上場企業の社長の通信簿を考えてみる【 面白法人が考える上場の話#06 】 | 面白法人カヤック

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2023.07.14

#面白法人カヤック社長日記 No.121
上場企業の社長の通信簿を考えてみる【 面白法人が考える上場の話#06 】

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年初の社長日記「2023年の社長日記の決意。 ひとつのテーマで12ヶ月続けます。」で宣言したとおり、2023年の社長日記は、1年を通して「上場」というひとつのテーマを考えていきます。

上半期の6月までは、上場する前に考えておきたいトピックを取り上げてきました。この7月からは上場後について書いていきます。1月の記事でも伝えましたが、前半(上期)部分は、どちらかというと上場を目指す起業家の参考になるようなことを意識して書きましたが、ここからは幅広く上場企業というものについて考察してみたいと思います。上場企業に勤める社員の方にも、自分の職場がどういうメカニズムで動いているのかを考えるきっかけになればと思っています。

7月は「上場企業の社長」という職業について書いていきます。

上場企業の社長はどうしたら称賛を得られるか。

世の中にはたくさんの職業がありますが、その職業ごと、その世界ごとに称賛される価値観というものがあります。たとえば、サッカー選手であれば、プロになって世界のプロリーグで活躍し、ワールドカップで活躍すると、称賛を得られます。

では、上場企業の社長はどういう振る舞いや実績が称賛されるのでしょうか。

これはシンプルに、「投資家からお金を集めて増やすこと」、つまり「資本を成長させる」ことです。

資本主義というのは成長主義とも言い換えられますから、資本を増やすことに長けた人が素晴らしい経営者と言われます。

もちろん、誰かに称賛されたいというだけの理由で経営をしているわけではありません、他者の評価に自身の成功を委ねるよりは、自分で自分の人生の成功を定義した方がより充実した人生を送ることができます。ですが、期待をされて投資家からお金を預かっているので、その期待に答えようと思うということは称賛を得るために動くのと同じ動きだと考えます。

たとえば、登山家に、なぜ山を登るのか?という問いを投げたら、「そこに山があるから」と返ってくるそうです。これと同じように、なぜ資本を増やす必要があるのか?と言われたら「そこに資本があるから」と疑問をもたずにやりきるものなのかもしれません。だとしたら、そういう職能によって、そういう体つきにしていく必要があります。

そして、登山家なら、高い山を制覇したら次はもっと高い山に挑みたくなる。これと同様に、上場企業の社長は、1つの目標をクリアしたらまた次に挑む、この姿勢が望まれています。ここで重要なのは、高い山や高い目標を達成することがゴールなのではなく、高い目標を達成する過程で成長することが人生のゴールだと考える。この姿勢が求められます。でないと、高い山や目標を達成した後に、また次の目標に向かう理由が見当たりませんし行きづまってしまいます。

そのように考えると、上場企業の社長も登山家が命をかけて山に登るように、ある意味、生命をかけて資本を増やしていきます。

起業家と経営者の違い

ところで、起業家と経営者の違いはなんでしょうか。僕はこのように考えています。起業家は0から1を生み出す人であり、経営者は100を1000に伸ばすことができる人。

どちらも会社上の肩書は代表取締役とか社長と呼ばれますが、性質は違うものです。

イメージで語るなら、起業家は、0−1を生み出すわけですから、社会を変革しようという強い思いがある、どちらかといえば直感的な発想から始まり、情熱が必要です。これに対して経営者は、必ずしも社会に対して変革してやろうという思いがなくても、しっかりと仕組み化をして誰が取り組んでも事業が伸ばせるようにしていく、どちらかというと論理的な思考と行動が求められます。

世の中には連続起業家という職業の人もいます、これは0−1を生み出すことを得意として、伸ばすところは別の経営者にバトンタッチすることで自分の価値を最大化します。

あるいはプロ経営者という職業の人もいます。経営者としてその会社に雇われて会社を大きくしていく役割を担います。

創業者はみな起業家ではありますが、ある時点から経営者の素養とスキルも持っていないと、会社を大きくすることができません。

そして、上場市場においては、常に企業は成長し続けることを期待されています。つまり、その意味では上場企業の代表は、経営者としての職能の側面の方が、より強く問われるということになります。

著名な経営者に見る、上場後に企業を成長させられる社長の素養

経営者といってもそのタイプはさまざまです。

たとえば、ユニクロの柳井さんを勝手に分析してみます。2代目ということもあったので、1代目の創業者ほどの起業家マインドは必要なかったかもしれませんが、家業を大きくチェンジしてユニクロという新規の事業を立ち上げたという意味では、当然起業家でもいらっしゃいます。そのうえで、ユニクロという事業で、会社を大きくして来られたので、その後は、ずっと長いこと経営者として成長し続けているということなのだろうと思います。

