「予算」についての考え方をまとめてみました。 | 面白法人カヤック

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2021.12.15

#面白法人カヤック社長日記 No.97
「予算」についての考え方をまとめてみました。

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先月、IRでもお伝えしたように、2021年度通期業績予想を上方修正しました。上場してから期初予算を修正したのは、これで4度目となります。(2018年・2019年は下方修正、2020年・2021年は上方修正)

そこで今回の社長日記では、カヤックという会社における「予算」についての考え方を整理しました。

1:期初予算は必ず発信します。

まず前提として、経営力が上がるということは、予算策定力が高くなることだと考えています。経営力が上がっていけば予算の精度が増しますし、長期的な先々の予算まで立てることができるようになる。シンプルに言って、そういうことなのだろうと思います。

もちろんビジネスの種類によっては、そもそも長期的な業績まで予想しにくい業界もあります。ですが、少なくとも同じ業界の中で比較するなら、経営力が高い会社ほど予算策定能力が高くなるはずだと考えています。

なぜなら、予算を計画し、その通りに実行できるかどうかは、あらゆる外部環境や内部環境において起こりうる自体を想定し、それに対して打ち手を用意できているとも言えるからです。

ちなみに、上場審査においては、予算通りに事業計画を進められているかどうかを証券会社から厳密にチェックされます。それは、投資家に約束した業績予想通りに経営を遂行する能力が一定基準に達しているかどうかを見られる期間だからだろうと思います。実際に上場すると、多くの株主からお金を預かるわけですから、計画を守れない会社にその責任は託せない、と言われても仕方がない。

一方で、企業を経営する側の論理からすると、目の前に新たな事業チャンスがあれば、期の途中で予算を変えてでも、投資した方が将来的にはいいことがある、というようなケースもあります。そんな時は、この審査でのチェックが窮屈に感じられることもあります。ですが、重要なのは計画通りできるかどうかなのだと理解して臨んだ方が良い。むしろ上場してからの方が、期初になかった計画でも将来的に事業が伸びるチャンスにつながるのなら、たとえ期初予算を変えても、きちんと説明責任を果たせるならその方が市場に歓迎されることもあると考えています。

・・・と、そのような考え方をベースに持っているので、まずは株主の皆様にお金を投資していただく以上、予算そのものを発信しないという選択は取らないというのがカヤックの方針の根っこにあります。

過去にはゲームの市場環境が読みにくく、期初予算を発信しない方針をとっている同業他社もありましたし、直近ではコロナという想定外の外部要因によって、発信しない方針に切り替えた会社もありました。ですが、カヤックでは期初予算の発信は毎年し続けています。

2:中期計画において売上&利益の数字は明確にしない。

次に、予算の期間についてはどうでしょうか。直近1年の予算だけではなく、中期計画などについては、発表しないというのが現状のカヤックの方針です。

その理由は、数年先の計画を考える上で、現状の事業からのボトムアップの積み上げで考えては、なんだかこぢんまりまとまりすぎるのが目に見えています、カヤックはまだまだベンチャーですから、予定調和すぎるのもワクワクがありません。一方で、現状から相当乖離した数字をどかんと掲げて、それに達する方法を無理やり後付けに近い形で考え、そうすることで成長を実現するという方法もある。ただプロセスとブランドを大切にするカヤックでは、その方法では却って企業価値を下げてしまうことになると考えています。(ちなみに、明確な売上・利益といった数字ではなくても、この領域にしっかりと投資をしていきます、といったような数年先の方針、あるいはそれ以外の数字目標といった中期計画は、今後は出していきたいとは思っています)

3:予算の立て方のタイプについて。

では、その期初予算はどういう性質のものなのか? ということを解説したいと思います。予算の立て方には、個人においても会社においても必ずくせがあります。

たとえば、手堅い数字を掲げて、大幅に超えることをよしとする前提で立ててくるタイプ。あるいは、明らかに届かないような予算を立てて、それに向けて頑張るタイプ。これはみなさんの周囲を見てもわかってもらえるのではないかと思います。

カヤック社内で事業部長を見渡しても、ほんとに両方のタイプがいます。経営者から見ると、手堅い人は毎回確実に達成してくるものの、だったら、もっと高い目標を持てば良いのにと背中を押したくなる気持ちが出てきます。一方で、常に高い予算を立てる人は、未達になる傾向も高く、やきもきしますが、高い目標を立てたからこそ結果としてここまで引き上がったんですよ、もし目標が低ければ、もっと低い結果にしかなりませんよ・・・というようなことを言います。

一番いいのは、自分の実力よりちょっとだけ高い目標を掲げ、そのおかげで自分の成長が促され、結果としてぴったり達成する。これが理想ですが。どちらかのタイプが必ず予算には表れるので、それが不思議なところです。

そしてカヤックでは、この一番いいタイプを目指しています。ですので、上場してから過去7年間出してきた予算は、ちょっと少しストレッチ気味だけども、ぴったり達成するものを出そう。そう思って出してきました。そのように僕たちの数字というものをご理解いただければと思います。

4:その年ごとの予算性質について。

ちょっとストレッチ気味だけども、ぴったり達成する数字を出そう。それが基本方針ではあるのですが、それでも毎年そのストレッチ具合がちょっと違うというのも事実です。例えば、2018年と2019年はゲームが大ハズレして下方修正しましたので、2020年にはどうしても外せない年となりました、ですので、この年はストレッチ具合をかなり下げました。など。そのような強弱があるのは事実です。ただ、そういった強弱も含めて、そのニュアンスをも期初の決算説明資料に入れていこうというのがカヤックの方針のひとつですし、今後もそうしていくつもりです。

5:ワンセグメントである理由。

改めて、根底にある思いは、できる限りこちらの状況を正しく伝え、少なくとも約束したことは守る。当たり前ですが、これが基本の方針です。ただ、カヤックでは複数のサービスを行なっており、サービスごとの売上は公開しているものの、それぞれの利益までは公開していません。つまり、ひとつのセグメントとして利益は合算して公開しております。

ここは、基本方針と若干矛盾する部分でもあるのですが、そもそも企業規模に対してここまで多くのサービスを運営しているのは、カヤックがクリエイターファーストの会社であるからです。一緒に働く仲間がやりたいというアイデアを中心に様々なサービスや事業が生まれてきます。その結果、どうしても複雑になる。それを経営していく上で重要なことはいくつかありますが、そのひとつが、状況を見て迅速に投資配分を変えたり、人的リソースを異動したりといったことです。そのため、期初に立てたサービスごとの予算が期中に変わることもよくあります。

そうすると会社全体として発信した予算に影響が出ます。であれば、内部ではサービスごとの予算にコミットしながら、それが変わっても、会社全体の予算に対して皆が臨機応変にコミットできる構造にするために、ワンセグメントとしています。期初に約束した予算をしっかりと皆で守ろうということです。つまり、カヤックは複数に亘るサービス全体をひとつの事業と捉えて経営をしているということになります。

以上がカヤックの予算に対する考え方です。

・・・と書いてきたものの、結果としてこの4年とも、下方修正と上方修正を繰り返しました。2014年に上場してから3年間はほぼ計画通りでしたが、大きなストレッチを目指したくなったり、逆に抑えたりと、精度としてはまだまだで、精進しなければならないと受け止めております。

僕たちの試行錯誤を見守り、支援くださる投資家の皆さま、お客さまに改めて御礼申し上げます。

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