacebookグループで参加者を募集したところ、あっという間に参加メンバーが定員に達しました。
参加者は、児童施設や医療学校の役員、シェアサイクル事業のスタートアップのCEO、地方創生関連のスタートアップのCEO、造園デザイナー、元行政職員の若き起業家、そしてやなさわと私。起業経験があり、それぞれの立場で地方創生やまちづくりに関わっている方が目立ちました。
さて、1月某日、雪が舞う中まずは上越市役所へ。会場となる会議室には約30人の職員の方が集まっていました。上越市役所では「まちづくり職員トーク」と題し、SDGs×まちづくりの勉強会を行っているそうです。今回はやなさわが講師となり「“地域資本主義”によるまちづくり」をテーマに、カヤックの事例に始まり、地域資本主義や地域コミュニティ通貨「まちのコイン」の取り組みについて話しました。
ちなみに地域資本主義とは、従来の経済指標では計り切れない人の繋がりや自然・文化も資本と捉えて、人の幸せや地域の持続可能な成長を目指す考え方です。地域資本主義に関するカヤックの取り組みを、上越市のまちづくりや政策の取り組みに活かしていただくことがこの勉強会の狙いでした。
講演の後は質疑応答タイム。「まちづくりにおいて行政と民間の方がうまく関わるには?」「地域の面白さやクリエイティビティを測定するには?」といった質問が飛び、やなさわが答えていきます。グループごとの感想シェアタイムでは、「この勉強会に参加するとまちのコインをもらえて、一定量貯まると希望の部署に異動できる」というユニークなアイディアが出て、会場は盛り上がりました。
講演終了後は上越市の中心・高田エリアに移動し、サロンのメンバーで懇親会を行いました。それぞれが取り組む事業、まちづくりの難しさ、今年の抱負と話題はどんどん広がります。初対面のメンバー同士が多かったのですが、おいしい魚介や日本酒に舌鼓を打ちながら、打ち解けあうことができました。(普段より饒舌なやなさわの姿も私にとっては新鮮でした!)
翌朝は上越市役所の藤村さん、新井さん、秋山さんに同行いただき、高田エリアの視察を開始。ここで簡単に上越市の説明を。上越市は人口約19万人、古くから交通の要衝として栄え、江戸時代に高田城が築かれ城下町が形成されていきます。地の利を活かして製造業が発展する一方、人口は減少傾向にあり、とくに中心市街地の空洞化が課題なのだそう。
高田のまちの特徴は木製のアーケード「雁木(がんぎ)」のある町家が多いこと。これは個人宅の一部を屋根付きの歩道として公共空間に提供するもので、共助の文化の象徴でもあります。雪国ならではの風情のある街並みに、シャッターを押す手が止まりません。
今回、主にガイドしてくださった藤村さんの説明が流暢で、歴史や文化への造詣がとにかく深い!「まるで『ブラタモリ』みたい」「個人旅行だとここまでまちを知ることはできない、最高」と賞賛の嵐でした。
明治時代の町家を再生した施設「町家交流館 高田小町」で高田のまちについてひととおり説明いただいた後は、日本最古級といわれる1911年築の映画館「高田世界館」へ。和風と洋風のかけ合わせである「擬洋風建築」の建物で、館内では映写機や看板、椅子や時計といった古い道具がそのまま使われ、レトロな雰囲気がたまりません。「ここでブレストをやったら面白そう」「レコードを聞くイベントもいいな」とどんどんアイディアが膨らみます。
続いては江戸時代の建物を改修して一般公開している「旧今井染物屋」、レストランとして活用されている「旧師団長官舎」をめぐり、江戸から明治の歴史をたっぷり体感しました。
今回、まちづくりを学ぶ地域資本主義サロンとして実現したかったのが、まちづくりのキーパーソンに会うことでした。そこで紹介いただいたのが町家のリノベーションを推進する「キナイヤプロジェクト」の代表 打田亮介さん。雁木の町家の減少を食い止め、中心市街地の空き家を減らしたい、高田のまちに関心を持ってもらいたいという思いから、交流イベントやワークショップなどの場づくり、情報発信を行っています。訪れたのは、シェアキッチンやシェアオフィス、コーヒーショップが集まる町家複合施設「兎に角」、ここは打田さんの活動拠点でもあります。北海道八雲町から移住した打田さんが、行政とも協働し、仲間とともにまちづくりを推進してきたというお話に、皆興味深そうに耳を傾けていました。
旅の最後は、ランチを食べながら感想を話し合いました。今回は経営者が多かったためか「自分が関わるプロジェクトに対する刺激をもらえた」「上越市と何か一緒にできそうだ」という声が上がり、自分のビジネスに繋がりそうという手ごたえが感じられた様子。また、「まちのポテンシャルの高さがわかった」という感想に対し、「今まで取り組んできた中心市街地の活性化に対し、面白いと言ってもらえたことが自信になった」と藤村さん。行政と民間、立場は違えど、まちづくりに関わる人同士が集まり対話したことが、お互いに刺激になったようです。
私自身、移住マッチングサービス「SMOUT」を運営するなかで、「移住したくなる地域の特徴ってなんだろう」と考え続けていますが、今回の訪問でいくつかの仮説が生まれました。
・行政と民間が同じ問題意識でまちづくりに取り組んでいるまち
・歴史を大事にしながらも未来を向いているまち
・見どころが集約していて徒歩でも充分めぐれるまち
高田地区では、地域の貴重な文化である雁木の町家を守るために、官民それぞれがプロジェクトを推進し続けています。また「コンパクトシティ」としてのまちづくりも進んでおり、車がなくてもしっかりとまち歩きを楽しめました。車が前提の地域が多い中、上越市のようなまちは希少で、首都圏の方の移住先として需要があるのではないかと感じました。
地域資本主義サロンは、オンラインでまちづくりの実践者のお話を聞き、参加者同士でブレストをしてきました。今回、はじめてお互いが実際に顔を突き合わせることで、一気に距離が縮まり、深い話ができ仲良くなれた気がします。なにより、現地の方の話を聞きながらまちづくりの現場を歩くことで、そのまちを好きになれることを肌で感じた2日間でした。
さて、やなさわと一緒に全国の面白い町をめぐるこの企画は、情勢を見ながらではありますが、継続する予定です。地域資本主義サロンに入会して、一緒にディープに地域をめぐる体験をしてみませんか? 学生の方はなんと永年入会無料! 皆さまのご入会をお待ちしています。
また、やなさわへの講演依頼もお待ちしております! サロン会員と一緒に訪問しますので、ぜひまちづくりに関する意見を交換をさせてください。
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