あるいは、ソフトバンクの孫さんも勝手に分析してみちゃいます。孫さんは若い頃から自分の生み出した事業を売却したり、次々と事業を生み出していらっしゃるので、間違いなく0−1が得意な起業家です。その上で、今はあれだけの巨大な会社に育っていますので、当然経営者でもいらっしゃいます。ですが、その手法としてはM&Aを繰り返しながら大きくなってきているので、起業家と経営者という側面に加えてまた別の職能である投資家という側面も色濃く出ていらっしゃる経営者なんだろうと思います。

このように考えると、ユニクロのように単一の事業で成長し続けられるようなことができたら幸運ですが、そうでないなら、経営者でありながら、時に起業家のように新たな市場を開拓したり、時に投資家の顔としてM&Aを繰り返したりしながら、成長させていかなければなりません。

つまり、当初描いていた社会課題を解決する事業がしっかりと成長し、世界をよりよくすることができた。その結果もうこれ以上事業は伸びない、この会社はこれ以上成長しません。ってわけにはいきません。それが上場企業のルールであることは前述したとおりです。

この時代における上場企業の経営者のとしての評価軸

ただ、一方で、上場企業のルールがそうだとしても、世界をよりよくするためには、資本を増やすことが目的ではなく、その過程でなにを学びどう成長していくか、どう社会に貢献していくか、それが目的ですから、資本を増やすことは目的ではなく、手段です。各会社ごとに世界をよりよくするという理念があり、その目的のための手段が資本を増やしていくことです。手段と目的を逆転させることは、世界にとってもよくないですし、自分を鼓舞するための原動力としても、世界のためにと考えた方が永続的に頑張れる気がします。

上場企業が成長し、経済を引っ張っていく、これ自体が世界をより良くしていくことなんだ。そんな自負を、上場企業自身が強く感じていた時代がありました。ですが、今それだけでは世界がよりよくなっていきません。富の格差は広がり、地球環境の汚染が進んでいます。

であれば、上場市場の経営者が称賛されるルール、経営者の成績表とも言える部分を少し変えていく必要があるでしょうし、社会からもそれが求められている時代だろうと思います。ESG投資などはその最たる流れだろうと思います。

既存の称賛されるべき指標、売上や利益、時価総額などといったことに追加して、同じぐらい大事な指標を何か足したいところです。でもこれが、難しいのです。

既存の価値観でどっぷりと経営してきている僕らからは利益以上に大切なことがなかなか思いつきません。でも、考えていきたいテーマです。

今年の2月の社長日記で、自社の理念に対する指標(KPI)つまり理念どおり経営ができているかを見ていく各会社ごとの独自の指標があったほうがよいという話をしましたが、これは各社違うものを設定する必要があります。全社共通で持てる、利益に匹敵する指標を考えられないか。これは1社でできるものではなく、政府、上場企業、証券会社、証券取引所、株主の皆さん、すべての協力で考えていく必要があるだろうと思います。

余談。

ちなみに、ここからは、今回のテーマとは別の余談です。

冒頭で称賛というキーワードを出しましたが、まちづくり事業を始めて、ふと疑問に思ったことがあります。全国の自治体の首長(市長などのこと)が、賞賛されるポイントはどこなのでしょうか。つまり市民に最も期待されていることは何でしょうか。

そんな疑問を何人かの首長にぶつけてみたことがあります。「どういう首長が素晴らしいと世の中的に称賛されるのですか?」これが意外とはっきりとした回答が返ってこないのです。

たとえば、社会福祉などが非常に充実したまちにしたら、素晴らしい首長と言われるのでしょうか。あるいは教育を充実させたら素晴らしい首長と褒められるのでしょうか。

経済価値一辺倒の我々の民間企業のような観点からいくと、そういったこと、何をするにもお金がかかるわけですから、その自治体の税収をあげたら素晴らしい首長だ褒められてもいいのではないかと思いますが、どうやらそんなに単純なことでもない。まちづくりにおいては必ずしも経済的価値だけでは測れない価値があります。

そもそも多種多様な価値観がまちづくりにおいては存在するのです。

そこで自分なりに、これだと思うのは、住民やそのまちに関わる人(関係人口)の数なのだろうと思います。おそらくどのまちも活性化していくうえでは人口が減ってはどうにもならない。だから、「その首長になってからそのまちは、定住・関係人口が増え続けた」それは十分に賞賛に値する。だからこそ、そのお手伝いをするために、我々のまちづくり事業部はSMOUTという地域と関わりたい人や移住希望者と地域をマッチングするサービスを最初に展開することにしました。
ただ、人口を増やしたという指標だと、一般の人にわかりやすい称賛の指標じゃないということなんだろうと思います。首長同士では手腕として認められても、市民からの称賛は得難い。だから時にパフォーマンスだけをアピールした首長が目立ったりするのだろうと思います。政治家という職業は、つくづく難しい職業だなと思います。

ちなみに、職能とその職能に期待されている指標ということを政治家に置き換えて考えてみましたが、そもそも指標化して目標を立てるということ自体が、経営者の思考なのかもしれません。

最後にちょっと話が散漫になりましたが、今回は以上です。

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