2018.11.30
#面白法人カヤック社長日記 No.48「幸福学」を学んで初めて言語化できました!なぜ僕らは、面白法人というキャッチコピーを選択したのか。
先日、幸福学研究の第一人者である慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司さんとの対談イベントを鎌倉のお寺で行いました。
幸せに対する関心は、年々高まり、研究論文もどんどん増えているようです。僕の探求するテーマである鎌倉資本主義も「豊かさの再定義」と捉えていますので、似たところがあるかもしれません。
そんな思いもあって、楽しみにしていた対談でしたが、自分にとって予想以上に有意義な対談となりました。というのも、今まで言語化していなかった面白法人に込められた思いに気づくことができたからです。
今回の社長日記では、その気づきについてシェアしたいと思います。
前野先生は、人の幸せを科学的に解明するという新たな学問領域を開拓されています。対談では、著書 『幸せのメカニズム』に書かれていることをわかりやすく解説いただきました。ここで、それを紹介します。
まず研究における前提は、人の幸せというものはあくまで主観的であるということです。そのため、アンケートに沿って、自己申告により幸せを測ります。そして、どのような要因が幸せに関係があるのか、統計的に見ていくというアプローチです。
前野先生は、幸福度の国別比較は意味がないのではないかということをおっしゃっていました。先進国中、日本人が一番幸福度が低いといったよくある比較です。日本人は農耕民族であり、謙虚な性質の人が多いため、どうしても低めの点数をつけるそうです。むしろそれは美徳でもあり、強みとも捉えられるのではないかと。確かに。納得。
そして、そのような様々な統計をとった結果、前野先生は、幸せになるための4つの因子を発見します。
それは、下記のような考え方をする人は幸せになりやすいという発見です。
1:とにかくやってみようと思える
2:ありがとうが多い
3:なんとかなると思える
4:自分らしく、ありのままに生きる
なるほど。確かにその通りだと思います。何らかやってみようと常に思いついたことを行動に移している人は毎日にワクワクして楽しそうですし、いろんなことに感謝していれば幸せになりやすい気がします。そして未来のことを心配しすぎない人は幸せになりやすいし、自分を偽っていたり、常に人の目を気にしていては、なかなか幸せになれなそうです。
よくよく聞くと当たり前のことです。
そしてこの話を聞いて、はっと思ったのです。
実はこの上記の4つとも、面白法人というキャッチコピーに込めた思いである「面白く働くため」に、カヤックが最も大切にしている文化そのものだなと。
カヤックに中途で入社した社員が口を揃えて言うことがあります。それは業務中に交わされる「ありがとう」が非常に多いと。確かに、時には過剰だと思われるぐらい「ありがとう」を言います。僕は、これを文化にしたいと思ってきました。そのぐらい「ありがとう」という言葉には、自分を変えて、その結果として、周囲をより良くしていく力があるからです。
そして、とにかくやってみようと思うためには、やりたいことを思いつくことが先決です。やりたいことがないという人の大半は、そもそも思いつかないからです。やりたいことを見つけるために、ブレストを最大のトレーニングとして用いてきました。それは、会社の文化をつくるということでもあります。そして、ブレスト体質になると、なぜか体質がポジティブになっちゃうので、なんとかなると思えるような体質になります。「アイデアいっぱいの人は深刻化しない」これもカヤックが大切にしているキーワードです。
そして、最後のありのままに生きる。ブレストを通じて、自然とヒエラルキーがなくなるというのもありますが、加えて、クリエイターという職種しかいない組織にすることによって、各自が本当に自分のつくりたいものをつくっているだけで成り立つ会社にしたいと思いました。その結果、たとえ社会で少しくらい生きづらい人でも、カヤックでは、ありのままで働いている人がたくさんいるように思います。(でも一方で、その偏った組織ゆえ、合わない人が出てくるのがトレードオフです)
・・・と、あれ? このように見ていくと、面白法人と名づけましたが、実は幸せ法人というネーミングでもよかったんではないかという問いが浮かんできました。
対談しながら僕は考えたのです。なぜ面白法人という言葉を選んだのか。
それは、僕にとっては、幸せという言葉の響きが少し狭く聞こえたからです。
幸せなときも、不幸せな時も、面白がれる強さを持つ。そういう意味では面白いことこそ最強なのではないかと。だから面白法人にしました。
そして、これは実は、前野さんも対談の冒頭でおっしゃっていました。
よく人は「幸せ」という言葉を聞くと、お花畑でのんびり寝そべって、平穏無事に暮らすイメージを持つと。でも実際、幸福学においては、その状態を長く続けたら退屈になってしまうし、それはそれで幸せ度が下がると。いろんなことが起きて、やってみよう! とならなければ、幸せ度は上がらないのだと。
なので本当は「幸せ」の方が、「面白」よりも広い意味を持っているのだということです。
言葉のチョイスはすごく重要で、僕は、言葉が世界をつくると思っていますが、なぜ自分は面白法人というコピーを選んだのか、納得した瞬間でした。
そして、さらに続きがあります。
前野先生の専門分野は、上記のように、考え方と幸せ度の因果関係を調べることですが、世の中には、別の研究もあります。たとえば、睡眠の多い人は幸せ度が高いとか、そういう物理的な行動に対する研究。あるいは、川の近くに住んでいる人は幸せ度が高いなんて研究もあるそうです。
そこで、ハッとまた気づかされました。僕らがなぜ鎌倉を選んでいるのかです。
おそらく、海と山と川の近くに住んでいる人なら、直感的にわかっていることです。人は自然の中にいると幸せな気分が高まる。これは統計学で解明するまでもなく、住んでいる人が口を揃えて言うので、きっとそうなのではないかと思います。考えてみれば、僕らが本社を置く鎌倉には、海と山があります。そこが良いと僕は思っています。でも、それだけならこのIT全盛の時代、もっと田舎でもいいかもしれない。もっと大自然があるところがあるかもしれない。でもなぜ鎌倉を選択したのか。それは東京から一時間足らずという程よい距離感にあります。お花畑で寝そべることが面白いとは決して思えない。東京のヒリヒリしたギラギラしたところも面白い。けれども、豊かな環境に身を置く幸せも大事にしたい。それゆえの選択ではないかと思うのです。
考えてみれば、地域(鎌倉)資本主義というのも、その最たるキーワードです。欲望の資本主義とも揶揄される資本主義の面白さは否定しない。一方で、地域とのゆったりした流れの中に、何かの幸せのヒントがある。そのあたりを探る最適な場所として、そしてそれを世界に発信する拠点として、鎌倉を選択したのだなと思いました。
以上が今回の対談で気づいたことです。
ちなみに前野先生も何十年も前から鎌倉に住みたいと思っていたそうです。ただ通勤時間が長くなるので移住は実現していないということ。幸福学の先生だけに、ここにもヒントがありそうです。通勤時間の長さに応じて、人の幸せ度は変わる。いずれ誰かが研究成果を出してくれるかもしれません。(すでにあるかも・・・)
カヤックでも、鎌倉住宅手当を出し、職住近接を推奨するのはそのためです。
そんなことが書かれた新著『鎌倉資本主義』、本日発売です。
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